守ル者 in 沼津
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同時刻、富士市東部を東西に走る県道167号線の西側に流れる沼川支流に沿って張られた巨大なフェンス、警戒区域と他を区切る境界線に設けられた唯一の出入り口、国道1号線旧沼津バイパスゲートでは、内側を陸上自衛隊の旧御殿場市坂妻駐屯地の隊、外側を静岡県警察機動隊が共同警備を行なっていた。
彼らの場所からは愛鷹山が壁となって富士山の噴煙を見ることはできないが、災害発生以後、彼らの任務は治安維持において非常に重要な役割となっていた。ここにいる彼らはほぼ全員が6年前、大地が崩壊し、海が襲い、空を闇が包み、全てを泥と灰が覆った現場で災害救援を行なっていた。そして、過去の災害には存在が明るみに出なかった「G」による事件や被害も多発し、それを経験してきた現在の彼らはただの公務員同士でなく、同じものを守る為にそれぞれの方法で戦う盟友となっていた。
倫理面におけるその関係性は賛否がある。だが、それ以上に彼らはプロとしての信頼を互いに持っていた。
「灰、今日は少ないですね」
「……台風だからな。視界の悪さは変わらん」
ゲートの前を警備する機動隊員二人が言葉を交わしていた。
横殴りの雨は次第にその量を増し、現在の視界は非常に悪い。台風時の制圧訓練をおこなっている彼らでも今回の台風での警備は辛いと思った。
「さっきまではある程度先も見えていたが、今は10メートル先を見ることも……」
「っ………」
「ん? ……!」
次の瞬間、彼の首は重力に従って、先に地面に倒れていた相棒の胴体の上に落ちた。
彼らの鮮血は非常に激しい雨によって流れ、犯人の姿も凶器も同じように消えた。
刹那、高架道路の裏側と川の中から無数の襲撃者が現われ、機動隊は壊滅した。
ゲートが開かれ、フェンスが破られ、警戒区域内に侵入した彼らは暴風雨の中、自衛隊と交戦状態になった。
雨音に紛れて銃声が響き、やがて悲鳴が増え、遂に雨音だけになった。
数分後、旧沼津市と富士市の境で南北一列に走る大規模な爆発が起こった。
「敵が第一防衛線である富士側の警戒区域境界線を突破した。第二防衛線の地雷原で大半を倒したはずだが、監視カメラの映像から相手はおそらくミステイカーだ」
一号館事務所で八重樫が言った。隣に立つ浦園も頷いた。元紀と最深部から戻ってきた玄奘が聞く。
「第二防衛線に張った「G」センサーの結果もミステイカーとしている」
「ついでに、某国の監視衛星映像でも凡そ万を越える数のミステイカーが走る姿を確認しているぜ」
机に向かっていた一樹がパソコンから手を離すと振り返って告げた。
元紀は一度無言で顔を俯き、深く息を吐くと顔を上げた。
「ミステイカーの残存数は?」
「最新の情報で約10パーセントの千強ってところかな。流石、最新型高性能爆薬だわ」
一樹がすぐさま答えた。
「いよいよね」
「まもなく第三防衛線に到着する。……! 駿河湾からも爾落人が三人来るぞ」
「船ですね。複製の爾落人、反転の爾落人、それと身増の爾落人ですが機械とも違う生体改造を施していますね」
八重樫が捕捉したものをクーガーが視解して告げた。
元紀が頷き、世莉と翔子に視線を移した。
「お願いします」
二人は頷いた。そして、世莉は一樹の入手した敵陣の動きを複数のモニターで観察する桐哉に視線を向けた。
すでに白髪が混ざり始めている彼の頭がモニター越しに見える。そこから彼は視線を上げ、世莉と視線をあわせ、微笑みを浮かべ頷いた。
世莉も無言で頷く。これで十分だった。
「よし、翔子。行くぞ」
身を翻し、何か言いたげな翔子に言った。彼女は肩をすくませると頷く。
「わかった」
そして、二人は嵐の砂浜に転移し、駿河湾上を飛行する某大学丸二世に手を翳した。
刹那、船の周囲に大量の爆弾が転移され、次々に爆発した。
雨をも吹き飛ばす衝撃が起こり、船は爆発の直撃を受ける。
「やったか?」
翔子が問うが、世莉は首を振った。
「……無傷か」
翔子も強風によって流された煙の中から現われた船を確認した。
「あの女だ」
世莉は視界を転移させて見たものを翔子と事務所の元紀達に見せる。
船の先端に立つポニーテールの女性が見える。
「反転の爾落人ですね。全ての力を反転させられる力というところでしょうか」
