銀河vsデストロイア in三保

6


 夕方、大学の校内放送が文化祭終了を伝える。同時に、一時間後に始まる後夜祭の案内も学生に向けてされる。
 しかし、八号館の螺旋スロープの最上階層の手すりに寄りかかる関口の表情は、楽しい文化祭の終わりにしても暗い。

「あれだけ苦労したのに………」
「まぁ、某星丸の被害や何かは全部大学が負担してくれるっていうんだから、よかったじゃないか?」

 隣に立つ銀河が落ち込む関口に話しかける。土方と瀬戸内は気象研究室の片付け、後輩衆は展示の片付け、教授陣は事後処理に追われており、今は彼らの二人だけだ。
 眼下のグラウンドでは、気球に溜められた熱気を冷ましている。その手前では後夜祭で打ち上げる花火の準備を花火師達がしており、八号館の前では後夜祭の野外式典会場を準備している。

「デストロイアが、巨大生物、怪獣としての「G」のサンプルが手に入れば、大学や社会だけじゃない。俺自身の仕事にも大きく利点として働くはずだった。……スタンディングモードの追加も決定させるカードとなったかもしれないのに」

 関口はブツブツと文句を言う。その手には例の包みが抱えられていた。

「その、……アレだ! 「G」はデストロイアだけじゃないんだぞ? 週刊誌やネットの噂じゃ、世界各地で似たような事例が次々に報告されているって話だし、この次のチャンスもすぐに廻ってくるんじゃないのか? その内、デストロイアみたいな巨大怪獣が現れると思うぞ?」

 銀河が必死に励ます。
 しかし、関口は首を振った。

「いいや、それが日本である保障はない。もしかしたら、お隣の韓国に先を越されるかもしれない。……いいや、もしかしたらロシアやアメリカ、中国かも。今世界中が、「G」を狙っているんだ。その絶好の機会を、俺は逃したんだ」 
「………なぁ、関口さん」

 銀河は声を落として話しかけた。

「実は……俺」

 銀河は躊躇しつつも関口に告げようとする、己の正体についてを。

「………うわっ!」
「地震?」

 しかし、唐突に地震が銀河達を、三保半島が襲った。

「……収まった? 今の地震……関口さん?」

 銀河は関口に話しかける。しかし、彼は三保半島の先端に近い清水港側のある一点を凝視していた。
 銀河はその視線を追った。

「えっ?」

 そこには煙と炎が上がっていた。

「あそこは?」
「三保の火力発電所だ。……今の地震で火事になったのか? ……いや、違う!」
「………!」

 目を凝らしていた銀河は一瞬、見えた影に目を剥いた。関口はボソリと呟いた。

「デストロイアだ」





 

 銀河達は、グラウンドにあった気球を心理の力で強行的に借りると、火力発電所に向った。
 次第に炎に包まれた火力発電所の様子がはっきりと見えてきた。そして、中で蠢く巨大な赤い影も。

「なんだ? あの姿は?」
「悪魔………。だが、あの頭部はデストロイアに間違いない」

 関口の表現の通り、デストロイアは二足で立ち、長い尾を生やし、三本爪の腕を持ち、肩の後ろからは巨大な翼を生やした姿は、まさに赤い悪魔であった。

「完全体と呼ぶべき姿だ」
「アレが、最終形態なのか?」
「それはわからない。もしかしたら、更に究極体とかがあるのかもしれない。……だが、アレをそう呼ばずして何と呼ぶ?」

 関口の声に興奮していることが伺える。
 眼下で、デストロイアは口から破壊光線を吐き、火力発電所を破壊する。黒い煙の塊が昇った。

「ごほっ……こっちにも煙が流れてくる。なんとか場所を移動しないと中毒になるぞ!」
「気球にそんな細かい機動性はないだろう?」
「だったら、なんで気球なんかにしたんだ!」
「俺に言うなよな? 車よりもこっちのが早いって言ったのは関口さんだろう?」
「うるさい!」
「それ、逆ギレって言うんですよ? ……それより、あんな巨大な怪獣にレールガンもなしでどうするんだ?」
「………これから見た事は一切口外しないと約束してくれ」

