龍神《喰ウ者》

1


 周囲が瞬く間に暗くなった。それはまるで暗幕を閉ざすかの様に、光と闇の境界線をはっきりと見せて、周囲から明かりというものが消えた。
 もう幾度となく繰り返された夜の時間。また今日も短くも辛く長い夜が始まる。
 大きな音と共に周囲が揺れた。あぁまた来たな。そう瀬上浩介は思い、憂鬱に嘆息した。それ以上は体が重たくまともに動くこともできない。
 音が近づいてくる。自身のいる空間は常に静寂が付きまとい、音も籠る為、一層に孤独を感じるが、この時ばかりはあの静寂が恋しくなる。
 冷たく、凹凸のない球面状の床を撫で、彼は迫る音を感じながら、身構える。
 ガーンガーン! っと耳をつんざく大きな音と衝撃が彼のいる場所に響き、その衝撃に彼は球面状の床を転がる。

「だから……、スイッチにしろってのっ!」

 彼は自身の能力である電磁の力を最大限に放出させ、閃光を全身から放ちながら怒声を上げた。
 彼のいる空間、透明な球体の全体が彼を中心に光輝き、周囲を明るく灯らせる。
 それを見上げ、眼下にある巨大な突き出た眼は満足そうに離れていく。
 そこは巨大な居室だった。居室といっても瀬上達地球人の感覚とは大分様相の異なる作りだ。縦長の円筒状に伸びた構造は瀬上には大きさ以上に使い勝手の悪い構造だ。
 しかし、その主の容姿を一目すれば、それも納得できるものである。先に瀬上を見上げた巨大な眼の主は、長く頭部から突出しており、口は触覚が無数に生え、そして粘膜によって光沢を帯びた表皮を持つ。次第に瀬上から壁を這って遠ざかるにつれて見えてくるその全身はまさに地球のナメクジであった。
 ナメゴンと云われるその種は、地球であれば「G」どころか、怪獣と呼ばれて仕方ない程の大きさであるが、この惑星では最も栄えている知的生命体である。
 詳しい進化の過程について、瀬上は元々興味がないため知るよしもないが、その大きすぎる巨体になった訳は彼が常に感じているその強すぎる重力か、はたまたその重力を持つ惑星すらも常に取り込もうとする最早恒星と呼ぶことすら疑問符の付くこの星系の中心に存在する巨大なブラックホールの存在によるものか。何れにしてもそれらしい理由は幾らでも思い付く。
 一つはっきりとしているのは、電磁の爾落人といえど所詮は地球人の瀬上では、この惑星どころかこの家から脱出することすらままならない。非常に短い夜を照らす電球としてこのまま永劫の時間、その身が朽ちるまで堪えるしか道はない。
 そう考えながら電灯人生に励む瀬上は、居室に来訪者が来たことに気づいた。
 先日も仲間のナメゴンが来て、主が瀬上電灯を自慢していた。どうもこの星の短い夜を照らす電灯は生物に由来するらしく、瀬上の前任は干からびていたが黄色い電気を発するこの星のネズミであった。寿命が短いらしく、基本的に不老不死の爾落人である瀬上は自慢の永久電球らしい。
 しかし、今宵の来訪者はそれとは様相が異なっていた。
 扉が開き、コツコツとブーツが床を鳴らしながら現れた来訪者は明らかにナメゴンではなかった。深く紺色のローブを被ったその容姿、その大きさは正しく瀬上と同じ地球人のそれと酷似していた。
 主は予期せぬ来訪者に警戒心を露にして来訪者の前に近づいていく。
 一瞬にして瀬上の位置からは来訪者の姿が見えなくなった。大きな主のヌメヌメとした光沢のある背中だけが、彼の放つ光に照らされてキラキラと光る様子だけが見える。
 来訪者の前にその何十倍もの大きさである主が迫り、鋭い眼光が来訪者を睨む。主にとっては虫や良くて電気ネズミ程度にしか思わない小さな存在だ。
 しかし、来訪者が囁くとその態度は一変した。主はまるで金縛りにあったように固まったのだ。
 続いて来訪者はすぅーっと息を吸うと、よく通る大声で主に向かって叫んだ。それは瀬上のよく知る地球の、それも日本語であった。

