爾落転換
「ここにきて手抜きね」
「数を揃えにきた感じだな」
「弱そう…」
「皆さん…あまりうちの凌をいじめないでやってください…」
「もう、限界…」
瀬上は念力拘束を解いた。パレッタの時間拘束だけでは維持できず、ギャラクトロンは再び動き出す。
「がんばったわね。さすがよ」
「よくやったな」
「うん…。リョーくんも短時間にあれだけよくがんばったと思うよ」
パレッタは座り込んだ。凌も片膝をつく。一同はロボット群の起動を見守る。五対一。側から見ればギャラクトロンが劣勢だがどうなることか。
「どうした?」
「何か….身体が重くて…」
「大変だわ。視えたけどあと二、三体までしか想造できないみたい」
「えぇ!?」
「パレッタ本人ならそうでとないことなんだろうけど凌のインスピレーション、要はアイデアの引き出しが少なくて底を尽きかけてるわ。残りはちゃんと、強そうなのをよく考えて想造しないと…」
「お前…どんだけ想造と相性悪いの…」
「俺も驚いてますよ…」
ギャラクトロンに立ち向かうガメロット。腰のスプリングを利用して跳躍すると、頭上から押し潰そうと降下する。ギャラクトロンはビルガモとユートム、クレージーゴンのビーム攻撃を魔法陣のシールドで防ぎつつ、左腕のブレードでガメロットを突き刺す。
「このままじゃジリ貧だぞ。一気にケリをつける一撃がなければ突破される!」
「でもどうする?凌殿の想造ではロボットが関の山だぞ」
「アレしかねぇ。レリックの時の…」
瀬上の言いたいことは皆が分かった。ゾグビースト。「G」キラーネオを圧倒した、闘争本能を剥き出しにした時空の鎧。あれならギャラクトロンを瞬殺できるはずだ。
「宮代!パレッタ!ゾグを出せ!」
「えぇ!本当に無茶言わないでくださいよぉ!一体どうやって…」
「それできるかも」
パレッタの一言。
「ちょっとコネを使う形になると思うけどね」
「まさかあの子?」
菜奈美と世莉には心当たりがある様子だ。
その一方で、残骸と化したガメロットをレギオノイド目掛けて放り投げるギャラクトロン。レギオノイドは腕のドリルで残骸で粉砕した。
「なんでもいいから手を打て!」
「よし、じゃあ今からチェリィを呼ぶわよ。リョーくん、自分の影に杖を突き刺して」
凌はパレッタに言われるがまま、自分の影にン・マ・フリエを突き刺す。
「チェリにゃ~ん♪て言えば、私の知り合いが来てくれるわよ」
「…え?」
「なんでもいいから早くしろ!」
一同が固唾を呑んで見守る中、凌は声を絞り出す。
ギャラクトロンは地中へ潜行しようとするレギオノイドをビームで一蹴した。残り三体、時間はあまりない。
「ちぇ…チェリにゃ~ん♪」
焦るあまり声が裏返った。喉もカラカラだ。しかも何を思ったのか空いていた片手を頭に当て、猫耳ぽい。
「……」
皆のノーリアクションが、辛い。
遠くで戦闘を繰り広げる金属音だけが、辛うじて静寂を防いでいる。クレージーゴン、ビルガモの援護射撃を受けてギャラクトロンに肉迫するユートム。