みぎうで
署内の四人は敵襲を報せながら、ブルーストーンのある地下三階目掛けて走る。署内の兵士は警察らしからぬ装備
を身に纏っている。もはや警察官の制服を着た兵士そのものだ。
「何があった!?」
「分からん。上が爆破されたらしいぞ」
混乱する兵士を適当にあしらうワーカー。バイザーを下ろしたまま署内を移動する四人を訝しげに見る者もいたが、爆破騒ぎのおかげで呼び止められることもなく階段を降りれた。
『狙撃だ!ベイルが即死、二人取り逃がした。移動する』
「そんな…」
ウォードの一報にいきなり出鼻を挫かれた。こんなに反撃が早いとはここの兵士を侮っていたのかもしれない。
『爾落人は始末できていたか?』
ウォードが戦果を確認する。だがダイスは依然として敵爾落人を捕捉していた。
「いや、移動しているようだ。逃げた奴はいるか?」
『一人それらしいのがいる。ベージュの高官服、警帽をかぶった男、左頬に傷、自動拳銃のみの武装、左脚を引きずって移動中』
「多分そいつだ。お前は次点で待機しろ」
今は切り替えねばならない。ベイルの犠牲は想定外だが多少の陽動は効いているようだし、このまま作戦は続行だ。事前の偵察と、捕捉を頼りに保管場所へ到着するとそこには見張りが残っていた。やはりと言うべきか、少し手間だ。
「敵襲だ!守りを固めろ!」
ダイスを先頭に、見張りに接近する四人。
「止まれ!お前らはここの持ち場じゃないはずだ!」
「ふざけるな!加勢しろと命令を受けて来たんだぞ!」
見張りは確認を取ろうと左胸の無線機を操作する。その隙にハイダは両手を勢いよく突き出すと見張り全員を念力で突き飛ばす。武器を手放しながら全身を強打して気を失う見張り。
「早くしようぜ」
四人の前には鋼鉄の分厚い扉、巨大な金庫が立ちはだかる。いかにも重要な物を保管していそうな金庫。映画で見るような海賊船の舵に似た大きなハンドルが重い。これを回すだけでも一苦労しそうだ。しかしわざわざそうする必要もない。
「開けろ」
「……」
ハイダは扉の前に立ち、念じる。すると扉の表面が捻れていき、ぐるぐると水面が渦を巻いていくかのように穴が空いた。人が通るには十分な大きさだ。
「すぐに戻る」
中に罠がないのはウォードが透視済みだ。ダイスは金庫に入ると、無数の引き出しから捕捉を頼りに一つを開ける。そこに青いダイヤモンドの形をした鉱石ーーブルーストーンを見つけた。ダイスは掌サイズに収まるそれを握りしめる。すると異変に気づいた。
「スアレス、周りの動きはどうですか?」
通信を傍受していたスアレスにハイダが聞く。スアレスは機器に集中する。
「勘付かれた様子はありません。情報が錯綜し戦力もバラけているようです。問題は敵の爾落人ですが…」
「今のあなたからは恐れ、焦燥を感じます。落ち着いてください」
「落ち着ける状況ですか。出鼻を挫かれ、作戦を強行している。これはかなり危険ですよ」
「……」
「暗示はいりません。俺は正常だしあんたに何を刷り込まれるか分かったものじゃない」