みぎうで


ベースキャンプ。サマターから下りてきた情報により、再び動きがあった。2機の輸送ヘリが弾薬装填と離陸準備を始め、パイロットがチェックに入る。一方で仮眠していたデルタフォース指揮官の大尉は伝令に叩き起こされるとすぐさま大佐の下へ急行した。


「失礼します」
「急で悪いな。動きがあったぞ」
「ラシードですか?」
「そうだ。情報筋によるとティーチンの中央警察署に潜伏しているとのことだ。恐らくブルーストーンもそこにある」
「つまり我々の出番という訳ですね」


大尉は何が楽しいのか、口角を釣り上げて不敵に笑う。久しぶりに自分達の腕を振るえる。祖国に骨の髄まで尽くせると誓った彼の高揚は高まるばかりだ。


「しかしブリーフィングをしないまま君達を送り出すのは実に心苦しい。だが明日にはラシードが拠点を移すとのことだ。夜襲を仕掛けるなら今しかないというわけだ」
「なるほど」


大佐は大尉の肩を叩いた。それは期待の表れであり、それを理解している大尉もそれに応えようと姿勢を正す。


「作戦の詳しい内容は移動中に連絡する。大まかにはピンポイントで強襲し、離脱する電撃作戦になる。ラシードを殺したら顔を確認、毛髪と指を持ち帰れ」
「了解」
「件の警察署には腹心の兵士達と武器が潜伏しているらしい。装備の規模は不明だが対空兵器はないようだ」
「空の援護はありますか?」
「隠密作戦を謳う上、作戦地域から10分以内の所にコブラを待機させる。だがそれだけだ。レンジャーは昼間で消耗し、地上戦力は間に合わない」
「十分ですよ」
「…イーグルクローの二の舞は許されないぞ」
「奴の首と秘宝を持ち帰ってやりますよ。では」


大尉は敬礼し、滑走路に離陸待ちしている輸送ヘリに向かって走り出した。ヘリの前には既にデルタ隊員が集まっている。その全員がサンドカラーの野戦服に黒のタクティカル防弾ベスト、黒のヘルメットにナイトビジョンセンサーを装着した出で立ちで整列していた。


「総員武装チェック!現着は0400頃だ。奇襲には持ってこいの時間帯である!失敗はデルタの存続に関わりかねない!だが我々はやり遂げられる!行くぞ!」
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