「瀬上さんを解放しろぉぉぉぉぉっ!」

 すると、主は突然スイッチが入ったかのように、動きだした。真っ直ぐ壁を登り、瀬上の元に来ると、瀬上のいる電球を外し、来訪者の元に連れていくと彼を解放した。
 この光景に瀬上は見覚えがあった。遠い昔の事だ。しかし、それはあり得ないはずのことだ。彼は既に実体を持たない宇宙の理を司る存在になっているからだ。
 その疑問を瀬上は問わずにいられなかった。そもそも、本当に彼なのかと。

「おい、何でお前が? いや、そもそも本当に……」

 瀬上が言いたいことを言い終える前に彼はすっと手を顔の前に出してそれを制すると、主に向かって彼は再び言った。

「彼は帰してもらうぞ。……あと、無理に理をねじ曲げるものではないぜ?」

 そして、彼は瀬上の方へ顔を向けた。フードの中にあったその伏し目がちな目と東洋人の顔は正しく真理の佛、後藤銀河であった。







「おい、一体どういうことなんだ?」

 暗い洞窟を進む銀河に瀬上は問いかけた。
 ナメゴンの家は巨大な洞窟の中にあり、そもそもこの惑星自体がコア近くまで地表から無数に空いた洞窟で構築されており、周辺の星々の光が洞窟深部まで届く構造をしている。つまり、この星の昼夜は地球とは真逆で恒星であるブラックホールに向いている時間が夜になるのだ。
 その洞窟を今銀河の先導で瀬上は地表を目指して進んでいる。銀河の左手の上には松明がわりの光る球体が浮いている。

「ん? この星の生態系は本来例の電気ネズミが増殖する速度と同じ速度で発光をして死んでいくようにできている。なのに、彼のようにそれを無視するようなことをすると生態系のバランスが崩れたちまちこの星の生命は滅びてしまうんだよ。故に理をねじ曲げることをしないように忠告をしたんだけど?」
「いやいや。その神様のご忠告はきっと大切なことなんだろうけどよ! そうじゃなくてだなっ!」
「あぁ、これは電子の集合体だ。球体の軌道を高速で回るようにしてエネルギーをすべて光に変換している。……まぁ、真理の力あってのことですけどね?」

 銀河は笑顔で説明し、最後は少し照れたように苦笑しながら言った。
 それに対して、瀬上は肩をがっくりと落として項垂れつつ、はぁーと深くため息をついた。
 調子が狂う。

「俺が聞きたいのは、なんで神様になったお前がここにいるんだってことだよ」
「厳密には神でなく佛なんだけどな? ……それについてはちゃんと瀬上さんにも説明するけど、まずはこの星を脱出してからにしましょう?」

 だんだんこの後藤銀河という存在のことを思い出してきた。本質的なところは神だろうと佛だろうと変わらないらしい。かつての旅人であろうと、後藤銀河であろうと。

「で、どうやってこの星を出るんだ? 言わなくてもわかってるだろうが、この星を出るのはかなり難しい。少しでもミスれば脱出失敗か、運良く出られてもブラックホールに吸い込まれる」
「瀬上さん、体軽くありませんか?」
「ん? そういえば……」

 銀河に言われて瀬上は気づいた。体をおこすことすら疲れるほどの高重力の環境であったはずだが、今はむしろ体が軽いとすら感じる。

「真理で俺達にかかる重力を操作したんだ。……あとはわかりますね?」

 成程、それが真理の佛ということか。重力は確かに操作可能な爾落人がいた。操作可能な物理現象なら真理の力で操作可能ということなのだろう。
 つまり、彼の手にかかれば、重力の枷から脱するのにジェット推進エンジンも高度で複雑な計算も必要としない。ただ重力を操ればいいのだ。

