‐GHOST‐ 「夢想」者たちの戦い







『ただいま、姉ちゃん。』
『おかえり、ダイコー・・・あら?』
「お~ッス!」
「『おじゃましま~す♪』」
『姐(あね)さん、ちょっと邪魔するで?』
『オカ研の皆さんね?はい、お邪魔して頂戴。』




その夜、タダシ達を連れてダイコーが自宅のマンションの一室に帰宅。
ダイコーに似た髪色と細目、太めの眉とそばかすが一目で彼との血縁を感じさせつつ、淑やかさと優しさもまた一見で伝わって来る、ロングヘアの女性・・・ダイコーの姉・ミーナが出迎え、面々は中に入る。
それからは夜になるまでの適当な時間潰しの為、ダイコーの部屋でLUの部室では出来なかった部活動の代わりとして様々な「不可思議(オカルト)」な事について話していたが、一時間程してミーナが入れた紅茶と菓子によるティータイムの誘いを受け、一同は一時的に居間に来ていた。




『そう言えば、新聞に謎の殺人がKAIJUの仕業じゃないかって書いてあったけど、KAIJUの噂が出始めたのっていつ頃からだったかしら?』
『3年前、僕達がLUに入学する少し前くらいなんだな。』
「そう言えば、わたし達が出会ったのもその噂が立った少し後だったよね~?」
『初めて会うた頃から、タダシはふざけた野郎じゃったけのう?』
「てめェも一緒だろうが、デコ!」
『それであたしはその「KAIJU」の噂を聞いて、一年後くらいにここに来たんだけどね~。』
『そうなの・・・じゃあ、オカ研結成とKAIJUの噂は同じくらいの時期の出来事だったのね?』
『そう言う事☆う~ん、それにしてもミーナちゃんの紅茶ってほんとにウマいよね♪この紅茶を飲む為に通っても良いくらい!』
「そうですよね~♪紅茶のお店をすれば、繁盛すると思うんだけどな~?」
『ありがとう♪昔からお金が無くっても、紅茶を入れるのは欠かした事は無かったし、紅茶を飲めば心が満たされて空腹も自然と収まったわ。』
『僕も姉ちゃんの紅茶があったから、ここまで生きて来れたんだな。』
『ダイコーも姐さんも、両親が早死にしたのに更に貧乏で苦労したらしいからのう・・・』
「日本なら山行って、その辺の草食ってれば良いンだけどなァ?」
「わたし日本人だけど、その辺の草は流石に食べた事ないよ~?」
『うふふ。故郷のソビエトならともかく、ここロンドンには気軽に行ける山も食べられそうな草も無いわね。だからこそ、ダイコーがLUに推薦で入れるくらい勉強してくれて、私を支えてくれているのが本当に嬉しいの。』
『お金は無くても、知識はいくらでも得られるんだな。僕もこうして姉孝行が出来て、嬉しいんだな・・・』








夜も深まり、タダシ達が帰る頃合い・・・になる前に、ダイコーはミーナを自室に呼び出し、一つ頼み事をした。




『・・・姉ちゃん、ちょっと目をちゃんと開けて欲しいんだな。』
『えっ?別にいいわよ?』




ミーナもまた弟の頼みを聞き、目を開けた姿が淑やかな自分の雰囲気に合わない事からいつしか細めるようになった目を開き、ミーナの蒼く透き通る凛とした瞳が露(あらわ)になる。
それと同時に、ダイコーもまた姉と似て非なるコンプレックスーー地味に生きていたいのに綺麗過ぎて必要以上に注目を浴びてしまうーーにより自ら封じるかのように細めている両眼を、蒼い瞳を開き・・・




