爾落転換


「着いたわね」
「デッカいなぁ」


日本丸は連合領のコロニー【NF3000】に到着した。
異界林と異界海に面しているこの思わせるここは、かの極東コロニーと同じく、爾落人が統治しない珍しいコロニーの1つだ。電磁防壁が存在しなければ「G」の巣窟になっているだろう環境。こんな生存激戦区に住むしかない人々は良くも悪くも活気に溢れており、他コロニーと比べても民度の低さがありながらも逞しく強かに生活している。


八重樫は捕捉でコロニー周辺を警戒した。


「物騒なコロニーだ。異界海はそうでもなきが、異界林に「G」がたくさんいるな」
「脅威度が高いのはいそうですか?」
「巨大生物型は一体だけだが電磁防壁で浸入はできてないな。メンテが届いている限りは安泰だろう」
「なら、大丈夫そうね。みんな揃ってるかしら?」


菜奈美は全員を集めた。船長として、今後の方針を仕切る。


「連合領のコロニー、NF3000に着いたわ。目的は、食料の補給よ」
「酒も追加で!」
「はいはーい!私服も見に行きたいわ☆」


瀬上とパレッタが挙手するも、スルーして続ける菜奈美。


「留守番組と買出組に分けるけど、志願して残る人はいるかしら?」
「私は残りましょう」
「私も残る。船の護りを務めよう」


クーガーが志願している。ガラテアも挙手していた。


「ガラテアさんも一緒に行きましょ?いつも残ってくれてるのにたまには外に出るのもいいと思うのよ」


留守番組の中に混じっていたガラテアも誘われて承諾している。一樹が安堵の表情になった。


「私は食材を…」
「食材も後で見るから、一緒に服をみましょ」
『私も連れていって!』
「今は義体ないだろ」
『いいもん!これに入るから』


ムツキは予め用意されていた掌サイズの液晶機器に写っていた。約20世紀前に主流になったスマホのような携帯機器の中に入り込んでいる。つまり、誰かが持ち歩けということ。


「酒は俺が買いに行っておこう」
「俺が護衛してやろうか。丸腰じゃ心細いだろ?」


八重樫を瀬上がからかうように言った。八重樫は否定するかのように秘匿用の武装を手に取ってみせる。


「オレも行きたい!」
「じゃあ俺が残ります」


男性陣は八重樫、瀬上、一樹が行くことになり、志願して残る凌。その顔には日頃の疲れが滲み出ていた。


「じゃあ時々連絡してくれ。荷物は私が日本丸まで転移させておこう」
「そうしてくれ」


結局、女性陣は全員が街へ買い出しに行くことになった。留守番は仮眠をとりたがるクーガーと、解放されたい凌。酒の買い出しは瀬上と八重樫と一樹。食料と衣類は世莉、菜奈美、ハイダ、パレッタ、ガラテア、ムツキ。
支度を終え次第出発することとなった。だが、先程から険悪な男女が1組。


「護衛なんて、こっちのか弱い女子どもにつくのが常でしょう?」
「お前は護衛どころか、荷物持ちすらいらないだろ」
「ちょっとちょっと!それ言い過ぎなんじゃ…(まぁ戦力的にはそうだけど)」


凌がフォローを言うより、既に遅い。瀬上と菜奈美はおっ始めていた。


「あーあ、何かあっても助けにきてやんねぇぞ!」
「誰が助けなんているもんですか!護衛なんていらないんだから!」
『こら!夫婦喧嘩はやめなさい!』
「「夫婦じゃない!」」


2人の言い合いは慄いた凌が意を決して仲裁に入るまで続くのだった。


「こういう所で見て回るのって久しぶりだな」
「新鮮なご当地食材があるかもしれませんね」


喧嘩する瀬上と菜奈美を尻目に、他の女性陣は楽しそうに支度をしている。


「こりゃ、長くなるぞ」


浮かれている女性陣を見て一樹がぼそりと呟いた。
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