爾落転換


「いくぞ!」


瀬上の電撃、八重樫のメーザーライフル、ガラテアの火炎放射、凌の光弾連射。各々弾幕を張った。ブルードが何に弱いかを見極めるのも兼ねての先制攻撃だ。しかしここが閉所な上に機材が設置されているのも祟って障害物が多かった。


「一人五体か」
「俺がまとめて吹っ飛ばしてやる!」
「コウ殿、冷静にいこう。勝てるものも勝てなくなる」
「俺は、冷!静!だ!」


瀬上の前に、電撃を突破してきたブルードが数体肉薄する。興奮しているのか、動きが獰猛になり爪には喰らった電撃を纏わせていた。


「チッ!電撃は耐性あるのかよ!」
「間違ってもこんな閉所でレールガンは使うな!」
「分かってる!お前ら副船長を信用しろ!」


瀬上は光刃を展開して斬りかかるも、硬い表皮の前に大したダメージは与えられない。それは、他の個体に邪魔されて決定打を負わせられないのもあった。むしろ手負いになり猛攻を仕掛けられる。


「クソ!」


凌と八重樫、ガラテアも弾幕を突破されブルードの接近を許した。しかも、火炎放射で火だるまになったブルードは大してダメージにはなっていないようだ。光刃を展開する凌。


「二人とも、下がって!」


凌の後ろに下がる八重樫とガラテア。凌は光刃を水平に振り切って大きな三日月状の斬撃波を、威力抑えめのものを飛ばし、火だるまのブルードを吹っ飛ばした。いつもなら両断できるほどの出力なのだが、有効打ではない。だが再び間合いを取ることには成功した。


「おい!俺のもやってくれ!」


瀬上はブルード数体とギリギリで斬り結んでいた。爪が掠りそうになる場面もあり危なそうだ。


「自分でできるでしょう?」
「ざっけんな!」


そう言いつつも、凌の見よう見まねで同じような斬撃波を飛ばし、ブルードを吹っ飛ばす。経験値の差か先天的なセンスの差か、自力で窮地を脱した。


「やっぱりできてる…」


複雑そうな表情の凌。だが瀬上を気にしている場合ではない。向かってくるブルードに姿を消す凌。ブルードの死角に回り込もうするも、連中の目線はこちらを向いている。どうやら視覚には頼らない空間認識をしているらしい。凌は奇襲を諦め再び姿を現わす。


「今度は私の番だ」


ガラテアは熱してダメならばと、一瞬にして辺りを氷漬けにした。しかも皆と戦っているブルード十数体もまとめてだ。とりあえず安堵する一同。


「地味にタフな連中でしたね」
「つか東條、さっきのは何だったんだよ」
「まだだ!」


異変に気付いたガラテアと八重樫。ブルードは氷の中でも動き出し、内側から氷を砕いて脱出してくる。既に数体が自由の身になっており、ダメージを見受けられなかった。


「こいつらの弱点はなんだ!」
「虫ケラの割に火と氷に強いとは、見当がつかないのでは」
「クーガー殿を呼び出せれば…」
「こんな乱戦に呼び出せば守りきれねぇ!」


ここにいる皆、ブルード一体に対してはそうでもない。しかし気を抜けば別のブルードにやられる可能性があり多勢に苦戦するのは必至だ。長期戦にならなくとも疲弊するのは目に見えていた。
閉所故にレールガンを封じられ、火炎放射も効かない今、世莉の精密な面制圧がないのは痛かった。
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