みぎうで
「これだな」
ウォードの透視通りの場所にGPSを見つけたスアレス。工具を使って素早く摘出した。手のひらサイズの装置を手にすると、こんなちっぽけな物に殺されかけたのかと溜め息をつく。
車体下から脱出したスアレスは指笛で完了の旨を知らせると、装置をダイスに見せびらかすように掲げてみせた。既に三人を射殺していたダイスは投げてそれを寄越せとジェスチャーで示し、スアレスがアンダースローで放り投げ、ダイスがキャッチした。
「マガジン交換!スアレス、ぶっ放せ!」
ハンヴィーの銃座に着くスアレス。女は付近に敵弾が掠める中、取り乱す様子もなく落ち着いている様子だ。戦場慣れしているらしい。スアレスは女を気にしつつもベイルがマガジンを装填している間に弾幕を張り、作り出す隙を利用してダイスは敵方のハンヴィーに接近した。双方交互に繰り出される銃撃。二人の銃撃に引きつけられる兵員は、ダイスに気づく様子はない。
「QRFはまだか?到着が遅れているぞ」
「応答ありません」
「到着まで持ちこたえろ!」
即応部隊が戦車と同士討ちになったとは知らず、時間稼ぎを続ける兵員。ダイスは援護の銃撃を見計らうと装置を敵方のハンヴィーの窓に投げ込んだ。それから車体下部の装置を銃撃で破壊すると、ヘルメットのライトを点滅させて二人に合図を送った。確認したスアレスは銃座から運転席まで移動し、ハンドルのクラクションを鳴らす。ウォードとワーカーに戻れという合図だ。
「あの二人、うまくやれたのか?」
「俺はエイブラムス を中破させるに賭ける」
合図から数十秒。一仕事を終えたワーカーとウォードが合流した。ワーカーは打ち合わせ通り、戦車を投影してトンネルに進入させた。
「マズいぞ!」
「退け!ここを放棄する!」
生き残った兵員はハンヴィーに乗り込み、トンネルの出口までバックで走り出した。途中で機材や障害物に擦りながら、陽の光を目指す。
「おぉ、無様に逃げていきやがる」
「ベイル、早く乗れ」
ダイス以外の四人はハンヴィーに乗り、身を潜めていたダイスの近くまで走らせた。運転していたスアレスはダイスに運転席を明け渡し、後部座席に乗り直す。
「スアレス、よくやったな。手早い処理だった」
「光栄です」
「ウォード、外の様子はどうだ」
「お前の読み通り出口でコブラが待ち伏せている」
「後は勝手にやってくれるわけか」
兵員が乗ったハンヴィーがトンネルから出てきた。方向転換して全速力で前進するハンヴィー。待ち伏せていた攻撃ヘリはGPSにより四号車と判断し、ハンヴィーの背後につく。
『ロックした。射撃許可』
『了解。撃つ』
放たれた対戦車ミサイルがハンヴィーに着弾した。車体に弾頭を突き刺すと信管に起爆し、その役目を果たす。突如として味方から攻撃を受けたハンヴィーは爆破された。
『破壊を視認した。繰り返す、目標を破壊。これより地上部隊の援護に戻る』
『了解』
攻撃ヘリは激戦区へと引き返していく。トンネルの出口付近まで移動していたダイス達は一部始終を見届けると、再び出発した。
「お前もえげつないことを考えつくぜ」
「これは合理的な判断だ。連中に直接手を下させて死を偽装した。それだけだ」