みぎうで


「壁際に寄れ」


デルタとラシード派の間で銃撃戦が発生していた。緑のレーザーポインターを装着したカービン銃に、暗視装置を備えたグレードの高い装備、連携で兵士を圧倒しながら侵攻する。


「チームアルファ、確保」


隊員は指揮官クラスの兵士を拘束すると結束バンドで後ろ手に縛る。後で警察署で何が起きたのかは取り調べるためだった。後は輸送ヘリと合流し、撤退するのみ。殲滅は攻撃ヘリに任せればいい。大尉は通信担当の隊員に輸送ヘリを呼び出させる。


「大尉、アタッカーが全機撃墜されました」
「なんだと?」
「ハイパー21も撃墜、残るはハイパー29のみです」


攻撃ヘリが全て落ちた。さらに自分達の乗ってきた輸送ヘリ二機のうち一機も落とされた。想定外すぎる現状に違和感を感じる大尉。比較的鈍重な輸送ヘリはもとかく、まともな対空兵器もなしに高機動の攻撃ヘリを落とすなどおかしな話だ。それが爾落人の仕業であると思いも寄らない大尉だった。


「チームブラボーはハイパー21の墜落地点へ急行、生存者の確認と機体を破壊しろ。エルスマン、HQにもう一機迎えを要請しろ」
「了解」
「チームアルファはハイパー29に合流する。行くぞ」









『もうすぐ合流する。撃つな』


ダイスとハイダの前にサイレンサー付きのライフルを携えたウォードが姿を現した。どうやら必視で兵士の視線を避けるタイミングを見ながらここまで来たようだ。ほとんど消耗がないらしく、無傷。ダイスはブルーストーンを手渡した。


「石を持て」


この状況では敵の配置を捉える捕捉が優先だった。ブルーストーンを預けられたウォード。能力が使えなくなるのは知っているはすだが躊躇なく受け取る。ポケットに収納し、援護の配置につく。


「最後に視たがデルタが接近している。フォーマンセルスリーセット」


ダイスに蘇る捕捉の感覚。長年晒され続け、全身に襲いかかる拒絶しようのない情報の刺突。捕捉に愛着があったわけではないが心地よさを憶えた。敵であろう兵士、上空の輸送ヘリのパイロット、デルタ隊員、市民、民兵、動物、虫。それらから予測で敵を選り分ける。


「それらしいのを捉えた。南東と北東から来ている」
「南東の迎撃任せろ。俺が殺る」


ウォードはライフルと狙撃銃の射撃準備を始めた。最適な位置取りができる場所に待ち伏せをするようだった。ダイスも迎撃位置に着く。ここは遮蔽物が多くて敵の移動ルートを限定しやすく、少人数でも迎撃が容易い地形だ。この状況のために、脅威となる攻撃ヘリを墜させたのだった。今から周辺を捕捉しながらハイダを、ここを死守しなければならない。
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