爾落転換
「ああ…」
夕食前。ガラテアから解放された一樹が向かった先は浴場だった。八重樫からもらった訓練用のアサルトスーツを脱ぎ捨てシャワーに向かう。大の字に体を広げ、湯船に浸かる。満身創痍。全身がバキバキだ。
「はぁ~」
平時のお転婆の相手といい、訓練脳筋2人といい、風呂が唯一心が休まる時間だ。八重樫は別としてムツキ、パレッタ、ガラテア。さすがに男風呂までは追ってこれないからである。3人撒けるだけで大分楽だ。次第と長風呂になってしまうが。
「……」
訓練はハードだ。
八重樫の場合体力に合ったペースで、配分が考えられている。その辺りはさすが部隊指揮官の経験だ。自分と条件が近い人間を率いただけのことはある。しかしガラテアが加入してからというもの接近戦は彼女に任せ、射撃や基礎体力、最新武器の指南を担当するようになった。
そこからが地獄だ。ガラテアに訓練させられる時はまるで軍隊に入ったかのような壮絶な日がある。限界以上の持てる全てを絞り出される感じ。
彼女も修羅場をくぐってきたらしいがそれは瀬上ら強力な爾落人との共闘の場合が多い。人間の弟子の蒲生凱吾がいるがあれも規格外だから同じ扱いをされても真似できない。戦闘向きでない八重樫がああだから自分が鍛え甲斐があるのか、最近はよく訓練に誘われている気がする。おかげで受け身だけが上手くなっている気がした。
有事の際は、後方支援なのに。いずれ前線で戦わされるのだろうか。
「…ぅ」
熱い湯船なのに急に寒気がした。敵勢勢力が滅んだ今、これから大規模な戦闘は起こらないだろうが前線に立たされることはないはず。なのに嫌な予感がするのはなんでだろう。