みぎうで


『ゲート解放。衛生担当は2番ハンガーへ』


ラサットの米国陸軍ベースキャンプ。部隊が続々と帰還してくる頃には陽は既に落ちていた。疲労困憊の兵員達を無数のサーチライトが照らし、ようやく休めると安堵の表情になる。
先に到着したのは負傷者を乗せた輸送ヘリと護衛の小型ヘリ。続いて戦死者を乗せたハンヴィーとそれを護衛する攻撃ヘリ。しばらくして後続のハンヴィーと戦車が到着した。守衛が搭乗者の顔を確認しながらゲートを通過させていく。


大佐は司令室から様子を眺めていた。窓のブラインドを解放し、年相応の皺の寄った顔の眉間へさらに皺を寄せている。


「マクレガー中佐、帰還しました」
「報告を聞こう」


現場指揮官が入ってきた。だが結果はとっくに耳に入っていた。この場における報告とは、要するに損害報告のことだ。


「スペクターガンシップが撃墜。ブラックホーク2機撃墜。エイブラムス1輌が中破。ハンヴィー2輌が大破、1輌が中破、1輌が行方不明。KIA(戦死者)がパイロット含め23名、他負傷者は確認中です」
「戦果に見合うものではなかったか」
「…ありません。現地で拘束できたのは傭兵や民兵だけです。ラシード派兵士は先に脱出したか、逃げ果せたのでないかと」
「逃げ果せた…か」


そもそも兵士が最初からあの街にいたのか疑問に思えてきた。情報源を問い詰めてやりたい。結果的にこの国の間接的な脅威を排除しただけだ。建前的には及第点以上なのだが、本来の目的は一歩も前進できていない。これならわざわざ生身のレンジャーや兵員を危険に晒して地上制圧をさせた甲斐がない。損害に対して、あまりにも割に合わなかった。特にガンシップ。1機しか持ち込んでいない兵器の損害はやはり痛い。


「もういい、下がれ」
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