クーガーの声が翔子と世莉の耳に届く。世莉が転移させたのだ。
「つまり、単純な攻撃では傷すら付けられないわけか。……えぇい! 厄介だな!」
翔子が地団太する。
「まだ方法はある! 空間ごと潰してやる!」
世莉は船の周囲に巨大な結界を張り、それを一瞬で押し潰す。
しかし、次の瞬間、結界は逆に押し広げられた。
「!」
「無駄です。空間を仕切り、押し潰すのではその圧縮を反転され拡散されます」
クーガーの声が世莉の耳に届く。彼女は舌打ちした。
「なら、宇宙の果てに飛ばしてやる!」
世莉は叫び、船を転移させる。だが、次の瞬間には船は元の場所に戻ってきた。
「転移は奴に通用しない。それが複製だ」
「くっ!」
玄奘の転移された言葉に諭され、世莉は下唇を噛む。
その時、激しい爆発が彼女達の西方から起こった。
「あちらも始まったか……」
翔子は呟いた。
第三防衛線として壁が築かれているかつての市境では、ガラテアの起こした激しい爆発によってミステイカー軍団との戦いの火蓋が切られていた。
爆発による煙幕の中へガラテアが爪を鋭利に伸ばし、先陣をきって飛び込む。
壁の上から瀬上と東條がレールガンと光撃でガラテアの援護射撃をする。
「あぁ! キリがない!」
「千以上の数とはいえ、所詮はミステイカーだ! 俺達だけでここは食い止められる!」
瀬上が東條に言いながら、傍らに置いた箱からパチンコ玉を掴み取ると宙に撒き、もう一方の手でそれらを弾く。パチンコ玉はレールガンの散弾となり、軍団を襲う。
「そうだ! 生憎の天気でちっとばかりやり難いが、光や電撃は俺にもやらせてもらうぜ!」
彼らの後ろから宙に舞い上がった黄が告げた。
刹那、彼の瞳の色が変化する。
「ここはネズミ一匹たりとも通さん!」
そして、黄の両手から稲妻が放たれ、壁をよじ登ろうとするミステイカーを一掃する。
「……容赦ねぇな」
瀬上が苦笑しつつ、眼下に眼を向ける軍団の中心にぽっかりと穴が開いている。
その円を広げるようにガラテアが次々にミステイカーを切り刻んでいる。彼女の背後には頭や四肢、腸が撒き散らされた胴が倒れ、鮮血が雨水によって広がり、文字通り一面が血の海に染まっている。
「いや、そうでもないか」
雨水でなく鮮血に全身を塗らしたガラテアが地面に両手をついて叫んだ。
「ここは一歩も通さん! 燃え上がれぇぇぇぇぇっ!」
刹那、地面が灼熱の溶岩となり、ミステイカー軍団は骨も残さずに燃え上がった。
「ミステイカーが全滅したな。第三防衛線で止めたらしい」
「そのようですね」
八重樫とクーガーが告げた。それを聞き、元紀が安堵する。
一樹と桐哉も衛星映像からそれを確認する。
一方、浦園は電話を神妙な顔で受けていた。
「……わかった。ならばそちらで対応してくれ。万が一の場合は、防衛線から援護をまわす」
電話を切り、浦園は一樹の肩を叩く。
「旧裾野市、旧御殿場市側の警戒区域境界線にもミステイカーが襲撃しているらしい」
「えっ!」
「数ヶ所で同時に、数はそれぞれ千前後らしい。タイミング、数からして恐らく陽動だろうが、確認はしておいてくれ。あっちには大隊、いや師団単位の防衛線が張られているんだ。ミステイカー相手に問題はないと思うが、念のために」
「わ、わかりました!」
一樹は慌てて映像を切り替え、噴煙を今も上げる富士山山麓で展開されている陸上自衛隊第一師団普通科連隊を中心に構成された大隊とミステイカーの軍勢が警戒区域境界線付近で戦闘を繰り広げていた。
戦車等による砲撃は行なっていないが、装甲車からの機銃攻撃や戦闘ヘリからの銃撃でミステイカーを押している。
「やはり陽動と考えて良さそうだな?」
「そう油断させる作戦とも考えられる」
玄奘が浦園に言う。彼は苦笑する。
「随分慎重だな?」
「お前は奴を知らぬから言えるのだ。油断、誘惑、そういった不完全な人だからこそ起こしうるものを奴は利用する」
「油断大敵という訳だな?」
「あぁ」
玄奘は頷く。
浦園は頭を掻き、元紀を見た。元紀が静かに頷くのを確認し、彼は嘆息しながら声を上げた。
「汐見、四ノ宮。聞こえるな? もう船はいい。一度戻ってきてくれ」
刹那、翔子と世莉が彼の前に転移してきた。
「どうした?」
「まだ私には方法があるぞ!」
「まぁそう急くな。声を第三防衛線に飛ばしてくれ」
