本編
「―――以上で終わりました」
「結局手伝わせちゃってごめんね」
「い、いえ…」
警視庁に戻った凌は、先に戻っていた綾に結果を報告した。
がしかし、いつもは相手の目を見て話す凌だが綾と目を合わせられなかった。綾が大人っぽい、落ち着いた雰囲気だからこそ、自分の全てを見透かされていそうで恥ずかしかった。
「お礼に今夜はご飯を奢るから」
「いただきます…」
当初は凌と一樹にこの仕事は振られなかったが、あまりの証拠品の多さに、凌は綾を手伝おうと進み出たのだ。最初は男性だからと断っていた綾だが、証拠品の多さと凌の熱意に折れたのだった。
「しかし下着泥棒の証拠品返還なんて、捜査2課の女性捜査員に任せればいいんじゃないスか?」
「確かにそうだけど他の捜査員は別件で動員されてるから、我々に白羽のの矢が立ったのだよ」
「仕方ないわよ。「G」ハンターの一件から管轄になる事件がないんだから」
倉島と綾に矢継ぎ早に否定された一樹は、押され気味だ。
「…要するにオレ達が暇だからって事ですよね?」
「ハッキリ言わないの」
綾は呆れたように一樹を咎める。一樹は矛先を凌に変えた。
「お前としては今回の証拠品返還、本当は変な下心があっただろ?」
「そんなものはない」
凌はハッキリと否定したが、いざ言葉にされると恥ずかしかった。手伝いたい一心で綾に進言していた凌だが、今になって考えると捉え方によってはそういう解釈になると後になって分かったのだった。