 真顔で言ってきた関口に、銀河は頷く。それを確認すると、関口は例の包みを開いた。
 中には、銀色の大型の銃であった。銃と言っても、その銃身は太い一本の軸の周りを管が螺旋状に付いていて、銃弾を放つ銃口は存在しない。映画で登場する殺人光線銃の様な、現実では銀河が見た事もない存在であった。

「それは?」
「レーザー銃とでもいうのかな? ある国から流れたものらしいが、あの国にそれほどの技術があるとは思えない。更にその構造も非常に複雑で、どう考えても同じものは今の科学力では造れない……つまり、「G」さ」
「レーザー銃?」
「あぁ。熱線も冷線も大気中で使用できる。脱ぽ……いや、提供者の話では、これはもう一つ対になるものがあったらしい。与えるモノという存在が。そして、これは奪うモノだと聞いた。今、俺はこいつを参考にしてマイクロウェーブ照射装置の開発をしている。そもそも今回の文化祭に来ていたのも、こいつについての意見を中目黒教授に聞くためだったんだ」
「大丈夫なのか?」
「既に実験は成功している。熱線は言葉のまま、レーザーが物体に当たるとそこに高熱が出て、切断や燃焼を起す。冷線は少し理屈が違うが、レーザーが当たった物体の熱が絶対零度近くまで下がる。一応、ドイツで既に実験では確認されていた現象だが、大気中で絶対零度近くの超低温まで下げるのは、まだ机上論だ。この冷線を使って、デストロイアを倒す。だから、こいつを使った事は口外するな! 俺の会社での機密中の機密だ」
「それを持ち出したんですか?」
「人聞きが悪い。一応、許可は取っている。何かあったら、ちゃんと俺の上司が全責任を取ってくれる」

 つまり、この時点で彼の上司は責任を取らされるという事が決ったのかと、銀河は知らないその哀れな人物に同情した。
 そんな事を銀河が考えているとは知らない関口は、レーザー銃をデストロイアに向けて構える。
 しかし、デストロイアは関口達に気が付き、口を開いた。レーザー銃を敏感に察したのかもしれない。

「!」

 関口がレーザー銃の引き金を引いたのと、デストロイアが破壊光線を放ったのは、ほとんど同じタイミングであった。
 三保の暗くなった空に二つの光が一瞬、重なった。

「へ?」
「え?」

 刹那、二人には何が起こったのか、理解できなかった。デストロイアの破壊光線は、冷線レーザーと接触した瞬間に、消滅したのだ。激しい爆発も閃光もない。ただ、一瞬にして、ゲームのキャンセルボタンを押したかの様に、デストロイアの破壊光線は消えてしまった。

「………まさか?」

 銀河がややあって口を開いた。

「まさか、これは一種の対「G」兵器?」
「そうか。だから、奪うモノ。……レーザー兵器に偽装されているが、「G」に対してはその「G」を奪うのか。だが、そんな漫画なことが?」
「可能性は十二分にありますよ? 事実、俺の持つこの護符は、「G」と考えられる怪物を封じるのに使われていたといわれる方陣が描かれています」
「それでデストロイアが止まったのか」

 関口は合点がいったのか、銀河から渡された護符を繁々と見ながら言った。

「しかし、コイツでは倒せないんだよな?」
「えぇ。デストロイアがそうであったように、その「G」の力が弱い段階では効果は絶大ですが、強力な「G」ではほとんど効果がないみたいだな? 恐らく、今のデストロイアには蚊に刺されたくらいの効果しかないでしょうね?」
「でも、蚊に沢山刺されるのは嫌だぜ?」