そして、浦園は黄に連絡をする。
『なんだ?』
「すまないが、もう一働きしてくれ。自衛隊の援護だ」
『人使いが荒いぜ。全く……おら! さっさと転移させてくれ!』
文句を言いつつも、黄は旧裾野市内でミステイカー軍団と戦闘をする陸上自衛隊の援軍に回った。
そして、元紀は世莉に飲み物を渡した。
「お願い」
「もう展開するのか?」
「相手の進行の手際が思ったよりもいいんだ。近くで偵察をしていた可能性が高い」
桐哉が世莉に告げた。飲み物を飲み干すと、世莉は嘆息した。
「わかった。ここよりも外のがいい。玄奘、手伝え!」
「わかった。お前達、ここは任せたぞ」
世莉と玄奘は事務所から外へと出ると、両手を荒れ狂う空へと掲げた。
刹那、沼津支社全体が巨大な結界に覆われた。
「これで、守りはいいな?」
「えぇ。……後は時間との勝負ですね。組織が総力戦を望んでくる可能性も考えられるのにミステイカーと正面からの攻撃で収まるとは思えないわ」
結界によって風雨が止んだ外に立ち、元紀は前方の駿河湾を進む某大学丸二世を見つめた。
その時、通信が入った。自衛隊回線から回されたものだ。
慌てて事務所に戻り、一樹の渡す通信機に浦園が出た。
「どうした?」
『あ、隊長! 大変ッス! ミステイカーの中に爾落人が潜んでいました!』
通信は陸上自衛隊の普通科連隊と行動を共にしていた彼の部下からであった。
「相手の能力は?」
『何というか、無茶苦茶なんッスよ!』
『腕を振るえば装甲車を断ち、口から光線を放てば人を一瞬で消滅させてしまう』
「! その爾落人の特徴は?」
元紀が通信を代わり、彼らに聞く。
『赤い眼と髪をした男です。それ以上は、自分にも』
「……そのヒト「G」、デストロイアを複製して生み出した人物かも知れないわ」
『『デストロイア!』』
「攻撃のヒントにはならないけど、相手の力がわかれば守りの参考にはなると思うわ。……宮代君!」
「あいよ! その爾落人周辺の酸素濃度の急速な低下を確認。デストロイアと同一能力だろうね」
一樹が即座に答える。元紀は頷き、自衛隊へ無酸素中でも効果のある兵器での戦闘を助言した。
そして、黄にその人物への戦闘を中心に援護するよう伝えた。
「……旧裾野市は自衛隊と黄さんに任せたとして、次はどこが狙いやすい?」
通信を終えた元紀は桐哉に問いかけた。彼はパソコンを操作しながら、答える。
「僕がここを落とすのだったら、地形を利用しますね。海からの侵攻なら、戦力を東西に分断して、その上で正面と山から叩きます」
「やっぱりそれが定石ね。……となると、汐見さん」
元紀が翔子を見ると、彼女は紫煙を吐いて頷いた。
「第三防衛線に援軍を送ろう。誰だ?」
「一人は初之さん。彼なら黄さんがいなくなった穴を埋められるわ」
「疾風の爾落人か。確かに……送ったぞ」
翔子は旧東名高速に張られた第四防衛線で待機していた隼薙に伝え、彼を第三防衛線に転移した。
「他は?」
「行きましょう」
事務所に待機していた弦義が名乗りを上げた。元紀と翔子は頷き、彼を第三防衛線に転移させた。
「これで五人か。戦い慣れしている俺も援軍に……と言いたいが、その前に一仕事ある」
八重樫がそう告げると、彼はハイダに向かって銃を向けた。
「! ちょっとダイス!」
「……屈めっ!」
瞬時にハイダはその身を屈める。八重樫の構える銃が発砲され、彼女の後ろの壁に穴を開ける。
「ちっ!」
舌打ちをし、彼は更に銃口を動かし、壁際にいた綾に向ける。
「ちょっと!」
「ナナミさん! 彼女の後ろにいる爾落人の時間を止めてください!」
「えっ?」
突然クーガーに言われた菜奈美は当然戸惑う。次の瞬間、八重樫が綾の右肩すれすれを打ち抜く。弾はやはり壁にめり込んだ。
「どういうこと?」
驚く元紀にクーガーが早口で説明する。
「透過の爾落人です。今、廊下へと壁を抜けて出て行きました」
「まだ間に合う!」
八重樫は扉を開け、ロビーから廊下に回りこむ。菜奈美とクーガー、ハイダと綾も後に続く。
「捕捉の爾落人、八重樫大輔。俺の姿を捉えているんだな?」
誰もいない廊下から男の声が聞こえた。八重樫はその先に向けて銃を構えている。
「爾落人の数が一人多かった。……事務所に侵入してくれたお陰で捕捉できた」
