決着の日~2028~
「ひえぇ…」
「どこへ向かうんだ?方向的には海に向かっているようだが」
女池は蛍達を撒くと人通りの少ない裏道を走らせ、停車していた乗用車のドライバーを射殺。車を乗り換えると再び岸田に運転させて移動していた。その際験司には結束バンドで両手の親指を拘束し、助手席に乗せた。
「知る必要はありません」
女池は何度かに分けて誰かに連絡を取っていた。その際、日本語や英語ではない言語で喋っている。験司にはどこの言語かはぼんやりとしか分からなかったが、大陸系の発音に聞こえた。
「……」
女池は言語という手掛かりを二人に残している。迂闊だと踏んでいた験司だが、今は焦っていた。手掛かりを知ってしまっている自分達は邪魔な存在。今は生かされていても最終的には口封じに始末されるだろう。
「…うぅ…ぐすっ」
岸田は涙目ながらもGnosis運転担当の意地で支障なく運転をこなしていた。今は冷や汗をかきながらブレーキペダルを目一杯踏み込んでいる。
「ふっ」
ある光景に気づいた験司から笑いが漏れた。女池は直前の通話でのやり取りを終え、やや狼狽しつつも平静を保って自動拳銃を向ける。
「…何がおかしいんですか?」
「うわぁぁぁあ!!!」
岸田の悲鳴。陽動だと判断した女池は岸田を無視した。験司に向けたままの自動拳銃だったが、岸田の視線の先にある明らかに異常な光景の前にシートベルトを装着せざるを得なくなってしまう。女池が目撃したのは、運転手のいない乗用車がこちらに突っ込んでくる光景だった。