爾落転換


作戦は開始された。とは言え、二人は用意された椅子に座りながら待っているだけだ。最初は緊張して座っていた二人だったが、次第に退屈し始めたのか雑談を始めていた。さらには一樹にトランプとデザートを要求。待機する八重樫らを尻目に充実した時間を過ごしている。


「ふぁ~」


一樹は作戦開始後何度目か分からない欠伸を始め、凌のガラテアは入念なストレッチを重ねる。心配する瀬上は落ち着きなくウロウロ歩き回るし、世莉もスイーツを要求し始めていた。ハイダと八重樫だけが微動だにせず作戦の行方を見守っている。


しかし事態は前触れもなく動く。一樹が何度目かのスイーツを転移させた直後だった。


「無人偵察機が接近中のブルードをモーションセンサーで捕捉しました!数14!方位EW77方面より侵攻」


オペレーターが緊張の面持ちで告げた。


「メーザー三号車、射撃用意。撃ち漏らしは再指令後第一小隊が仕留めろ」


接近するブルードは菜奈美とパレッタも肉眼で視認することができていた。こちらへ向かってくるブルードに、改めて気持ち悪さを認識した。思わずスイーツを食べていた手が止まる。


『ナナミ、射撃が始まるぞ。パレッタはステージから出るなよ。能力を消耗していい局面ではない』
「えぇ」
「分かってるって☆」
『撃て!』


メーザー光線車の照射が始まる。眩い閃光とともに、射線上のブルード群を跡形もなく消し去った。残ったのは蒸発した焦土と、数体のブルード。


「あれがコロニー内に存在する最後の個体みたいね」


菜奈美の視解。これにより作戦が佳境を迎えた。


『狙撃二班。モンスターキャッチャー発射。腕を見せてみろ』
『了解』


残る数体に、スナイパーの弾丸が着弾。倒せる威力ではないがこれでいい。既に指揮所ではブルードの追跡が可能になっている。このタイミングで、八重樫は菜奈美パレッタのマーキングを解除させた。目標を見失ったブルードはコロニー電磁防壁に向かって歩き始めていた。


すべては、うまくいっていた。
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