「随分と好き勝手するんだな? 理をねじ曲げることをしないようにとか言ってまだその舌の根も乾かねぇうちに……」
「それだけこっちも切迫した状況ってことだ。……え? 面倒だな?」

 銀河は唐突に足を止め、誰かと話すかのような独り言を呟くと、深く株っていたフードを外し、腕を前に伸ばし手中にある光の玉を翳す。

「熱を持ち、てぇっ!」

 光の玉は瞬時に光から熱に変わり、小さな太陽になり、そのまま彼の前方へ弾丸の様に放たれた。
 熱気と共に広大な洞窟を照らし放たれた極小太陽は真っ直ぐ奥にいたナメゴンを闇の中から浮かび上がらせ、そして直撃した。
 辺り一面が再び闇に包まれる。

「……喰われたか?」

 闇の中で銀河の悔しそうな声がした。
 瀬上も闇の先にまだナメゴンの気配があることに気づいていた。

「おい、なんであんなチート攻撃を受けて生きてるんだよ?」
「……わかった。すまないな?」

 瀬上が銀河に問いかけるが闇の中で銀河は瀬上でなく、また別の誰かと話している。
 その直後、瀬上にも明らかに何者かの気配を間近に感じ取った。

「! 誰かいるのか?」
「人よ。ここは僕が食い止める。お前は真理と共に舟へ行け」

 若い男の声と共に彼らの周囲がぼわっと明るくなった。
 明かりはいつの間にか銀河と瀬上の間に立っていた男の体から放たれていた。それは瀬上にも見覚えのある顔の男であった。
 細長く笑っているかのような狐目に宿る鋭い眼光が瀬上を捉えていた。銀河と同じ形の灰色のローブを纏った男は、正しく万物の佛、和夜が人々の前に現れた時の姿であった。
 和夜は右手を横に伸ばし、その先に両刃の剣を出現させた。

「やはりこれがある方が創造しやすい。……ふんっ!」

 和夜が剣を振るうとその先いるナメゴンとの間を塞ぐ壁が出現し、洞窟を塞ぐ。

「喰ウ力を持つなら時間稼ぎにしかならない。お前達は先に行け。あっちで別のが待っている」
「わかった。行こう、瀬上さん」
「お、おう」

 突然の佛二人のやり取りに事情も呑み込めぬまま瀬上は銀河に連れられて地表を目指して走り出した。







「もうすぐ地表だ!」

 銀河が瀬上を連れて洞窟というよりも地表に網の目状にあいた大穴へと到達した。
 まだ暗闇の中だが、幾分か視界が開け、星の明かりが見える。

「えっ、星が近づいてる?」

 星の明かりが彼らの元へ近づいていた。

「いいや、あれは星じゃない。舟さ」
「舟? あれが?」

 それはあまりにも巨大な人工物であった。
 漆黒の宇宙空間に浮かぶそれは惑星よりも巨大で、どこからどこまでがそれなのかすらもわからない。壁としか形容し得ない圧倒的質量がそこにあった。
 星に見えていたのは物体の各所に存在する赤や緑、黄色のランプであった。

「あれは……なんだ? 舟、だと?」

 瀬上はその巨大すぎる宇宙にできた天井を見上げ、呆然としながらも発することができたのは、そんな間の抜けた言葉だけであった。

「あぁ。それも瀬上さんも知っているとびきりの対「G」兵器を模した舟だ」

 銀河の言葉で連想するかつての記憶。同時にそのフレーズで連想したのは過去へと旅立った銀河と仲の良かった発明家の男。そして、言わずもがなこんな巨大な人工物は万物の力によるもの。そう、かつてもう一つの月を作り出したように。
 そして、その月を破壊し、和夜を銀河との一騎討ちに引き摺りだした対「G」兵器があった。
 目を凝らせば、まるで星座を描くように、遠い空の彼方に螺旋状の円錐形に結ばれるライトの点滅が微かに見える。

