本編


在日米軍
某基地


『こちら第0418輸送中隊所属、コールサイン[ガンキャリー]着陸許可求む』



白昼、1機の輸送機が太平洋を横断して来日した。機体には星条旗が大袈裟にペイントされており、低空飛行するそれは近隣住民の視線の的だ。機体から滲み出ている強い愛国心を、日本人には理解できないだろう。



『着陸許可。ガンキャリーは1番滑走路へ。後が押している、手早く頼む』
『了解。尽力する』



ランディングギアを展開した輸送機はスムーズに接地して減速、滑走路脇に停止した。
基地の兵員が重機とジープで駆けつけた時、輸送機の後部ハッチが開き、乗員が降りてきた。



「よう兄弟。積み荷はなんだ?」



『DANGER』とマーキングされたコンテナを、基地所属である記録係の米兵はボールペンで指差しながら聞いた。ハッチから出てきた恰幅の良く豪快そうな乗員は答える。



「1個中隊分の歩兵装備一式と野営用の発電機複数だ」



おかしい。演習の予定はないはずだが、自衛隊と合同演習でもあるのか。
米兵は一瞬疑問に思ったが気にせず搬入させる事にした。そんな事を一々気にしていたら後の便の着陸が遅れる。そうなったら今度は武器の管理職に飛ばされる。



「よし、運べ。第14格納庫だ」



友軍相手にわざわざ木箱やコンテナの中身まで開けて調べる米兵は少ない。それはこの米兵に当てはまった。
コンテナが格納庫に搬入される様子を見守る乗員は、僅かだが意味深な笑みを浮かべる。



基地の格納庫に搬入されたコンテナはその夜、トレーラーに載せられて何処へ消えた。搬入記録や痕跡も抹消された。
積み荷の行方は、誰も知らない。
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