『・・・ガンQ、出番なんだな。
バオーン、バオーン・・・あなたはだんだん、眠くなる・・・』




瞳孔をまるで別人の、何処かあざ笑うかのような気配がする紫の眼に変え、ミーナの目を凝視する。




『えっ?バオー・・・んっ・・・・・・
Zzz・・・』




ダイコーの謎の呪文じみた言葉と、紫の眼が発する波動を受けたミーナは即座に深い眠りに付き、ミーナが熟睡した事を確認したタダシ達もまた部屋に入って来る。




『・・・姐さん、寝たかいな?』
『うん。しっかり眠ったんだな。』
『ダイコー君のKAIJUの力ってスゴいよね~☆あたしも寝れない夜は頼っちゃおっかな?』
「いつまでも夢想持ちが寝るのを待っていられないですからね~。」
「ンで、ねェちゃんの夢想世界にはどんなヤツがいたンだよ?」
『予想通りカマキリのKAIJUだけど、姉ちゃんの心配性の影響なのか十体以上もいるんだな・・・』
『・・・うっ、こ、こないで・・・!』
『なら、やっぱ今回は全員行きじゃのう?タダシ、覚悟しとけや?』
「あッたり前だァ!てめェこそ負けて土下座する準備でもしときやがれよォ!」
「どうでもいいから、早く入るよ~?」
『待った待った!その前に「戦闘服」にお着替えしないとだよ!』
『いやいや、それダイコーの家でやる必要あるんじゃけ?』
「ンな事より早く入らねェッすか?」
「でもわたし、あのお着替えは好きかな~。」
『それにオカ研の夜の活動をするって感じがして、気が引き締まるんだな。だからパレッタ先生、お願いするんだな。』
「ンだよ、それはよォ!」
『諦めい、タダシ・・・ワテも服自体は、嫌いちゃうからのう?』
『だよねだよね~♪じゃあ・・・レッツ!お着替えタ~イム☆』




パレッタは手持ちの杖の先を外して毛筆を出し、タダシ達の足元を白く円で描き、タダシは灰・アキは緑・シュガは赤・ダイコーは水色の点を描き加える。
すると円から出た白いカーテンがタダシ達を包み、カーテンの中がそれぞれの点の色に発光し、数秒後にカーテンが降りる。
そこには装いを変えたタダシ達がおり、タダシはシンプルな灰色の半袖半ズボンの甚平服、アキは白いマフラーを首から下げた緑色の忍者装束(風)、シュガは赤と黒のチャイナ服+ロングズボン、ダイコーは水色基調のモダンスタイルの衣装に変わっていた。




「ほンと、これ意味あンのかよ・・・」
『でもこの衣装はパレッタ先生が考えてくれた、僕ら専用の「戦闘服」なんだな。』
『「戦闘服」って響きはええんじゃけどのう?』
「ほんとパレッタ先生、センスありまくりだよね~。ニンニン♪」
『ふふん!先生をもっと褒めるがよいぞ♪』
「まァ、なンでもいい・・・ッしゃァ!行くぞお前らァ!」
『・・・姉ちゃん、今助けるんだな・・・!』




タダシ達がミーナの頭に手を置くや、頭を下げて一瞬で意識を失う。
今、彼らもまた眠りに付き・・・自らの夢の中で使役するKAIJUと一心同体になり、ミーナの夢の中の世界・・・「夢想世界」へと突入して行った。











ミーナの夢想世界では、ティーポットやお茶菓子、アフタヌーンティーセットが並ぶ華麗なるお茶会が開かれていた・・・が、その机上こそが戦場であった。




キィキイイイッ・・・




香しい匂いと湯気を漂わせる、紅茶が入ったティーグラスを挟み、二体のKAIJUが睨み合っていた。
左サイドには体色が薄茶色に変わり、右の鎌が鋭い槍の様な形状になったカマキラスが、




ガァバァハハハハッ・・・




右サイドにはガバラ・・・タダシがいた。
カマキラスは右手の槍を振り上げながらガバラへ飛び掛かるが、昨日の夢想世界でも見た流れにガバラはやや呆れながらカマキラスをギリギリまで引き付けてからジャンプして攻撃を回避し、そのままカマキラスの後頭部に回し蹴りをお見舞いする。




「ほんと、いつもワンパターンだよなァ!欠伸が出るンだよ、カマキリ野郎!」




ガバラは着地するやカマキラスの胴体を掴み、勢い良くティーグラスへと放り投げる。
紅茶の熱湯に投げ込まれ、全身を熱されながら紅茶を撒き散らして悶え苦しむカマキラスの姿は、タダシが故郷で嫌程見た誤って入った水溜まりで溺れる羽虫そのものだ。




「そこでくたばッてろ、カマキリ野郎がよォ!さァて、次だ次!」






ゲェハアアアアウウン・・・




そのすぐ隣、上段に苺のショートケーキ・中段にスコーン・下段にサンドウィッチが置かれた3段ティースタンドでは、登頂部を除いて全身が黒髪で覆われた、若禿げを想起させる毛むくじゃらの前屈姿勢のKAIJU・ゲハラが、下段のサンドウィッチの上で別のカマキラスの胴体を両手から伸ばした毛で捕らえていた。




