決着の日~2028~
「今汐見さんから連絡きました。もう少しで到着するようですよ」
「石川もすぐに来るようだ」
一方の翔子達も南極行き直前。しかし再び験司に着信が入ると血相が変わった。
「マズい事になった。防衛省が武装勢力に襲撃を受けている」
「警備が守りきれそうな規模なのか?」
「分からねぇ」
「どうするんだい?」
翔子が問うた。だが内心答えは予想がついている。
「悪いがオレは南極行きをパスする。こんな事になっちまったらな。置いてきた部下達も心配だ」
「俺達も残る。浦園との約束を守らなければならない」
「そうか…そうなら仕方ないね。私が転移で送ろう」
「ありがとう。助かるぜ」
験司は武器を揃えた。今の姿のまま防衛省へ行くつもりのようだ。八重樫も凌と綾を呼び寄せると一箇所に集まった。皆臨戦態勢。
「仲間の現在地は分かるのか?」
「分からない。ジャミングではなさそうだが通信が途切れた」
「それなら俺とは別行動で探すぞ」
「土地勘のあるオレと一緒に行った方がいいんじゃねぇか?」
「いや、捕捉は人間個人の識別はできない。俺は俯瞰できる場所から戦況を把握して指示を出す。二階堂と宮代は俺と来い。東條は浦園と行け」
「はい!」
「はい」
「え、オレも行くんすか。戦闘の真っ只中に?」
瀬上の陰に隠れる一樹だが、瀬上は小突いて凌の目の前に押し出した。凌は一樹の腕を引っ張るが重心を逆に寄せて抵抗する一樹。駄々をこねる子供の光景に痺れを切らした世莉が一樹を八重樫の目の前に転移させた。
「気をつけてくださいね。また宮代さんのお話しを聞きたいですし」
桐哉が本人自前のタフブックを一樹に手渡したが、純粋な心配をよそに一樹にとって気に障ったようだ。
「いや変なフラグ立てるのやめて…」
一樹は渋々タフブックを受け取ると、凌は思い出したかのように瀬上へピシッと右手の人差し指を突き出した。真犯人を追い詰める如く、そのまま光弾を撃ち出す勢いに瀬上は少し身を引いた。
「なんだよ…」
「瀬上浩介。首を洗って待ってろ。事が終われば俺が引導を渡す」
「やれるものならやってみな。ババを引いたお前が生還できるなら」
瀬上なりの激励の言葉だったが、レリックという最凶のババを引くのは自分であるとこの時はまだ知らない。凌も負けじと皮肉を返した。
「南極で凍えながら野垂れ死ぬならその罪許されないこともない」
「はいはい、居残り組の準備はいいかい?」
「頼む」
「えぇ…」
八重樫と験司が端末のマップで翔子に場所を指定すると、転移によって五人は消えた。大所帯だった人数は半分に減り、心なしか寂しさを覚えるがそれでも戦力的に充実しているのは流石だ。それから石川美奈と汐見秀が事務所に到着したのは数十秒後であった。