 関口は笑った。
 銀河は頷き、護符を全て取り出した。
 気球はデストロイアのほぼ直上に移動した。

「いいか?」

 レーザー銃を下に構える関口は、護符を持った手を気球から出した銀河が頷くのを確認すると、叫んだ。

「今だっ!」

 銀河は手を放した。護符は桜吹雪の様に空を舞い、地上のデストロイアに降り注ぐ。
 デストロイアは首を振り嫌がる。そして、頭を上に上げた。
 刹那、関口はレーザー銃を放った。
 デストロイアは咆哮を上げてその場に倒れた。周囲に煙が舞い上がった。

「倒せたのか?」

 銀河は下を見下ろす。煙幕が起こり、デストロイアの様子がわからない。
 しかし、煙幕の中に影が見えたと思うと、次の瞬間には煙の中から飛翔したデストロイアが気球に迫ってきていた。

「………なっ!」

 関口が目を見張った。
 デストロイアは角を光らせると、頭を上から下に振るった。角の光は、光の筋となって伸び、それは気球を切断した。
 ガクンと衝撃が伝わり、次には空気が抜けた気球と共に銀河達は落下する。
 咄嗟に銀河は関口の手を掴み、気球のカゴを蹴った。銀河は宙に浮かび、そのまま放物線を描いて落下をするも、ほどなくして硬い壁にぶつかった。

「がはっ!」
「うっ!」

 銀河と関口は呻いた。しかし、二人とも無事であった。

「……これってまさか!」

 関口は自分達がしがみついているモノの正体に気が付き、銀河を見た。銀河は頷いた。

「デストロイアの頭の上だ」

 二枚の翼を使って飛翔したデストロイアは、空高く舞い上がり、夜の三保半島上空を移動していた。
 地上の人々は火力発電所の火事に注意が向い、上空のデストロイアの存在には気が付いていない。
 一度デストロイアは駿河湾上空へ出たものの、大きく旋回し、再び三保半島へ向う。大学の校舎が見えてくる。

「不味い! この方向は、清水の町に向うつもりだ!」
「なんだって?」
「町に入ったら、三保と比べ物にならないほどの被害が出るぞ!」
「どうするんだ? もう護符はないぞ?」
「レーザー銃を使う!」

 関口は何とか手放さずに持ち続けていたレーザー銃を銀河に見せる。

「しかし、それの効果もこのデストロイアには………」
「通常の出力では、という言葉を付け加えるべきだ」
「え?」
「レーザー銃の出力と「G」を奪う力が比例関係にあると仮定すればだが、コイツの限界の出力………つまりは暴走させれば、相当な力が発揮されるはずだ。それでダメならば、そもそもコイツでは勝ち目がないということだ。こんなところでやるんだ、失敗、成功に問わず、俺達の命も、攻撃のチャンスも一度しかない! やるんだったら、全力でやるべきだろ!」
「……そうだな? だけど、一言だけ言わせてくれるか?」

 銀河は一呼吸置くと、何を言うのかという顔をして待っている関口に言った。

「俺達はこのデストロイアに勝つ! そして、生き残る!」
「!」

 驚く関口に銀河は微笑を浮かべ、頷いた。彼も頷き、レーザー銃の出力を限界以上に引き上げた。
 そして、暴走状態になったレーザー銃を持って、二人は飛び降りた。

「「消えろぉおおおお!」」

 二人は叫びながら、レーザー銃をデストロイアの口に投げ込んだ。
 そして、二人はそのまま海に落ちた。

「ぷはっ! ……関口さん?」
「無事だ! ……デストロイアは?」

 海面に顔を上げた二人は、大学の方向を見た。デストロイアがそこへ迫る。
 しかし、次の瞬間、デストロイアの体は、爆発も爆音も立てることなく、空気を揺らすほどの衝撃波だけを起こして、その存在一切が一瞬で消滅した。それは魔法の様な光景であった。
 しかし、その衝撃波が広がった瞬間、更なる事態が起こった。街中の灯りが一瞬で消えたのだ。

