The ending of a hero


「さぁ、着いたわよ!」


間延びした艦内の空気が鮮明な星の光を帯びる。そこで搭乗員は皆、耳閉感のような不快感からようやく解放された。ネオマキシマエンジンのゼロドライヴ航行法を用いた副作用である。数万年前の地球で飛んでいた旅客機と同じく欠伸をすれば直ちに解放されるものなのだが、滅多にする事のない弦義にとっては小さな悩みの種であった。


「久方振りの地球か…」


まだ地球は若干の遠目からだったが、先に無数のデブリがXVⅡを出迎えた。朽ちる事なく永遠の闇に放置された「G」の死骸、破壊された艦艇の残骸、不発弾。この中にはあの瀬上や凌と交戦したものも含まれているのだろう。余所の惑星を囲むものよりかは明らかな大量であり、教団との戦闘がどれだけ大規模で一方的だったかを物語っていた。


「でも座標は?適当なとこに降りても意味ないだろ」
『主よ。瀬上家の場所は分かっているのですか?』
「大丈夫!カズっちが先に来てるみたいだから自分の着陸地点をトレースしてくれって」


してくれと言われたわりには何も操作する素振りを見せないパレッタ。それどころか一面ガラス張りである窓の前ではしゃぎ、くるくると踊り出す始末だ。艦内に地球と同等の人工重力を設定しているが故の為せる技。しかしここまで手放しで喜んでいる様子から察するに、電脳の力を丸々アテにしているんだと隼薙は察した。案の定、無人の操縦席を一瞥すると一人でに操縦桿が傾き始めていた。


「…一樹とも久方ぶりだな」


電脳がオートパイロットに干渉してきたのが分かった。数値が勝手に調整されて針路を定め、まるで一樹に操られるように艦は大気圏へと進入した。小刻みに揺れた船体は摩擦熱をものともせずに降下、小規模ではあるが貿易用の宇宙港が定めた航路をなぞり母なる大地へ還っていく。


眼下の草原には一樹のものと思われる戦艦が着陸しているのが見える。近づくにつれてその巨大さが露わになっていくがかなり大きい。元々着陸できる場所なんてなかったのか港にすら停泊できなかったらしい。恐らく誰かの私有地を間借りしていると見た。
住民の刺激を抑えるためか武装は格納しているらしいがその先進的なデザインは素人を威圧するには充分だ。エンジンはパレッタがXVⅡと同型のものを創造してあげたものだが、船体は以前地球が建造したプロメテウス級試験型航宙戦艦を再現したものだ。


「…目立つな」
「いや俺達のも十二分に目立ちまくりだろ」
「だからあれほど船体も造ってあげると言ったのに…カズっちてば頑なに拒否するんだもん」
「気持ちは分からんでもないけど…」
『着陸に備えよう』


パレッタ一行は戦艦の隣に着陸した。
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