爾落転換
『パレッタ、おひさしぶりデ…おじさん、だれデス?』
凌の影から少女が現れた。その姿はインド系列を思わせる出で立ちで、まだあどけなさを感じさせる。
「うわ!」
思わず仰け反る凌。平然としているのは世莉、菜奈美、パレッタだけだった。
「こっちよチェリィ!」
『あれ、そっちデスか?なんでしらないおじさんの「影」からでてきたのか…こわいデス』
「いや、俺の影から出てきた君の方が恐かったよ…」
凌の影から全身を出したチェリィ。瀬上と八重樫に促された凌は次のロボットを想造しにかかる。
ユートムは左腕のパンチングアームでギャラクトロンに襲いかかるが、右腕の鉤爪で受け止めた。動きを封じられたユートム。ギャラクトロンの胸の発光器官から発射されるビームが貫通した。残り二体。
「状況を説明している暇はないの。ゾグビーストをまた造って!」
『でも、ゾグは「時空」のふたりじゃなければあつかえないデス』
「色々あって私とカズっちが時空になっちゃったの」
『カズっち…そのおじさんがデスか?』
「おじ…」
ダメージを受ける一樹。
「チェリィ、私からもお願い。パレッタとそこのお兄さんにゾグを出してあげてほしいの」
「私からも頼む。パレッタとそこのおじさんが最後の切り札なんだ」
世莉と菜奈美によって事の重大さを理解した様子のチェリィ。
ビルガモは頭部の反射板から波状光線を発射した。それを魔法陣シールドで防げなかったギャラクトロン。たがものともせずビルガモに接近し、ブレードで一刀両断した。残りはクレージーゴンのみ。
『おふたりがそこまでいうのなら、きょうりょくしますデス。じゃあふたりとも、てをつないでくださいデス』
「うん!」
二人は手を繋いだ。すると光に包まれる。
「おぉ!なんかきてる感じになってきた!」
「力がみなぎってくるわ!」
思わず手で目を覆う一同。世莉と菜奈美とチェリィだけが目を背けずにいる。一樹はまるでスターになったかのような高揚感を感じてきていた。
「菜奈美さん!」
「え?」
「世莉さん!」
「ん?」
「チェリィさん!」
『なんデス?』
「三つの絆の力、お借りします!」
「うん…」
「あぁ…一体どうしたんだ」
『?』
「来て、ゾグビーストちゃん☆」
光はさらに強さを増し、ついには一樹とパレッタの姿が見えなくなった。
「消えた?」
『いま「融合」してるデス』
「あの時と、同じ…」
「あの二人大丈夫かしら」
「時空を信じよう」
「それより優先するのは戦線を維持することだ。ゾグが来るまでに全滅すれば意味がない」
「凌殿のロボット次第だな」
「時間稼ぎにかかっているということね」
ギャラクトロンにクレージーゴンが撃破された時、陣からは新たなロボットが出現した。
「あれは…どこかで見たことあるぞ」
次のロボットは蛾雷也のメカゴジラを簡略化したかのようなロボット、メカギラスだ。メカギラスは威嚇のつもりか、甲高い鳴き声を発した。
「聞いたことある鳴き声ね」
「…この声はガイガンですね」
「でもシルエットはメカゴジラぽいだろ」
凌は続いて次のロボットを想造しにかかる。その間にもメカギラスはギャラクトロンに向かって攻撃を始める。頭部の角からビーム、上顎からミサイルを乱発しながらギャラクトロンへ歩行した。
「足遅い!」
「あれじゃ的になるな」
シールドを張るギャラクトロン。右腕の銃口を向けるが、メカギラスはゆっくりと転移をしてギャラクトロンの背後に現れた。
「転移か!あれで翻弄できれば時間を稼げ…」
メカギラスにギャラクトロン後頭部のアームが襲いかかる。バリアを張るメカギラスだが、アームは突き破りメカギラスを貫く。
「おい!」
貫通したメカギラスを空中へ釣り上げ、目の前まで持ってくると、抵抗虚しいメカギラスを右腕のブレードで貫いた。それと凌が次を想造し終えたのは同時だった。