爾落転換
「さっきハイダさんから連絡ありました。座標特定したんで医療センターの座標を送ります」
ブルードを撃破した一同は当局に通報して現場を引き継いだ。到着した兵士の中に瀬上八重樫と話した二人も混じっており驚かれた。事情を聞きたいと申し出る当局を後日にしてほしいとあしらい、今は当局から借りた非武装の車両でセンターまで向かっている。
運転席の八重樫と、助手席のガラテア。後部座席の瀬上と凌。凌は呆けながら外の景色を眺めている。それを疲れたのだと判断した瀬上は必要以上に喋りかけなかった。それよりも菜奈美の方が気になったのもあったが。
車両のナビシステムに干渉するムツキがガラテア八重樫に道案内をしながら事の顛末を話し合っている。ここで座標を特定した仕事の意味が薄まりつつあった危機は一樹本人しか心配してなかった。
『そろそろ見えてくると思うわ』
「あの建物か。また大きいな」
駐車場に車両を停めた八重樫。キーを当局の部隊に返すよう、警備の兵士に渡した。そしてフロアに向かう四人を出迎えたのは全快の菜奈美パレッタ。ハイダと少し不機嫌そうな世莉。
「結局襲撃はなかったぞ。クーガー」
『私は可能性とあなたに言いましたよ』
「おぉ!パレッタ殿、もう大丈夫そうだな」
「うん!心配かけちゃってごめんね。サイコロ君とリョーくんも」
「しのぐです…」
「無事なら良しとしよう」
皆が再会を喜ぶ中、瀬上も菜奈美と対面した。
「お前も無事で安心したよ」
「…そう」
「ちゃんとパートナーとして調教しといてください。菜奈美さんのこととなると手に負えないんですから」
凌は一重の目をさらに鋭くして瀬上を睨む。
「お、おい…」
「お世話になった女医さんにも手厚くお礼はしたし、帰るわよ。世莉」
「あぁ。女医が三十路で良かったな」
「結局買い物どころじゃなかったわぁ」
「いやパレッタは充分堪能してたと思うけど」
一同は日本丸に転移した。