「なるほど。……まぁ、すでに俺の任務は終わっている。後はお前らと好きに遊んでいいそうだ」
声は笑った。八重樫は銃を発砲した。廊下に甲高い銃声と薬莢の落ちる金属音、そして廊下の奥のガラスが割れる音が響く。
しかし、硝煙の臭いが廊下に漂うだけで変化はない。彼は間違いなく、敵を捕捉していた。
「無駄だよ。俺は透過の爾落人。光を透過して姿も消せれば、壁や銃弾を透過させることだってできる」
「それはどうでしょう?」
クーガーが笑い、綾とハイダに視線を向けた。二人は頷き、廊下に念を送る。
「よし!」
「捕まえた!」
「っ! 頭がぁ!」
二人の歓声に続き、男の呻き声が聞こえた。念によって男を攻撃したのだ。
「すばらしい連携ですね。念撃が網目状に両側から彼を包んでいますよ! まるで魚を網で捕らえるようですね」
「魚って……クーガー、あなたねぇ」
「のん気なこと言っていると、念も透過するぞ!」
八重樫に忠告され、菜奈美はすぐさま男の時間を止める。
「くっ!」
男は呻き声を上げ、動きを封じられる。八重樫は男に銃口を突きつけた。
「名乗れ! 透過の爾落人!」
「南條春雄。創造主様に生み出された組織の構成員だ」
「目的は達したと言っていたが、それはこちらの戦力の把握か?」
「それもある」
「……ハイダ、どうだ?」
八重樫は南條のこめかみに当たる場所に銃を突きつけたまま、ハイダに聞いた。
南條の思念を読み取ったハイダは頷き、答える。
「彼は地下にも潜入しています。目的は確認です」
「時空の爾落人が本当に誕生するか、それを確認する為か?」
「そうです。……ダイス、どうしますか? 彼は既に情報を蛾雷夜に渡しています」
「殺す。こいつを生かしておいても利用価値はない」
「でも、捕虜には?」
綾が思わず八重樫に聞くが、彼は首を振った。
「既に蛾雷夜もこの男に必要性はない。……ハイダ、こいつは爆弾等の破壊工作を目論んでいるか?」
「いいえ。どうやら潜入を楽しんでいたようです」
ハイダが答えた。
「悪趣味だな」
「それが俺の能力だ。本能に従っただけさ、捕捉の爾落人」
南條の声が笑った。既に彼は戦闘意思を持っていない。犯行がばれた愉快犯の心理と同じだった。
八重樫は銃口を下げ、引き金を引いた。
「ぎゃぁぁぁ!」
銃声に続いて、南條の悲鳴が廊下に響いた。滴る血が床に現われた。
「生体から離れると血でも見えるようになるらしい。………おらっ!」
「ぶはっ!」
八重樫は廊下の隅に置かれていたペンキの缶をひっくり返し、南條にペンキをかぶせた。瞼を閉じ、口に入ったペンキを吐き出す様子が見える。頭髪、輪郭、首、肩、上半身とペンキに着色された部位が露わになる。ペンキが腹を滴り、下腹部も露わになるのに気づいた八重樫は上着を脱ぎ、彼の腹から下を隠した。
「女の前だ。露出狂」
「へへへ、開放的で悪くないぜ?」
「二階堂、封力手錠があったな?」
南條の言葉を無視し、八重樫は綾から封力手錠を受け取り、彼の両手を拘束する。同時に、ペンキがかかっていない部位も露わになる。撃たれた右腕から出血していた。
八重樫はおもむろにペンキと共に置かれていたガムテープを取り、その腕をぐるぐると巻きつけた。
「痛ぇ!」
「命があるんだ、文句を言うな。……ハイダ、そこの空き部屋を使ってこいつを尋問するぞ。桧垣、もう時間の拘束はいい」
菜奈美は止めていた時間を解放し、床に倒れる南條を八重樫が掴む。
「そこのお嬢ちゃんは尋問してくんないのかよ」
「甘えるな! 俺とハイダが可愛がる」
「あいよ。まぁ可愛いフリフリもいいけど、硬派に見えて結構挑発的なものを身につけてる姉ちゃんも、俺は好きだぜ?」
「「なっ!」」
一瞬、何を言っているのかわからなかった八重樫であったが、二人が赤面して南條を叩く様子を見て察した。
「やはり悪趣味だな。さて、敵側の情報をたっぷり話してもらうぞ!」
「そうよ、女の敵!」
「あ、俺は一定の外見年齢以上は見ない主義なんだ」
「! 八重樫君。この変態、殺すわ。私が殺す!」
綾が念撃を放とうとするのを菜奈美が慌てて抑え、その隙に八重樫とハイダは南條を空き部屋に連れて行った。
まもなく、現在進行中の某大学丸二世に乗る蛾雷夜一派の情報が彼の口から語られた。
しかし、それは僅かに遅かった。
第二防衛線付近に某大学二世からキャシャーンが転移され、数秒後には数万の軍勢となったキャシャーン軍が第三防衛線に向かって侵攻を開始した。