「……そうか、EMPか!」
「………何それ?」
「電磁衝撃波の略だ。聞いた事ないか? 核爆発が起きると、機械類が壊れるって現象の話を」
「そういえば、そんな話もあるって聞いたことがあるような………」
「恐らく、レーザー銃が最終的に爆発したんだろう。EMPが誘発されても驚くほどのことはない。………いや、ヤバイ!」

 関口当人が突然絶叫した。

「どうした?」
「EMPが起こって、停電になったんだ。つまり、その範囲は最低でも半島全域に及んでいる。大学内の電気機器が全部死んだことを意味する」
「………それって、比喩的にいうところの石器時代になったってことか?」
「むしろ、北斗の拳だろうな」
「へ?」





 

 銀河達が大学の真裏にある砂浜まで泳ぎ着き、一番近い場所にある八号館の前頃には、大学の混乱は収拾の付かない段階になっていた。

「どうしてこうなった?」
「これこそ、暴力がすべてを支配する世界だ」
「むしろ、狂気の世界だな? 亡者が歩いているとしか思えないぞ?」

 銀河が愕然として呟いた。
 彼らの前に広がる光景は、八号館の前で呻き声を上げて頭を抱える人々や、笑いながら涙を流す人々がさ迷い、別のところでは人々が仲間割れの喧嘩をしている、絶望的な光景であった。

「……大学にとって、データや観測計器、その他の電気製品は生命線だからな。恐らく気象研究所では土方あたりがぶち切れてパソコンを破壊しているだろうな」
「………なんだか、想像できないんですが?」
「その方が賢明だ。長生きできるから」
「………さて、これをほっといていい状況ではないですよね?」
「ないね。どうするんだい?」
「仕方ないな?」

 銀河は嘆息すると、八号館前の式典会場用の壇上に上がった。既に式典会場に準備されたパイプ椅子などは乱れ、荒れた惨状になっている。
 しかし、銀河はそれを構うことなく、壇上に落ちていた拡声器を手に取ると、音量を最大にした。

「あーテステス。もしもし?」

 一斉に、人々が銀河に視線を向けた。それを確認すると、銀河はすぐさま言い放った。

「んな些細な出来事を気にするんじゃねぇ!
 何が起きたかじゃなくて、何をするべきかを考えろぉおおおおお!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 その後、銀河は同じことを三保半島のいたる所で混乱している群集に対して片っ端から言って回った。
 三保半島の混乱は、一時間程で終息を見せた。





 

 騒ぎが収まった某大学では、花火などが設置されている八号館の表側ではなく、裏側の隣接する高校が利用するグラウンドで露店の売れ残りを利用した炊き出しが行われ、電気が復旧しない為に急造したキャンプファイヤーを囲んで人々が集まっていた。学生だけではなく、近隣の住民も集まっている。災害対策委員会が途方に暮れている住民達に声をかけて集めたのだ。
 はじめは銀河の心理の力があったとはいえ、元気のない様子であったが、食事を取ると次第に表情がよくなり、やがて誰からともなく歌が歌われ始めた。
 それはいつしか終始デストロイアによる混乱が続いていた三日間の文化祭の終わりを祝う後夜祭となっていた。
 そんな賑やかさを取り戻したグラウンドとは対照的に暗く、静かな大学のグラウンドを銀河は式典用の壇上に腰をかけて眺めていた。

「……さて、そろそろ行くか? ちょっと長湯しすぎたかもな?」

 銀河は荷物を持つと壇上で立つと大きく伸びをした。

「………ん?」

 銀河はグラウンドの中を蠢く影に気が付いた。
 人かと思い、近づいていくと、それは人でないことに気が付いた。

「まだいたのか?」

 それはデストロイアの幼体であった。銀河の気配に気が付いたデストロイアは、咆哮しながら銀河に迫ってくる。
 その時、銀河は自分が武器になるものを一切持っていないことに気が付いた。

