みぎうで


「GPSとIFF(敵味方識別コード)を切れ。針路をこのままでいい。高度を少し下げて速度を上げろ」


ダイスはパイロットに細かい指示を出すと椅子に座った。捕捉で索敵を意識するとヘルメットを取った。ウォードも同じく座る。ようやく一区切りついたようだった。


「どこへ行くんです?」
「知り合いの闇医者のところだ」
「このまま王宮へは行かないということですか?」
「そうだ」
「このまま王宮へ行った方が早いのでは」
「ラサットへ乗り込むなら空路は不利だ。上手く立ち回れても戦闘機が出てくれば太刀打ちできない」
「一度立て直しておかなければ連戦は堪えるぞ。お前だって消耗しているだろう」


ハイダは納得した。自分の事もだが、確かにダイス達は連戦であったし、スアレスのような簡単なミスだってあるかもしれない。


「ダイス、ウォード」
「なんだ」
「ワーカーの件、二度も助けてもらいありがとうございました」
「気にするな。両方ともお前に非はない。ワーカーの暴走を予防できなかった俺達のミスだ。俺が被弾したのもウォードがベストを尽くした上での結果でこれ以上好転的な結果はない」


ハイダが不思議に思えたのは、二人とも仲間だったワーカーに対し驚くほどドライだった事だ。


「ワーカーはどうなったんでしょうか」
「とっくに捕捉圏外へ出て行った。この様子だと逃げ延びただろう」
「元から錯乱には長けていたからな。上手くやれば一人で切り抜けられる」



そう言う二人は他人事のように分析している。ワーカーが死亡したとは思っていないようだった。


「信用しているんですね」
「性格はともかく、戦力として信頼はしていた」
「正確には今までワーカーに仕込んだ技術に信頼していたんだ」
「ワーカー本人には信用していなかったんですか?」
「そこまではな。最初はそれなりだったが、最近奴は心を病んでいた」
「お前には分からないだろうが、銃撃戦の高揚感が中毒になる兵士が世の中にはいる。ワーカーはその典型的な例だった」
「追放という選択肢があったのでは?」
「確かにそれもありだっただろう。だが奴を野放しにすれば何をしでかすか分からない。それより俺達で手綱を握っていれば制御できると思っていた」
「だが考えが甘かったようだ。お前の敵ではないだろうが、これからお互い闇討ちに気をつけるんだな」
「…はい」
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