決着の日~2028~
「ただいま~…」
食事を外で済まして自室に帰ってきた一樹。1LDKの部屋に電気を点けると、間髪入れずにテレビと暖房も点けた。部屋の広さとは不釣り合いな小さいテレビが数あるチャンネルから番組を映し出す。性別不詳の巨漢タレントが司会をする情報バラエティを流し見ながら浴室へ向かうと服を脱いだ。
「ふぁ~」
一樹は風呂を済ませてきた。火照った身体で薄着のまま部屋をうろつき、ドライヤーで髪を乾かすと軽快な足つきでキッチンへ向かう。自炊はしないため、清潔なキッチン周りの冷蔵庫から缶ビールを取り出してプルタブを開けた。冬場の暖房を効かせた部屋で冷えたビールを堪能する。この矛盾が何よりの楽しみだ。
一樹は缶ビールを飲み干すとベッドに寝転がってスマートフォンを枕元の充電器に繋いだ。うつ伏せで呆けながらテレビを流し見る。
「はぁ…」
ここは立地、日当たり、クローゼットの広さなど中々気に入っている部屋だ。自分のだらしなさを許容してくれる包容力のあるレイアウト。賃貸で借りている部屋だが、いつまでここに住み続ける事ができるのか不安になる時がある。自分の外見が老けなければ周囲から不審がられて爾落人であると露呈するし、そもそも免許証の更新も危うい。この辺りも爾落人のために法整備するのを今は祈るしかなかった。思い切って一軒家を建てようにも耐用年数が自分よりも劣るわけであり気が進まない手前、住居の心配をするよりかは旅人をしている方が気楽なのかもしれない。
「……」
そう憂いている間に眠りにつくのが一樹の毎日だった。電気の点けっ放し、テレビの点けっ放しによって一晩で何回も目を覚ましては二度寝を決め込み夜が更けていく。やがて翌朝、スマートフォンに届いていた八重樫のメッセージを見た途端眠気がぶっ飛んだ。