Hurt Locker
「エザヴェル様、そろそろ行かなくては」
「もうそんな時間か」
エザヴェル。部下にそう呼ばれた男は着崩した服を整えはじめた。目の前には衣服の剥かれた女性がぐったりと倒れており、その裸体には乱暴された痕が見える。成人したメロゥノは女性としての尊厳が地に堕ちていた。
「やっぱり“人間”の女の方が心も身体も若くていいな!リドラーと違って。へへへ」
薄ら笑いを浮かべたエザヴェル。年齢に反して低俗な引き笑い。彼がリドラーと肉体関係を持っているわけではないと部下も知っているだけに今の発言はいかに程度の低いものか分かっていた。
「リドラー様の年齢をご存知で?」
「最低でも2000歳はいってるはずだぜ。見た目は若いがあんなんババアだ」
「能力もあいまって立派な特異者ですよ。もう少し敬意を払われた方が…」
特異者。傷心のメロゥノはこのワードが出た途端聞き耳を立て始めた。自分が不老長寿であるのには理由があるのではと思っていたがこんな唐突に手掛かりを知るとは。
「お前やけにリドラーの肩を持つじゃねえかよ」
「そういうわけでは…」
断片的な情報しか得られなかったが特異者というのは普通の人間より持て囃されるらしい。何よりエザヴェルという男そのものが人望ではない他のものに慕われているように見えた。職務における階級だけではない何か。
「本当にそろそろ行かなくてはな。フィラートがうるさい」
もっと詳しく聞きたかったが突然自分を犯してきた男にもう関わりたくはない。こちらも特異者であると気づかれたくなかったし、実際理由は分からないが気づかれなかったのだから。
「おい女、今日の事は誰にも言うんじゃないぞ。忘れろ。それが身のためだ」
「……」
自分の恥部を隠すように破かれた衣類で当てがうメロゥノ。横座りで男達の目から少しでも逸らそうと角度をつける。しかしそれでも隠しきれない平均より豊満な胸の双丘、腰のくびれた身体と滑らかな素肌、腰まで伸びた三つ編みのポニーテール。女性の持ち得る魅力ほぼ全てに恵まれた身体を視線にて今一度堪能したエザヴェルは再び薄ら笑いを浮かべ、部下を従えて納屋を出て行った。