爾落転換
『コマンダー・ヤエガシ!命令を!』
「待て、待機していろ」
目標を見失ったギャラクトロンは一同を探す素振りを見せた。機体は関節を軋ませながら動いている。
「今のは何だったんだ?」
「さっきスキャンした時に、私たちを人類の害だと見なしたらしいわ。バグバズンと同じ「G」扱いをしたのよ」
「失礼な話ね。許せないわ!」
「あのロボットは「G」を駆除するために行動しているみたい」
「それっていいことなんじゃ?」
「馬鹿言わないで。爾落人まで敵視している以上、帝国領まで侵攻すれば殺戮が始まるのよ」
「おいおい、せめて月ノ民かレリックの時に出てきてくれよ」
「どうする?起動してしまった以上生け捕りにしておかないと能力が元に戻れなくなってしまうのでは」
ギャラクトロンは、先程と同じスキャンをコロニー全体に行っていた。かなりの大規模なスキャンなため時間がかかっているが、終わった。後頭部のアームが逆立ち、それに引っ張られるように機体が上空へ浮遊する。その際に音色と波動も騒々しく奏でながら眩い光に包まれていった。
「マズいわ!強力な破壊光線の発射態勢に入ったわ!コロニーごと消し飛ばすつもりよ!」
「まさか!ブルードがまだいたのか?」
「違うわ。…露天のツインテールを狙っているのよ!」
「何とかして止めないと!」
「お前転移でツインテール万引きしてこい!」
「無茶言わないでくださいよぉ!」
「コロニー側に巨大兵器は?ジプシーデンジャー的なロボットとかスーツとか!」
「資格者が育成中らしい!」
背に腹は変えられない。コロニーの人間に被害が及ぶより自分たちの元の能力が犠牲になるのを選ぶしかなかった。攻撃を決断するしかなかい。
「みんな、なんとかしてアレを落とすわよ!」
「えぇ!MOGERAもないのにどうやって?」
「東條!アレだ!お前の作品を戦わせろ!」
「え?」
昨日凌が想造したアイアンロックスとバラックシップは曲がりなりにも武装している艦であった。砲撃くらいはできるはずだ。凌は納得した様子。
「頼むぞ!」
「爆撃機は下がれ!別命あるまで戦闘空域から離れていろ!」
『了解』
爆撃機の退避を待たず、近場の異界海に停泊していた二隻が、上空のギャラクトロンへ向けて砲撃を浴びせる。容赦ない砲撃がギャラクトロンを襲う。発射態勢は中断させられ、爆炎に包まれた。
「あぁ…これで元に戻る道が閉ざされるのか…」
一樹が呟いた。しかしそれは爆炎の中からバラックシップめがけて照射されたビームで我に帰る。ビームはバラックシップを捉え大爆発を起こした。撃沈だ。
「このままじゃ撃破どころか陽動にもならねえぞ!」
「じゃあ!俺が強いロボットを造ります!」
瀬上の煽りに、ムキになった様子の凌。八重樫は気にかけつつも今回は見逃した。凌はパレッタからン・マ・フリエを受け取ると甲板の真ん中に向かい、メモを見ながら陣を描いていく。
「おいおい大丈夫かよ…あいつのセンスは…」
その間にもアイアンロックスは沖合へ後退しながらギャラクトロンを引きつけていた。