決着の日~2028~


スタイルズはチームを率いて警備を優先的に殺害していた。標的の捜索は二の次で、自慢のチームがどれだけ敵兵を仕留められるを楽しんでいたのだ。戦果は上々で狙撃の援護がなくてもかなりの数の死体を作っていった。その最中報されたジェフの死亡や無人攻撃機の存在。スタイルズは仲間に警戒を任せると上空を飛んでいるであろう無人攻撃機を探していた。


「この国は先端兵器は所有していても出し惜しみすると聞いていたがな」
「…見つけたぞ」


無人攻撃機はスタイルズ達へ突っ込もうと猛スピードで接近していたのが運の尽き。目視で捉えられるほど近かったためか狙いやすい。スタイルズは無人攻撃機に向けて右手をかざすと内部に強力なサージ電流が駆け巡った。それだけで電子回路はショート、エンジンが停止して吊られていた糸が切れたかのように落下していく。幸いにも近くの公園に墜落、そこのシンボルであるオブジェに突っ込んで大破した。


「やったな」


スタイルズは磁放の能力者。指向性の電磁パルスを遠距離まで飛ばして電子機器を破壊する力。スマートフォンから艦艇まで様々な軍事兵器を無力化できる能力は非殺傷でありながらも強力だ。


「あれ?…ああぁ!」
「どうした」
「リーパーが墜落しました」
「原因は?」
「分かりません。いきなり回線が切れちゃって…」
「すぐに代わりのを呼び出せ」


一樹はすぐに近場の在日基地から呼び出すが到着までには少し時間がかかる見込み。その前に残った一機で爾落人だけでも仕留めたいところだ。


「あれ!?」


ワーカーへ攻撃態勢に入ったもう一機も操縦不能に陥った。一樹はパニックになりながらコントロールを保とうとするが無駄なようだ。推進力を失った機体はしばらく滑空すると幹線道路に墜落し、走行中のトラックに接触。こちらは未使用の弾薬に引火して大爆発を起こした。


「これは敵の攻撃だ」
「でもそんな兆候なんてなかったですよ!」
「何かタネがあるはずだ」
「とにかくありったけリーパーを掻っ払います。こうなりゃ地上へ絨毯爆撃を…」


建物への被害はともかく、意気込む一樹をあざ笑うかのようにタフブックも電源が落ちた。スタイルズがヘリポートへ向けて能力を使ったからだ。


「そんな!」
「……」


何かに気づいた八重樫が自分の通信端末を使うがこれも使用不能だ。八重樫は験司と蛍、綾を呼び出すと状況を説明した。


「確かに私の端末も使えませんね」
「私達と同じ現象がなんで今になって…」


験司は黙って少し考えるとすぐに結論を出した。


「…恐らくEMP(電磁パルス)だ。これなら皆の通信端末が使用不能になったのも説明がつく」
「可能性は高いな。EMP兵器が実用化されていない以上は敵の能力と考えるのが自然だ」
「マズいですよね。オレまだスマホの支払いが終わってない上にオスプレイ(ティルトローター機)が来てもEMPをくらえば…」
「墜落する。だが岸田に危険を知らせるには通信手段がない」
「そんな…」
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