みぎうで
到着した輸送ヘリは、目的地から少し離れた場所に着陸した。ダイスはヘリから武器を持ち出してハイダと降りる。ウォードはハイダの制止する間もなく、有無を言わさぬ手早さでパイロットを射殺した。
「……」
ウォードは輸送ヘリに手榴弾をばら撒いて破壊した。操縦席、カーゴスペース、ローターの付け根。誰かが二度と使用できないよう、徹底的に破壊しておく。三人はそのまま、闇医者の潜伏する民家へ歩き出した。また、ウォードが引き続きブルーストーンを持っている。
「ヘリは破壊しなくてもよかったのでは?」
「そうでもない。地元民が群がれば衛星から米軍に居場所が割れてしまう」
「次の移動で空路を使うにしてもかなり目立つ。今度は血なまこになって探す米軍のレーダーで動向が筒抜けだろう」
「パイロットも口封じ…ですか」
「お前が記憶を消せば済む話だろうが、こんなところで解放したところで地元民からリンチに遭うだけだ」
「キャンプに合流する前に苦しんで死ぬか今楽に死ぬかの違いだろう」
そう言う二人の目は、冷たい。二人の本質を垣間見た気がした。
「それより石の処遇だ。王宮に戻すより破壊した方がいいんじゃないのか?」
ブルーストーン。これだけの物をそのまま放置しておく訳にはいかない。当初は王宮へ戻すのが目的ではあったが、代物が代物だったため処遇が慎重にならなければならなかった。最早ダイスとウォードにとっても他人事ではない代物になっていた。
「それが可能ならそうした方がいいでしょう。しかし思念ではそれができそうにない」
「これを木っ端微塵に吹き飛ばすには相当な爆薬がいるぞ」
「ベースキャンプまで行けば大量のC4が手に入るだろうが、それまで持ち歩くリスクは爾落人に負えない」
「ここまでくると物理的に破壊可能なのかも怪しいところです」
「石を埋めても海に捨てても最終的に誰の手に渡るのか分からない」
「それよりかは目の届くところに保管させた方がマシなのかもしれません」
「この件に関して決めるのはお前だ。決定権はお前にある」
「石をどうするにしろ、王宮までは付き合ってもらうがな」
ハイダは少し思慮する。
「王宮へ返却する。それでいきましょう」
「いいだろう」
「だがしっかり管理させなければ今回の二の舞だ」
「私に考えがあります。ダイス達の企てたサマターへの報復ですが、殺害するだけでは収まらないのでは?」
「そうだな」
「……」
仲間を二人失い、ワーカーも離反した。チームとしての代償が大きくなってしまった今は立て直しを優先した方がいいかもしれなかった。二人はハイダの提案に耳を傾けた。
「おいおい、厄介ごとはお断りだ!」
闇医者の民家までやってきた三人。窓口から顔を出す顔役は人種と服装から瞬時に訳ありだと見抜いた。それから追い返そうと三人に迫る顔役だったが、金の話をチラつかせると態度を一変させてすぐに中へ招き入れた。
「待て。ハイダ」
ダイスは診せる前にハイダに暗示を解かせて痛覚を復活させた。隊服の腕を捲り、患部を闇医者に差し出すダイス。