『よりによってティータイム会場が舞台とは、衛生面で最悪じゃのう!』




ゲハラから聞こえるのは、ゲハラを使役するシュガの声だ。
カマキラスは両手の鎌でゲハラの毛を切断し、飛び上がって中段に移動。スコーンを左の鎌で切り刻み、右の槍で下のゲハラへ弾き飛ばす。




『ざっけんな、コラ!食べもんで攻撃すなや!ぶつけ合いならこっちも負けんぞ、オラ!』




カマキラスの投石ならぬ投スコーンを、さながら中国雑技団の演舞のようにアクロバティックに避けながらゲハラも毛を固めて毛玉を生成し、舞踊をしながらカマキラスがいる中段へ投げ入れる。
運動会の玉入れ合戦じみた光景だが、ゲハラの毛玉は見た目からは想像出来ない程に重量がある鉄球の如き代物であり、一つ目と二つ目はカマキラスの足元に落ちて皿にヒビを入れ、三つ目の毛玉がカマキラスの足元を割り、カマキラスは不意を付かれる形で落下した。




『観念せえ!ゲハラから逃げられるなんざ、思うなやあああああ!』




ゲハラは両手の毛を再度伸ばしてカマキラスの両手を捉え、毛を鎌で切られないようにしながらそのまま派手なジャイアントスイングでカマキラスをティースタンドの上段へ投げる。
抵抗出来ないままカマキラスは上段の皿に叩き付けられ、皿を割って更に勢いのままショートケーキに飛び込み、全身をホイップクリームに浸からせながら動かなくなった。




『どわっ!ちとやり過ぎたかのう?まぁええ、次じゃ次!』 






ギャキュキュキュウ・・・





タダシと似た手段でカマキラスを退治した事に気付かないシュガが、次の目標へと向かった机上・・・から少し外れた椅子の上では、青い瞳孔の巨大な一つ目に手足が付いた身体・・・のような形態をした、紫の肉塊が付いた姿・・・としか形容出来ない、特異で奇怪ながら一目で全体像を覚えられる不条理なフォルムをしたKAIJU・ガンQがカマキラスへと、一つ目から太い紫の光線を放つ。
しかし、カマキラスは光線を飛翔して回避。両手の鎌でガンQへ切り掛かる。




『・・・かかった。』




・・・が、それはガンQと一つになっているダイコーの予想通りであった。
ガンQは光線発射を止め、目を紫色に変えて目と鼻の先に迫るカマキラスに怪しい光を浴びせる。
するとカマキラスは頭を回しながら混乱し、その場で静止してしまった。
ダイコーが先程ミーナにしたように、これまで「夢想世界」に入りたい相手に掛けて来た催眠術を、カマキラス相手にも掛けたのだ。




『姉ちゃんは今、夢の中で楽しいティータイムをしているんだな。だからこれ以上、好き勝手させないんだな・・・!』




ガンQは静かに両手のような部位でカマキラスを持ち上げ、至近距離から放った瞳からの光線で、カマキラスを消し去るのだった。






ングウゥゥェェェェッ・・・




「ギロン、いっけ~!手裏剣はっしゃ~!」




机上に戻り、幾つものガレットが置かれた大きな皿では、正しく出刃包丁そのものに気だるげな半目と鋭い牙が並ぶ口が付いた頭が存在感を放つ、刃元以外が緑色の四足のKAIJU・ギロンが一体化した宿主・アキの掛け声を合図に、ガレットの上に陣取るカマキラスへ向けて頭部両脇の穴に隠した手裏剣を発射。
二つの手裏剣はカマキラスの鎌によって捌かれるも、明後日の方向へ行った手裏剣はギロンの意思の元に再びカマキラスへ向かって行き、カマキラスの両目に突き刺さる。




「えんが~、ちょ!」




両目を潰され、カマキラスは激痛のあまり苦しみながらも空中へ逃れようとするが、ギロンは鮮やかな背面飛びでカマキラスへと一気に距離を詰め、銀に光る刃でカマキラスを空中で斬首。
カマキラスの頭部と胴体は力無くガレットの脇に落下し、ギロンが皿の脇に着地すると同時に、双方共にぴくりとも動かなくなった。




「お茶会に、お邪魔虫なんていらないよ~?」




・・・そう、さながら「不思議の国のアリス」のお茶会が具現化されたかのようなこの夢想世界(ワンダーランド)に、招待状を持たない招かねざる客・・・この夢、即ち世界そのものを壊さんとするカマキラスだけでは無く、この夢を・・・誰かを守らんとするタダシ達がやって来たのだ。






「これでェ、二匹目だァ!!」




キィィィイッ・・・!




