決着の日~2028~
傭兵達は弾丸の雨あられの前に立ち往生を余儀なくされていた。屈折階段をトラップなしで上がり続けたものの、今は前進を許されない。牽制の銃撃をしようものなら集中砲火を受ける。
「いい加減弾切れを待つ時間はないぞ!」
元々屋内戦闘において下から上へ攻めるのは不利であるとされ、上を取れば大分有利である。この状況を打破するにはこちらも有利な武器を使うしかない。
「おい、誰かグレネード出せ!」
「俺が持ってる!だが最後の一つだ」
「ぶっ飛ばせ!」
機関銃手は次弾装填のタイミングを見計らっていた。正直これ以上敵と接近したくはなく、装填の間も惜しい。機関銃手は装填済みの別の機関銃を持ち替えて射撃を続け、間隔を空けない。今も手摺りの陰から少しだけ見えた敵の手に反応して撃ってやった。
「ん?」
その際こちらに放り投げれらた棒のような物。先端の重りでブーメランのようにゆるく回転しながら近くに落下した手榴弾。
「クソ!」
機関銃手は武器を放棄して踊り場の仕切り越しに退避した。何とか爆破から逃れ鼓膜を犠牲にして助かったものの、肝心の機関銃は破壊されてしまっただろう。
「しまっ…」
機関銃手が安堵したのも束の間、突破を許された傭兵に殺された。ワーカー達はさらに階段を上がる。だがすぐにまた別の機関銃手に行く手を阻まれた。
「クソ!」
「なに手こずってんだ?」
最上階まではもうすぐだ。恐らく階段内に配置された機関銃手はこれで最後だろう。先頭に追いついたワーカーはそれに対しては余裕綽々だった。しかし別問題が。
「おい、スタイルズを見た奴はいねぇな?」
この段階でスタイルズの所在が気になり始めた。てっきり先行したもの思っていたがどうやら突破していないらしい。それに道中に本人の死体はない。もしヘリポート到達前に別場所で死んでいるとすると標的の逃亡を許す羽目になる。これだけは絶対に避けねばならない今は中々に苛立つ。タイムアタックは得意ではない。
「おいおいどうするんだ?」
「おいワーカー!」
皆からアテにされるこの切り札感は心地良かった。人間は好きではないができない事をすぐに頼ってくる精神的な安っぽさだけは好きだ。
「切り開くぜ!用意しろ!」
ワーカーは軍犬を投影すると機関銃手めがけて突進させた。強靭な脚力で肉薄してくる軍犬は注意を逸らすには効果的だ。
「なんだと!?」
機関銃手は噛みつかれまいと銃口を向けるが当たるはずもない。ワーカーは早撃ちで機関銃手を仕留めて見せると歓声が上がった。