同時刻、富士市東部を東西に走る県道167号線の西側に流れる沼川支流に沿って張られた巨大なフェンス、警戒区域と他を区切る境界線に設けられた唯一の出入り口、国道1号線旧沼津バイパスゲートでは、内側を陸上自衛隊の旧御殿場市坂妻駐屯地の隊、外側を静岡県警察機動隊が共同警備を行なっていた。
彼らの場所からは愛鷹山が壁となって富士山の噴煙を見ることはできないが、災害発生以後、彼らの任務は治安維持において非常に重要な役割となっていた。ここにいる彼らはほぼ全員が6年前、大地が崩壊し、海が襲い、空を闇が包み、全てを泥と灰が覆った現場で災害救援を行なっていた。そして、過去の災害には存在が明るみに出なかった「G」による事件や被害も多発し、それを経験してきた現在の彼らはただの公務員同士でなく、同じものを守る為にそれぞれの方法で戦う盟友となっていた。
倫理面におけるその関係性は賛否がある。だが、それ以上に彼らはプロとしての信頼を互いに持っていた。
「灰、今日は少ないですね」
「……台風だからな。視界の悪さは変わらん」
ゲートの前を警備する機動隊員二人が言葉を交わしていた。
横殴りの雨は次第にその量を増し、現在の視界は非常に悪い。台風時の制圧訓練をおこなっている彼らでも今回の台風での警備は辛いと思った。
「さっきまではある程度先も見えていたが、今は10メートル先を見ることも……」
「っ………」
「ん? ……!」
次の瞬間、彼の首は重力に従って、先に地面に倒れていた相棒の胴体の上に落ちた。
彼らの鮮血は非常に激しい雨によって流れ、犯人の姿も凶器も同じように消えた。
刹那、高架道路の裏側と川の中から無数の襲撃者が現われ、機動隊は壊滅した。
ゲートが開かれ、フェンスが破られ、警戒区域内に侵入した彼らは暴風雨の中、自衛隊と交戦状態になった。
雨音に紛れて銃声が響き、やがて悲鳴が増え、遂に雨音だけになった。
数分後、旧沼津市と富士市の境で南北一列に走る大規模な爆発が起こった。
「敵が第一防衛線である富士側の警戒区域境界線を突破した。第二防衛線の地雷原で大半を倒したはずだが、監視カメラの映像から相手はおそらくミステイカーだ」
一号館事務所で八重樫が言った。隣に立つ浦園も頷いた。元紀と最深部から戻ってきた玄奘が聞く。
「第二防衛線に張った「G」センサーの結果もミステイカーとしている」
「ついでに、某国の監視衛星映像でも凡そ万を越える数のミステイカーが走る姿を確認しているぜ」
机に向かっていた一樹がパソコンから手を離すと振り返って告げた。
元紀は一度無言で顔を俯き、深く息を吐くと顔を上げた。
「ミステイカーの残存数は?」
「最新の情報で約10パーセントの千強ってところかな。流石、最新型高性能爆薬だわ」
一樹がすぐさま答えた。
「いよいよね」
「まもなく第三防衛線に到着する。……! 駿河湾からも爾落人が三人来るぞ」
「船ですね。複製の爾落人、反転の爾落人、それと身増の爾落人ですが機械とも違う生体改造を施していますね」
八重樫が捕捉したものをクーガーが視解して告げた。
元紀が頷き、世莉と翔子に視線を移した。
「お願いします」
二人は頷いた。そして、世莉は一樹の入手した敵陣の動きを複数のモニターで観察する桐哉に視線を向けた。
すでに白髪が混ざり始めている彼の頭がモニター越しに見える。そこから彼は視線を上げ、世莉と視線をあわせ、微笑みを浮かべ頷いた。
世莉も無言で頷く。これで十分だった。
「よし、翔子。行くぞ」
身を翻し、何か言いたげな翔子に言った。彼女は肩をすくませると頷く。
「わかった」
そして、二人は嵐の砂浜に転移し、駿河湾上を飛行する某大学丸二世に手を翳した。
刹那、船の周囲に大量の爆弾が転移され、次々に爆発した。
雨をも吹き飛ばす衝撃が起こり、船は爆発の直撃を受ける。
「やったか?」
翔子が問うが、世莉は首を振った。
「……無傷か」
翔子も強風によって流された煙の中から現われた船を確認した。
「あの女だ」
世莉は視界を転移させて見たものを翔子と事務所の元紀達に見せる。
船の先端に立つポニーテールの女性が見える。
「反転の爾落人ですね。全ての力を反転させられる力というところでしょうか」
クーガーの声が翔子と世莉の耳に届く。世莉が転移させたのだ。
