爾落転換


「待っていましたよ」


世莉たちが日本丸に転移してきた。クーガーと、先に戻っていた一樹、ホログラムのムツキが待っていた。


「クーガー、思念でも意識を感じられません」
「だ、大丈夫なんすか」
『ねぇクーガー…』


皆がクーガーの言葉に注意する中、視解した彼が口を開く。


「昏睡しているだけですが、早く覚醒させなければ危険です。コロニー内の医療センターに診せましょう」
「紺碧に診せた方が早いんじゃないか?」
「連合の医者で充分ですよ」
「そうか、ならいいんだ」
「ハイダ、一樹は医療センターに着いたら二人を頼む。私は瀬上たちの所に戻る」
「それはやめておいた方がよいでしょう」
「何故だ」


世莉も仲間を手にかけようとしたブルードに怒りは感じていた。加勢して戦いたいと。それをクーガーが止めたのだから、当然反発は買うことになる。


「あなたも感じたこの甘い匂い。これは連中のマーキングのようなものです。獲物に吹き付けて万が一逃げられた場合に追跡するために」
「それじゃあ…」
「だから連中は転移で連れ去られたお二人を追ってくる事ができた。そして今もこちらに向かっている可能性があります。あなたもハイダさんも二人を守らねばならない」
「え!じゃあここに奴ら来るの?」
『え~!やだやだあんなの!』


嫌がる非戦闘員二人。


「それは飛翔能力があればの話です。飛行している日本丸まで到達できるスペックなのかは連中を視解しなければ分かりませんが」
「だが…」
「連中は熟練でも気づかない気配の上に、ダイスさんでも捕捉し辛いのでしょう?護衛に就いておくべきです」
「分かった。二人から離れないでおく。ハイダ、コロニーに戻るぞ。医療センターに転移する」
「はい。宮代さんは下の四人に状況を知らせてください」
「は、はい」


世莉はハイダ、菜奈美、パレッタを連れて日本丸から転移した。
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