爾落転換


攻撃を受けたグローラーがその巨体を現した。地面が盛り上がり土煙の中からその巨体が姿を現わす。
シルエットは甲虫。全身に無数の棘が生え、腕はカマキリのような爪だ。頭部はカブトムシの幼虫に酷似した形をしており目はない。尾は先程一同が目撃したブルードを捕食していた部分だった。


「うっ…女王も気持ち悪い…」
「パレッタ、時間停止は?!」
「虫は苦手なの…」
「まぁ…仕方ない…」
「各隊、爆撃始めろ」
『了解』


あれだけの巨体だと地上から誘導の必要はなさそうだ。間も無く降り注がれる爆弾の嵐に見舞われるグローラー。八重樫もパチンコ玉十個ほど取り出すと、レールガンで一気に射出した。援護射撃だ。爆炎の中からグローラーのうめき声が響く。


「やったか?」
「余計なこと言うな!」


一樹が呟くが瀬上が咎める。瀬上の恐れた通り、健在なグローラーが姿を現わす。


「やはり、ボーリング玉並みの大きさは欲しいな」


向けられた敵意に敏感なのか、再び地中へ逃亡を図るグローラー。八重樫はすぐに指示を出した。


「第二級徹甲弾発射。無人機にレーザー誘導させろ」
『了解』


爆撃機はグローラーの装甲を貫ける徹甲弾の発射態勢に入る。中継ぎでマイクロ波シェルを放とうとする八重樫。だがグローラーは、横槍のビーム攻撃で穴掘りを中断せざるをえない。グローラー苦悶の咆哮が響く。


「なんだ?」
「見て…あれ!」


ビームの火点。そこにはたった今稼働を始めたギャラクトロンが立ち上がっていた。独特な駆動音をあげながら、目と左腕からのビーム。二射とも着弾したグローラーに発生する魔法陣。それから時間差で爆発した。強力な破壊力の前に、断末魔もあげることすら叶わずグローラーは爆発四散した。


「おぉ!」


それは正しく救世主の働きだった。喜ぶ日本丸一同に気付いたのか、ギャラクトロンは振り向くと胸部の紅い発光器官から魔法陣を照射した。


「ちょ…なに」
「なんかくすぐったい」


一同の頭上から魔法陣がすり抜けていく。害はないのだが奇妙な感覚が一同を襲う、


「私たちをスキャンしているみたい」
「分かるのか?」
「えぇ。本体についての情報は相変わらずだけど、今何の行動をしているのかは視えるわ」


スキャンを終えたギャラクトロンは一同を見下ろすと、右腕を向ける。すると右腕の鉤爪が展開、双塔の銃口が展開した。銃口は一同に向けられたまま光が増幅している。誰が見ても分かる、ビームの発射態勢。


「なんかヤバい!」
「一樹殿!」
「転移だ早く逃げろ!」
「はい!」


間一髪、一樹の転移でビームを回避した。そのまま一同は転移を繰り返し中継しながら日本丸へ戻る。先程まで一同がいた場所は跡形もなく吹き飛んでいた。
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