みぎうで


「来ます!」


ライトを消したパトカーがスピードを上げ、二人のどちらかを轢こうと猛スピードで向かってきている。ハイダはハンドルを念力で掌握すると大きく切った。車体後部が振られたパトカーは勢いよく横転していくと兵士を下敷きにして止まった。


「いたぞ!」
「こっちだ!皆呼べ!」


再び銃撃の嵐に見舞われる二人。ハイダは土を盛り上げて壁を作った。同一方向の防御に秀でていた壁に着弾の衝撃も吸収され、弾丸も受け止められている。


「どういう事だ?」
「撃ち方やめ!」


今度は手榴弾を投げてきた。放物線の軌道で壁を越えてくる手榴弾。攻撃手段として間違っておらず、兵士の柔軟な対応ではあったが相手が悪かった。ハイダは念力で手榴弾を捕まえると兵士の元へ送り返した。物陰に隠れている兵士にも届くよう、軌道を直角に曲げて手元まで投げる。返ってきた手榴弾は持ち主の元で炸裂した。


「任せろ!」


こちらに向けてRPGを構える兵士が二人いた。ダイスから見て10時と2時、V時方向から狙われている。発射された弾頭。したり顔の兵士。ハイダはロケットで推進する弾頭の軌道を念力で逸らして兵士へ向ける。


「なんだと!」
「馬鹿な!?」


吹き飛ぶ兵士。敵を狙ったはずの味方の弾頭が味方を襲い、友軍同士を誤爆させた。恐れる兵士。攻撃を躊躇っているのか次のアクションはない。それに追い打ちをかけるように、耳をつんざく飛行音が近づいてきた。


「コブラだ!」
「撃ち落とせ!」


デルタの要請していた攻撃ヘリが付近を掃射しているようだ。断続的な発砲音と爆音が大気を揺らす。それに兵士は恐れ、混乱に陥る。戦車や装甲車では対抗できないからだった。車輌にとって攻撃ヘリは天敵とも言えた。


「あれは…」


ハイダが眉をしかめた。昼間に襲ってきた機種と同型だ。こちらにはまだ気づいていない様子だが、これだけ暴れていてはいずれ見つかるだろう。


「あれを落としますか?」
「やれ」


ハイダはダイスのイメージ通り、攻撃ヘリのメインローターをへし折る。それだけだ。それだけで機体は浮力を失い落ちていく。さらにその落下地点を誘導し、ラシード派の装甲車へ墜落させた。弾薬へ引火し、大爆発を起こす機体。


「移動する」


ダイスとハイダ。捕捉と思念。軍事知識と実行力。ウォードとは違った意味で互いの足りない部分を補完し合える二人。この場、この時だけは最強に近い。


「ハイダ、あれを奪えるか?あの時ハンヴィーを引き寄せたみたいに」


ダイスは上空を飛ぶデルタの輸送ヘリを銃口で指し、ハイダは面食らった。あれのテレキネシスは今まで考えたこともなかった。確かに手に入れられればハンヴィーとは比べ物にならない程快速だろうが。


「あれですか?できるとは思いますが…車と違って繊細な感覚を維持できないと壊れますよ?その間は私が無防備になります」
「そこは援護する。まずは攻撃ヘリを全て落とす」
44/56ページ
スキ