「まさか……MOGERA」
「正解。よく名前まで覚えてましたね?」
「こう見えて記憶力はいいんだよ」
「そうか。正確にはMOGERAのセパレートした上半身。タンク形態のランドモゲラーが元になってる。……行こうか?」

 銀河が瀬上の手を握った。
 その瞬間、瀬上は全身がふわりと浮き上がるのを感じた。無重力になったのだ。
 そして、水の中をゆっくりと沈む感覚を感じる。頭を下に、段々と胴へと体の重心が沈み、頭は上になる。
 しかし、実際には地表から上空にある天井、ランドモゲラーに向かって彼らの体は、臀部を上に向けた前屈みの形で浮遊していた。

「舟へ重力の向きを変えたよ。距離があるからこれ以上早いと機体も瀬上さんの体も危ないからこれで勘弁してくれな?」
「重力加速ってことだな。……だが、言っちゃ悪いが、直前で微調整すればいいんじゃねぇか?」
「……そこまで器用じゃないからな?」

 銀河は苦笑して言った。

「そうか……」

 宇宙戦神で戦っていた頃はかなり無茶苦茶なことをしていた気がするが、随分と昔の話であり、佛という人には到底想像できない宇宙を司る大いなるルールの中に身をおいていたことを考え、瀬上はそこを取り上げることは控えた。
 そして、何れにしてもそこに触れる余裕も次の瞬間にはなくなり、そんな些細な事柄は瀬上の中から霧散した。
 瀬上の体感にして今は、頭上にあたる地表の大穴で爆音と共に土煙が舞い上がり、上半身と下半身が別々になった姿で和夜の体が吹っ飛んできた。

「なっ!」

 思わず瀬上が叫ぶ。
 和夜の上半身は地表にドサリと落ち、血液がペンキの入ったバケツを吹き飛ばしたかのように周囲へ飛び散った。

「……ただのナメゴンではなかったか?」

 一方、銀河は和夜の死に衝撃を受けることなく至って冷静に呟き、土煙が未だに浮かぶ大穴を見る。

「そんなことより! アイツが!」
「あぁ。……相手が悪かったな?」
「なっ!」

 瀬上はその発言に愕然とした。あのサンジューローを名乗り、世界中の紛争を解決し、人を殺めない戦いに固執していた銀河の発言とは思えなかった。
 その無関心で、他人事の態度はまるでかつての旅人のそれであった。確かに、二人は同一人物であり、人との関わり方は違ったが、本質的には殺し合いを根本から消す為に動くのが真理の爾落人であった筈だ。

「てめぇ! 神様ってのになって本当に人じゃなくなったんだな!」

 気づいた時、瀬上は電撃を帯びた拳で銀河の顔を思いっきり殴っていた。
 一方、銀河は赤くなった頬を撫でながら伏し目がちの目で呟く。

「やっぱり肉体を持つと、痛いんだな? ……そうだな。確かに、アイツも痛かった筈だな? うん、今のは俺が悪かった。瀬上さんも、気分を害させてすまない。……ちゃんと説明をするべきだったな?」
「くっ! これだから真理は!」

 銀河に素直に謝られてしまうと、その怒りもすっかり醒めてしまう。そして、銀河の言葉から彼のあの反応にはそれなりに理由があることがわかった。
 瀬上は改めて地表の大穴を見上げる。
 巨大なナメゴンの影が土煙の中から現れた。彼らからの距離にして200メートル程度。十分にその大きさが感じ取れた。
 土煙の中からヌオンとナメゴンの巨大な目が突き出てきた。
 よく見ると頭部に主にはなかった突起が二つの目以外にあるのが見える。更に、色も光沢のある青紫色から次第に暗い紺色へと変色している。

「瀬上さん、あれはナメゴンじゃない」
「そのようだな?」

 銀河はじっとナメゴンを見上げて言った。瀬上も同調する。
 外見の変化以上にあのナメゴンから感じ取れる雰囲気が直感的に瀬上も別の何かだと訴えていた。
 銀河は息を吸う。何をするつもりかわかった瀬上は耳をふさいだ。