紅茶の湯気が注ぎ口から立つティーポットを背に、ガバラは二体目のカマキラスに電撃入りのボディブローを浴びせ、カマキラスを殴り飛ばす。
だが、カマキラスはそのままティーポットに直撃。ティーポットには瞬く間にヒビが入り、中に入った紅茶がヒビから外に漏れ出し、紅い洪水と化して机上中に流れ出る。




「げッ、やッちまッた・・・!」
「あっ、こっち来る~!」
『コラ、タダシ!!何やっとんじゃ、ワレ!!』




紅茶の波は他のカマキラス達を飲み込んで行くが、同時に不幸にも付近で戦っていたゲハラ・ギロンにも被害が及んでしまい、各々は一目散に逃げ去る。




『みんな、ガンQの中に入るんだな!』
『おお、ダイコー!』
「その手が?目が?あった~!」
「ンじゃあ、頼んだぜェ!」




と、そこへ目玉だけになって宙に浮くガンQが現れ、ダイコーの提案に乗ったガバラ達はガンQへとジャンプし、ガンQはガバラ達を目玉の中に飲み込む。
ガバラ達はガンQの目玉から繋がる、無数の目玉が覗く不気味な赤紫色の空間の中で、文字通り紅茶に飲まれて机上から奈落の底へと落ちて行くカマキラス達を見ていた。




『・・・なぁオイ。これにてKAIJU退治完了、って事にしてええんかいな?』
『うーん、こんな状況は初めてだけど・・・これはティータイム会場と言う夢想世界の外に追い出された扱いだから、少なくともあのKAIJU達は夢想世界からいなくなった・・・んだな?』
「それでいいんじゃない?またKAIJUが現れたら退治すればいいし、こうなったのは全部タダシのせいなのは間違いないしね~?」
「別にまとめて退治したンだから、いいだろ!ちなみにオレはカマキリ野郎を二匹退治したゼ?」
『なんや、ワテも二匹ぶっ飛ばしたぞ?』
「わたしも二匹始末してるよ~?」
『僕も二体倒した・・・これは、引き分けなんだな。』
「引き分けェ!?なンだよ、この結果!!」
『お前がティーポット壊したから、こうなったんじゃろがい!』
「有耶無耶だね~?わたしは勝っても負けてもどうでもいいけど、こうなったのもタダシの自業自得だよね~?」
「ハイハイ、オレが悪うござんしたァ!!」
『まぁまぁ、これでとりあえず姉ちゃんが悪夢に・・・KAIJUに襲われる事は無くなったんだな。改めてみんな、ありがとうなんだな・・・!』




ガンQはガバラ達を連れて夢想世界から去って行き、後には滅茶苦茶になりながらも何故か明るい雰囲気を感じさせる、おかしなお茶会会場が残ったのだった。







『・・・んっ、ううん・・・』
『姉ちゃん、おはよう。』




暫し後、ミーナは先程まで悪夢に魘(うな)されていたとは思えない位に健やかな様子で目を覚ました。
既にタダシ達は帰っており、部屋には戦闘服から普段着に戻ったダイコーしかいない。




『おはよう、ダイコー・・・あれ?オカ研の皆さんは?』
『もう帰ったんだな。姉ちゃん、最近仕事が忙しくて疲れてたから、ここでうたた寝してたんだな。』
『そうなの?それは失礼な事をしちゃったわ・・・またお詫びしないと。』
『気にしなくていいんだな。またここで紅茶を出してくれれば大丈夫なんだな。』
『そうね。またお菓子と一緒にティータイムを・・・そう言えば、さっきもとってもおかしな夢を見たわ。』
『とってもおかしな夢?』
『昔、パパとママとあなたと一緒に初めて自分でアフタヌーンティーをした時の夢だったんだけど、カマキリの兵隊が邪魔して来たかと思ったら・・・え~っと、カエル?包丁?もじゃもじゃ?の頭の人がカマキリをやっつけてくれて・・・あと、空から一つ目が付いた太陽が温かく見守ってくれていたわ。あなたのキレイな瞳によく似た目の・・・結局ティータイムはめちゃくちゃになったけど、初めての時も私がドジをしてめちゃくちゃにしちゃって、でもパパもママもダイコーも笑って許してくれて。その時の事を思い出せたから・・・おかしな感じだけど、とてもいい夢だったわ。』
『そうなんだ。悪い夢じゃなかったのなら、僕はいいんだな。』


