Hurt Locker


耐温の爾落人、メロゥノは孤独だった。


彼女は周囲に特異者である事を隠している都合、上っ面の付き合いしかないし数十年毎に住処を変える習慣は変わらずだ。


一時的に人肌が恋しくなりパートナーを探すことはあれど深い関係を持つまでには至らなかった。精々が身体だけの関係だ。真に心を満たす間柄となればなるほどこちら側に巻き込むまいとブレーキがかかりがちだった。男性に対してはそれ以下。男から色目を向けられようと、元より女性にしか興味がない彼女がなびく事はなく男性の方が根負けして去っていく。ならば女性の特異者と知り合えればとさえ考えたがこんなにも劣る能力の自分を嘲笑しないだろうかと踏ん切りがつかなかった。そもそも運良く出逢えたところでどんな目に遭うのか。未だまとまな感性を持った特異者と出逢えたことがない故の悩みであった。


「…君、話があるんだが」


何度目かの転職先は銃器販売店。仕事に慣れてきた矢先、オーナーから声をかけられた。いずれこうなると分かっていただけに心の準備はできている。


「入荷したばかりのアレがなくなった件、君の仕業だよね?」


在庫のサブマシンガン二丁が空間の裂け目に消えた。先日その瞬間を目の当たりににしたものの、直接カメラに捉えたわけでもなく盗難として疑われるのは分かりきっていた。彼女は南極から発見された「G」の力だと主張したが、発見から数年程度しか経たない当時からすると流行りに乗っかった言い訳にすぎない。結局状況証拠から見て自分が泥棒扱いを受けた。警察沙汰は避けたかった手前何と引き換えにオーナーと示談にしたか言うまでもないが、挙句苦労して手に入れた仕事を辞めざるをえない。訴訟するかと言われればこちらが引かざるをえない状況だった。


メロゥノ本人へ特異者の能力による実害が出た瞬間だった。
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