「正体を現せぇぇぇぇっ! ニセナメゴォォォンッ!」
「!」

 刹那、ナメゴンの体は姿を消し、変わりに土煙が薄くなった地表に人間大の直立二足歩行の異星人が姿を現した。
 全身が黒に近い暗い紺色のひょろひょろと痩せて長い手足をし、頭部は地球人と異なる。口や鼻、耳などの器官が見当たらず、代わりに頭部を側面に一周、そして正面で縦に交差し、十字で伸びる白目にそれぞれ3つの眼が動き、頭頂部にはタコの漏斗と呼ばれる一般的にはタコの真似をする際に口として表現する水を噴出させる器官に似たものが突起して延びている。
 瀬上はこの異星人に見覚えがあった。

「アイツはケムール人だ。宇宙でかなりの勢力を持つ種族で、俺が売り飛ばされるきっかけになったヤツだ。……ってことは、ケムール人とあのナメゴンは同じヤツだったのか!」
「つまり、瀬上さんは初めからこの星に捕らえる為にあのケムール人が仕組んだことと考えるのが自然ですね?」
『真理の佛だな?』

 ケムール人が遠ざかる銀河を見上げて言った。当然ながら日本語ではない。全宇宙での交流をする上で種族間のコミュニケーションの問題を解決するツールは地球人が交流を開始する遥か以前から発展しており、それぞれの認知可能な意志疎通の媒介に変換されるようになっている。ツールの形態はナノマシンサイズから星系全体を補う惑星サイズのものまで様々だ。
 銀河もケムール人を見上げて答えた。

「そうだが? お前、人に尋ねるのなら、まずは名乗れ」
『! ……真理か。面倒な力だ。……我が名は、ンモタメ』
「……後藤銀河だ」

 ンモタメと物凄く日本人には発音しにくい名前に銀河は流すことに決めたらしい。
 一方、ンモタメは体を前傾にし、そのまま両手を地面に添え、足を伸ばす。そして、陸上短距離走者の如くクラウチングスタートをし、手指をピンと伸ばし、全速力で大穴から地表にかけての坂を駆け上がってきた。
 それはそのまま銀河達に飛びかかる勢いで、大地を踏み込み、跳躍した。

「まずいっ!」

 銀河は咄嗟に両手をンモタメに向けて両手を広げて突きだした。
 掌の先の空気が揺らぎ、バチバチと音を立てて電気的な光と渦を巻く雲が発生する。
 空気抵抗を無くし、重力を操作した銀河達とは異なり、純粋な身体能力による跳躍で迫るンモタメには天地が逆転した強力な下降気流を持つ竜巻に敵うはずもなく、一気に地面に向かって落下した。

「一時の凌ぎだな? ……あと少し。瀬上さん、電磁波で速度をコントロールして舟に向かって下さい! 今の加速ならできるはずです!」

 舟に向かって降下を続ける瀬上に告げると、銀河はンモタメの落下した地表を見上げた。
 既に上下逆さまの竜巻は消滅していた。
 銀河は再び竜巻を発生させるが、ンモタメに触れた瞬間に消滅した。

「やはり二度は通じないな?」
『当然だ』

 ンモタメは銀河を見上げて答えると、体がドロドロと溶け、巨大化した姿に変化した。
 跳躍にはケムール人の姿が有効であり、一度目は竜巻に押し負けたことから、巨大化することでその不利を解消しようとしている。
 しかし、銀河はすかさず叫ぶ。すでに彼の場所はほぼ大気のない高度であるが、そんなことは彼の真理の前ではなんの支障もないことである。

「元の大きさに戻れぇぇぇぇっ!」
『っ!』

 銀河の真理によって元の大きさに戻ったンモタメは、地表から舟に向かって見えなくなっていく銀河を3つの目で見上げていた。
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