「不味いぞ?」

 銀河は慌てて逃げる。しかし、デストロイアも追いかける。
 グラウンドに置かれている花火の筒を縫うように銀河は逃げるが、デストロイアも素早く追いかける。

「あっ!」

 銀河は花火の起爆用コードに足を引っ掛け、転んだ。振り返るとデストロイアが口を開いて迫り、今にも破壊光線を放とうとしていた。
 銀河は周囲を見渡す。

「!」

 次の瞬間、デストロイアは口から破壊光線を放った。
 同時に、高校のグラウンドで歌の合唱を終えた彼らが一斉に笑い合った。
 その時、大学の上空に花火が撃ちあがった。彼らはそれに歓声を上げた。
 遠くの歓声が耳に届いた銀河は、やっと自分が無事であった事を理解した。彼の腕には今も硝煙を上げている花火の筒が抱えられていた。目の前にいたデストロイアの姿はなくなっていた。恐らく今度こそ海の藻屑となっているだろう。
 デストロイアの破壊光線は、彼の僅かに横を通過していた。

「あ、ありがとう」

 銀河は花火の前にある起爆操作機の前に立つ関口に言った。関口は銀河の抱える花火の起爆スイッチから手を放す。

「俺も助けられたんだ。これであいこだ」

 関口の元に銀河はゆっくりと歩いていく。

「後藤君、君は何者なんだい? ……という質問も野暮だな。ウチの会社でも、ヒト「G」と仮に呼称して、人の「G」がいるという前提で対応を検討している。すでにその第一号も保護されているし、君の様な言葉で人の心を左右させる力を持つ存在がいてもおかしくはない」
「………心理と俺は呼んでいる」
「心理、か。その頑丈な体もそれ故か?」
「それはわからない。俺が何者なのか、それを知る為に俺は旅をしている」
「そうか。………流石だよ。お前が断言した言葉は俺の心で、無条件で納得させられる。一切それを否定できない」
「色々不自由もあるけどな?」
「……安心しろ。君の存在が表になる事も、多分このデストロイアが暴れた一件も大部分が表沙汰にはならない。大学がデストロイアの存在を知っていて隠蔽し、それには政治が絡んでいる。それなら、さっきの完全体のことも隠蔽するべきだろう。それと、俺がレーザー銃を使ってしまった事もある。恐らく、会社が裏で色々なところに根回しをするだろう。都合よくデストロイアのせいで地震が続いた。三日前の地震の影響で起こったと考えられる極浅い地表面で起こった局地的な群発地震とその二次災害で今回のことは起こった。とでも言えばいい。世間がそれで納得する訳もないだろうし、デストロイアの目撃者だっているはずだ。だが、映像などはEMPで消失。目撃証言に対して、大学がデストロイアのサンプルを出す。未確認な情報も含めると毎日世界中で「G」出現の報道がされている。しかし、深刻な騒ぎにならないのは、個人の力でも対処可能な小型の存在であるからだ。恐らく、デストロイアという「G」の存在とその酸素破壊による消失能力は記録に残るが、その大きさや今回の三保で起こった騒ぎは大多数の根拠のない噂と共に忘れ去られる。恐らく、これは間違いない」

 それを聞いて銀河は嘆息した。

「人ってのは面倒な生き物だな?」
「人じゃないさ、人の生み出した社会が面倒なだけさ。お前だって、人のつもりなんだろ?」
「……あぁ」

 銀河は頷くと、関口の肩にポンと手を置いた。そして、彼の耳もとで囁いた。

「俺は「G」じゃない、人だ。だから、俺の事は気にするな」
「!」
「……じゃあな」
「あぁ。………さて、飯でも食うか!」

 銀河が離れると、関口はまるで銀河の事を見知らぬ他人であるかの様に気にせず、高校のグラウンドへ向って歩き去った。
 その背を見送った銀河は、駿河湾の方に顔を向けた。

「デストロイア………、アレが最後の一匹だとは思えないな? ふっ、何てな?」

 そして、銀河は人知れず、星明りに照らされた旅路を再び歩き始めた。




《END》
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