「つまり、単純な攻撃では傷すら付けられないわけか。……えぇい! 厄介だな!」
翔子が地団太する。
「まだ方法はある! 空間ごと潰してやる!」
世莉は船の周囲に巨大な結界を張り、それを一瞬で押し潰す。
しかし、次の瞬間、結界は逆に押し広げられた。
「!」
「無駄です。空間を仕切り、押し潰すのではその圧縮を反転され拡散されます」
クーガーの声が世莉の耳に届く。彼女は舌打ちした。
「なら、宇宙の果てに飛ばしてやる!」
世莉は叫び、船を転移させる。だが、次の瞬間には船は元の場所に戻ってきた。
「転移は奴に通用しない。それが複製だ」
「くっ!」
玄奘の転移された言葉に諭され、世莉は下唇を噛む。
その時、激しい爆発が彼女達の西方から起こった。
「あちらも始まったか……」
翔子は呟いた。
第三防衛線として壁が築かれているかつての市境では、ガラテアの起こした激しい爆発によってミステイカー軍団との戦いの火蓋が切られていた。
爆発による煙幕の中へガラテアが爪を鋭利に伸ばし、先陣をきって飛び込む。
壁の上から瀬上と東條がレールガンと光撃でガラテアの援護射撃をする。
「あぁ! キリがない!」
「千以上の数とはいえ、所詮はミステイカーだ! 俺達だけでここは食い止められる!」
瀬上が東條に言いながら、傍らに置いた箱からパチンコ玉を掴み取ると宙に撒き、もう一方の手でそれらを弾く。パチンコ玉はレールガンの散弾となり、軍団を襲う。
「そうだ! 生憎の天気でちっとばかりやり難いが、光や電撃は俺にもやらせてもらうぜ!」
彼らの後ろから宙に舞い上がった黄が告げた。
刹那、彼の瞳の色が変化する。
「ここはネズミ一匹たりとも通さん!」
そして、黄の両手から稲妻が放たれ、壁をよじ登ろうとするミステイカーを一掃する。
「……容赦ねぇな」
瀬上が苦笑しつつ、眼下に眼を向ける軍団の中心にぽっかりと穴が開いている。
その円を広げるようにガラテアが次々にミステイカーを切り刻んでいる。彼女の背後には頭や四肢、腸が撒き散らされた胴が倒れ、鮮血が雨水によって広がり、文字通り一面が血の海に染まっている。
「いや、そうでもないか」
雨水でなく鮮血に全身を塗らしたガラテアが地面に両手をついて叫んだ。
「ここは一歩も通さん! 燃え上がれぇぇぇぇぇっ!」
刹那、地面が灼熱の溶岩となり、ミステイカー軍団は骨も残さずに燃え上がった。
「ミステイカーが全滅したな。第三防衛線で止めたらしい」
「そのようですね」
八重樫とクーガーが告げた。それを聞き、元紀が安堵する。
一樹と桐哉も衛星映像からそれを確認する。
一方、浦園は電話を神妙な顔で受けていた。
「……わかった。ならばそちらで対応してくれ。万が一の場合は、防衛線から援護をまわす」
電話を切り、浦園は一樹の肩を叩く。
「旧裾野市、旧御殿場市側の警戒区域境界線にもミステイカーが襲撃しているらしい」
「えっ!」
「数ヶ所で同時に、数はそれぞれ千前後らしい。タイミング、数からして恐らく陽動だろうが、確認はしておいてくれ。あっちには大隊、いや師団単位の防衛線が張られているんだ。ミステイカー相手に問題はないと思うが、念のために」
「わ、わかりました!」
一樹は慌てて映像を切り替え、噴煙を今も上げる富士山山麓で展開されている陸上自衛隊第一師団普通科連隊を中心に構成された大隊とミステイカーの軍勢が警戒区域境界線付近で戦闘を繰り広げていた。
戦車等による砲撃は行なっていないが、装甲車からの機銃攻撃や戦闘ヘリからの銃撃でミステイカーを押している。
「やはり陽動と考えて良さそうだな?」
「そう油断させる作戦とも考えられる」
玄奘が浦園に言う。彼は苦笑する。
「随分慎重だな?」
「お前は奴を知らぬから言えるのだ。油断、誘惑、そういった不完全な人だからこそ起こしうるものを奴は利用する」
「油断大敵という訳だな?」
「あぁ」
玄奘は頷く。
浦園は頭を掻き、元紀を見た。元紀が静かに頷くのを確認し、彼は嘆息しながら声を上げた。
「汐見、四ノ宮。聞こえるな? もう船はいい。一度戻ってきてくれ」
刹那、翔子と世莉が彼の前に転移してきた。
「どうした?」
「まだ私には方法があるぞ!」
「まぁそう急くな。声を第三防衛線に飛ばしてくれ」
そして、浦園は黄に連絡をする。
『なんだ?』
