爾落転換
八重樫は右腕にマウントしてあるソニックブレードを鞘から抜いて展開させる。熱攻撃の効果を踏んでの選択だった。さらに接近戦に置いてデッドウェイトのメーザーライフルを放棄し、身軽になる。
ブルードの振り回す爪を、腕に着いてる鞘で受け流し、ブレードで肘を砕く。八重樫は囲まれている状況でも足首、膝、首、四肢を砕き、小さなダメージを与えることによって確実に相手の動きが鈍くさせる。死に至らなくとも、行動を制限させるのには効果は大きい。襲いくる個体毎のダメージを把握しながら、可動域をジワジワと削っていく。最初は忙しく立ち回っていたが次第に余裕が生まれてきている。
これで八重樫は確信した。
「関節を狙え!現状で最善策だ!」
動けなくなったブルードの頭部を叩き割った。絶命したのか、泡を吹いて完全に沈黙させることに成功した。
「そういうことなら!」
ガラテアはブルード数体の足元だけを凍らせて動きを封じると、伸ばした爪で肘、首、膝、四肢を流れるような身の捌きで立ち回りながら切りつけていった。氷から脱出する暇を与えない。
「んなちまちまやってられっか!」
再びブルードと光刃で斬り結ぶ瀬上。合間を縫いながらレーザーで関節を狙うも、こういう戦い方はどうにも合わない。一気に片付ける方法はないかと思慮していると廃材が目に入った。
「いいもんあんじゃねえか!」
自分に群がってくるブルードを鉄屑で挟みこんだ。文字通り一塊にしたそれを、そのまま電磁石で上空まで持ち上げる。したり顔でパチンコ玉を用意する瀬上。
「こんの野郎!」
瀬上渾身の、だが周りを配慮して抑えめのレールガンを発射した。直撃で砕かれたブルードの残骸と、鉄屑の破片が手榴弾の如く周囲に散らばる。
「コウ殿!」
生じた衝撃波と破片が他の三人を襲うも、ガラテアが凌と八重樫の分まで氷の壁で守った。凌は小さく毒づきながら氷の壁を盾にする。自分と交戦中だったブルードは衝撃波で吹っ飛んだ。
「あと少し!」
凌もガラテアと同じく、ブルードの関節を狙って光刃を振るっていた。数体を撃破している。あとは残りの三体だ。先程瀬上に吹っ飛ばされたが、余裕で倒せる。トドメを刺すために対峙しようとしたが、ブルードは鉄屑に挟み込まれた。瀬上の電磁石だ。
「下がってろ!」
瀬上がブルードを高く持ち上げるとレールガンが天目掛けて駆け抜けた。それは、ブルードだけではない、凌の心境をも貫いた。
「…助かりました」
瀬上の前に出てくる凌。今ので最後のブルードであった。この場での勝利と言える。だが瀬上は凌の「間」が気になった。
「どうした。怪我したのか?」
「…いえ」