Hurt Locker
さらに時は流れた。箱型のブラウン管テレビからは連日宇宙開発競争が報じられ、東西に分断された二大陣営が挙って実験を繰り返してはプロパガンダを放映する。そんな見慣れてきた光景に、メロゥノは自室のベッドに座ったまま笑みを浮かべた。
宇宙。能力に慢心する特異者が行けるはずのない、努力する人間しかそこに存在できない宇宙空間に壮大な憧れを抱くのは必然だった。きっとどんなに強力な特異者でも抗えない環境だろう。実際にはそれすら気にならないレベルの爾落人が存在していたのだがこれもまた彼女の知る由ではない。
「嬉しそうだね?」
メロゥノの背後から半裸の女性が抱きついてきた。一夜を共にした女性だ。メロゥノは振り返ると軽く口づけを交わし、自らもバスローブを脱ぎ捨て昨夜と同じく一糸纏わぬ姿になった。数時間前に見たはずのメロゥノの裸体に女性は再び息を呑む。同性でも見惚れてしまうすらりとした肢体としなやかな髪。窓から差す朝日に照らされた姿はデッサンモデルのように綺麗に映える。創作の現実離れしたものではない現実的な美しさ。その憧れの手が、女性の胸元へ伸びる。
「え?ちょっと…えぇ?」
メロゥノは無言のまま女性を脱がせにかかる。女性は最初こそ困惑していたが満更でもなさそうに抵抗をやめた。メロゥノの深く紅い瞳。狙撃眼鏡のレティクルのように整えられた虹彩に射抜かれたように動けなくなったからだ。
「まだ朝なんだけどなぁ?」
女性もまた生まれたままの姿に剥かれるところで最後の抵抗だったが体裁上だったようだ。メロゥノは左肩に女性の右脚の膝裏を担ぐとそのまま前のめりで上体を起こして押し倒した。