「すまないが、もう一働きしてくれ。自衛隊の援護だ」
『人使いが荒いぜ。全く……おら! さっさと転移させてくれ!』
文句を言いつつも、黄は旧裾野市内でミステイカー軍団と戦闘をする陸上自衛隊の援軍に回った。
そして、元紀は世莉に飲み物を渡した。
「お願い」
「もう展開するのか?」
「相手の進行の手際が思ったよりもいいんだ。近くで偵察をしていた可能性が高い」
桐哉が世莉に告げた。飲み物を飲み干すと、世莉は嘆息した。
「わかった。ここよりも外のがいい。玄奘、手伝え!」
「わかった。お前達、ここは任せたぞ」
世莉と玄奘は事務所から外へと出ると、両手を荒れ狂う空へと掲げた。
刹那、沼津支社全体が巨大な結界に覆われた。
「これで、守りはいいな?」
「えぇ。……後は時間との勝負ですね。組織が総力戦を望んでくる可能性も考えられるのにミステイカーと正面からの攻撃で収まるとは思えないわ」
結界によって風雨が止んだ外に立ち、元紀は前方の駿河湾を進む某大学丸二世を見つめた。
その時、通信が入った。自衛隊回線から回されたものだ。
慌てて事務所に戻り、一樹の渡す通信機に浦園が出た。
「どうした?」
『あ、隊長! 大変ッス! ミステイカーの中に爾落人が潜んでいました!』
通信は陸上自衛隊の普通科連隊と行動を共にしていた彼の部下からであった。
「相手の能力は?」
『何というか、無茶苦茶なんッスよ!』
『腕を振るえば装甲車を断ち、口から光線を放てば人を一瞬で消滅させてしまう』
「! その爾落人の特徴は?」
元紀が通信を代わり、彼らに聞く。
『赤い眼と髪をした男です。それ以上は、自分にも』
「……そのヒト「G」、デストロイアを複製して生み出した人物かも知れないわ」
『『デストロイア!』』
「攻撃のヒントにはならないけど、相手の力がわかれば守りの参考にはなると思うわ。……宮代君!」
「あいよ! その爾落人周辺の酸素濃度の急速な低下を確認。デストロイアと同一能力だろうね」
一樹が即座に答える。元紀は頷き、自衛隊へ無酸素中でも効果のある兵器での戦闘を助言した。
そして、黄にその人物への戦闘を中心に援護するよう伝えた。
「……旧裾野市は自衛隊と黄さんに任せたとして、次はどこが狙いやすい?」
通信を終えた元紀は桐哉に問いかけた。彼はパソコンを操作しながら、答える。
「僕がここを落とすのだったら、地形を利用しますね。海からの侵攻なら、戦力を東西に分断して、その上で正面と山から叩きます」
「やっぱりそれが定石ね。……となると、汐見さん」
元紀が翔子を見ると、彼女は紫煙を吐いて頷いた。
「第三防衛線に援軍を送ろう。誰だ?」
「一人は初之さん。彼なら黄さんがいなくなった穴を埋められるわ」
「疾風の爾落人か。確かに……送ったぞ」
翔子は旧東名高速に張られた第四防衛線で待機していた隼薙に伝え、彼を第三防衛線に転移した。
「他は?」
「行きましょう」
事務所に待機していた弦義が名乗りを上げた。元紀と翔子は頷き、彼を第三防衛線に転移させた。
「これで五人か。戦い慣れしている俺も援軍に……と言いたいが、その前に一仕事ある」
八重樫がそう告げると、彼はハイダに向かって銃を向けた。
「! ちょっとダイス!」
「……屈めっ!」
瞬時にハイダはその身を屈める。八重樫の構える銃が発砲され、彼女の後ろの壁に穴を開ける。
「ちっ!」
舌打ちをし、彼は更に銃口を動かし、壁際にいた綾に向ける。
「ちょっと!」
「ナナミさん! 彼女の後ろにいる爾落人の時間を止めてください!」
「えっ?」
突然クーガーに言われた菜奈美は当然戸惑う。次の瞬間、八重樫が綾の右肩すれすれを打ち抜く。弾はやはり壁にめり込んだ。
「どういうこと?」
驚く元紀にクーガーが早口で説明する。
「透過の爾落人です。今、廊下へと壁を抜けて出て行きました」
「まだ間に合う!」
八重樫は扉を開け、ロビーから廊下に回りこむ。菜奈美とクーガー、ハイダと綾も後に続く。
「捕捉の爾落人、八重樫大輔。俺の姿を捉えているんだな?」
誰もいない廊下から男の声が聞こえた。八重樫はその先に向けて銃を構えている。
「爾落人の数が一人多かった。……事務所に侵入してくれたお陰で捕捉できた」
「なるほど。……まぁ、すでに俺の任務は終わっている。後はお前らと好きに遊んでいいそうだ」