ーー・・・一つ目、か。
僕が夢想世界で初めてガンQに出会った時も、「君」はそうやって僕をあざ笑って来た。
僕は静かに暮らしたいのに、良い事だけじゃなくて良くない事も引き寄せて来る、姉さんもあまり好きじゃないから細めるようにした、きっと「君」が生まれた原因にもなった、コンプレックスの塊みたいなこの目を、嫌って程に見せて来たんだな・・・
でもやっぱり、僕は両親がくれたこの目を嫌いにはなれなかった。だから僕は「君」と、自分の嫌な部分もちゃんと見つめて向き合おう、そう思えたんだな。
ガンQ、「君」と仲良くなれたのは・・・この目のお陰なんだな・・・


『・・・ダイコー?』
『あっ、ごめん。ちょっと明日の大学の課題について、考え事をしてたんだな。』
『そう?大学も来年には卒業なのね・・・あなたがアフタヌーンティーの本場のイギリスに私を連れて行ってあげたい、その一心でひたすら勉強して本当に連れて行ってくれて、オカ研の皆さんって友達も出来たのに・・・』
『そう言う姉ちゃんだって、昼夜を問わずに仕事をし続けてお金を稼いで、僕をLUに入れてくれたんだな。それに僕らオカ研はたとえ卒業して場所は離れてしまっても、心はきっと離れない。そう信じてるんだな。』
『ええ。パパとママと同じね。そこまで信じられる出会いがあったのは、大学に入って良かった事・・・と思いたい、けど・・・』
『姉ちゃん?』
『・・・正直に言うわ。オカ研の皆さんにはごめんだけど、私はオカ研の「調べ物」でダイコーがいない1人の夜は、不安で仕方なかった・・・1人ぼっちな事よりも、今も正体の分からない「切り裂きジャック」や「KAIJU」に、あなたが襲われないかって・・・怖くて仕方なかった。』
『姉ちゃん・・・つまり僕が姉ちゃんの事をずっと不安にさせて、悪夢の切欠を作ってたんだな・・・本当にごめんなんだな・・・!』
『ううん。これは昔から心配性過ぎるって言われてたのに、治っていない私が駄目なの。少しでも不安を取り除く為にも、これからはなるべく不安な事を隠さずに、正直に話すわ。だから貴方も・・・本当の事を話して?
・・・オカ研の皆さんと、本当は夜に何をしているの?寝言で言ってた「ガンキュー」って、あなたの夢の中にいて・・・さっきの私の夢にもいたあの目・・・「KAIJU」なの?』
『・・・』
『ダイコー。私とあなたは、昔から寄り添って生きて来た。だから、全部話して?私は、自慢の弟を信じるから。』
『姉ちゃん・・・うん。僕にとっても、ミーナ姉ちゃんは自慢の姉なんだな。だから・・・』


ーー・・・みんな、姉ちゃんに余計な心配をさせない為に何も言わずに帰ってくれたのに・・・ごめんなんだな。
でも、やっぱり・・・僕は姉ちゃんに、嘘は付けないんだな・・・!


『・・・姉ちゃん、実は・・・』




ダイコーは話した。
オカ研の本当の使命を、夢想世界とKAIJUの事を、先程もオカ研メンバーと共に姉の夢の中で戦っていた事を。
ミーナはダイコーが話す事全てを疑う事無く聞き、先程見た夢・・・夢想世界のアフタヌーンティーパーティーと照らし合わせて全てを理解し・・・




『・・・分かった。私、やっぱりあなたが危険な事をしているのに変わりは無いから、正直不安は消えないけど・・・KAIJUからこの街を、人々を守れるのがあなた達オカ研しかいないのなら・・・私はここで、あなたの帰りを待ってるわ。
ただ、約束して。必ずここに・・・私の所に帰って来るって。』
『うん。僕は絶対に帰って来るんだな。ちゃんと大学を卒業して、沢山仕事をしてお金を稼いで、もっともっと姉孝行をしたいんだな・・・あと、いつも僕を信じてくれてありがとう。ミーナ姉ちゃん。』
『私もよ、ダイコー。私にとってあなたは自慢の弟で、あなたにとって私は自慢の姉・・・いつまでも、持ちつ持たれつの姉弟でいましょうね。』
『・・・だな!』




蒼い瞳をしっかりと開きながら、ダイコーとミーナはお互いを見つめ合い・・・姉弟は更に固い絆で結ばれたのだった。
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