声は笑った。八重樫は銃を発砲した。廊下に甲高い銃声と薬莢の落ちる金属音、そして廊下の奥のガラスが割れる音が響く。
しかし、硝煙の臭いが廊下に漂うだけで変化はない。彼は間違いなく、敵を捕捉していた。
「無駄だよ。俺は透過の爾落人。光を透過して姿も消せれば、壁や銃弾を透過させることだってできる」
「それはどうでしょう?」
クーガーが笑い、綾とハイダに視線を向けた。二人は頷き、廊下に念を送る。
「よし!」
「捕まえた!」
「っ! 頭がぁ!」
二人の歓声に続き、男の呻き声が聞こえた。念によって男を攻撃したのだ。
「すばらしい連携ですね。念撃が網目状に両側から彼を包んでいますよ! まるで魚を網で捕らえるようですね」
「魚って……クーガー、あなたねぇ」
「のん気なこと言っていると、念も透過するぞ!」
八重樫に忠告され、菜奈美はすぐさま男の時間を止める。
「くっ!」
男は呻き声を上げ、動きを封じられる。八重樫は男に銃口を突きつけた。
「名乗れ! 透過の爾落人!」
「南條春雄。創造主様に生み出された組織の構成員だ」
「目的は達したと言っていたが、それはこちらの戦力の把握か?」
「それもある」
「……ハイダ、どうだ?」
八重樫は南條のこめかみに当たる場所に銃を突きつけたまま、ハイダに聞いた。
南條の思念を読み取ったハイダは頷き、答える。
「彼は地下にも潜入しています。目的は確認です」
「時空の爾落人が本当に誕生するか、それを確認する為か?」
「そうです。……ダイス、どうしますか? 彼は既に情報を蛾雷夜に渡しています」
「殺す。こいつを生かしておいても利用価値はない」
「でも、捕虜には?」
綾が思わず八重樫に聞くが、彼は首を振った。
「既に蛾雷夜もこの男に必要性はない。……ハイダ、こいつは爆弾等の破壊工作を目論んでいるか?」
「いいえ。どうやら潜入を楽しんでいたようです」
ハイダが答えた。
「悪趣味だな」
「それが俺の能力だ。本能に従っただけさ、捕捉の爾落人」
南條の声が笑った。既に彼は戦闘意思を持っていない。犯行がばれた愉快犯の心理と同じだった。
八重樫は銃口を下げ、引き金を引いた。
「ぎゃぁぁぁ!」
銃声に続いて、南條の悲鳴が廊下に響いた。滴る血が床に現われた。
「生体から離れると血でも見えるようになるらしい。………おらっ!」
「ぶはっ!」
八重樫は廊下の隅に置かれていたペンキの缶をひっくり返し、南條にペンキをかぶせた。瞼を閉じ、口に入ったペンキを吐き出す様子が見える。頭髪、輪郭、首、肩、上半身とペンキに着色された部位が露わになる。ペンキが腹を滴り、下腹部も露わになるのに気づいた八重樫は上着を脱ぎ、彼の腹から下を隠した。
「女の前だ。露出狂」
「へへへ、開放的で悪くないぜ?」
「二階堂、封力手錠があったな?」
南條の言葉を無視し、八重樫は綾から封力手錠を受け取り、彼の両手を拘束する。同時に、ペンキがかかっていない部位も露わになる。撃たれた右腕から出血していた。
八重樫はおもむろにペンキと共に置かれていたガムテープを取り、その腕をぐるぐると巻きつけた。
「痛ぇ!」
「命があるんだ、文句を言うな。……ハイダ、そこの空き部屋を使ってこいつを尋問するぞ。桧垣、もう時間の拘束はいい」
菜奈美は止めていた時間を解放し、床に倒れる南條を八重樫が掴む。
「そこのお嬢ちゃんは尋問してくんないのかよ」
「甘えるな! 俺とハイダが可愛がる」
「あいよ。まぁ可愛いフリフリもいいけど、硬派に見えて結構挑発的なものを身につけてる姉ちゃんも、俺は好きだぜ?」
「「なっ!」」
一瞬、何を言っているのかわからなかった八重樫であったが、二人が赤面して南條を叩く様子を見て察した。
「やはり悪趣味だな。さて、敵側の情報をたっぷり話してもらうぞ!」
「そうよ、女の敵!」
「あ、俺は一定の外見年齢以上は見ない主義なんだ」
「! 八重樫君。この変態、殺すわ。私が殺す!」
綾が念撃を放とうとするのを菜奈美が慌てて抑え、その隙に八重樫とハイダは南條を空き部屋に連れて行った。
まもなく、現在進行中の某大学丸二世に乗る蛾雷夜一派の情報が彼の口から語られた。
しかし、それは僅かに遅かった。
第二防衛線付近に某大学二世からキャシャーンが転移され、数秒後には数万の軍勢となったキャシャーン軍が第三防衛線に向かって侵攻を開始した。