本編
戦闘はGROWが押されていた。
退路を塞ぐ形で展開する八重樫隊、潜入時から徐々に戦力を削り奇襲した菅波隊、時間差で突入した堤隊により追い詰められいる。
だがそれはザルロフの想定内だった。
脱出の道中、ザルロフは地下道を突破してきた特殊部隊と遭遇した。ほぼ丸腰に近かったザルロフは兵士の死体からSMGを拾ってマガジンを抜き取ると残弾を確認、展開させている兵士から通信で状況を再確認する。
「…そうか」
現状、廃工場一帯は派手な銃撃戦が展開されており、どこから逃げようとも必ず警察と出くわす。
この時に限ってベイオネットが不在なのは痛い。単独行動を許したのは間違いだったのかもしれない。護衛の兵士10人と彼女とでは、戦力が違いすぎる。
「退路の確保は失敗か」
「敵に塞がれています!突破するしか…」
護衛の兵士もかなり焦っている。ああは言っているが現実突破は不可能だろう。
もたついている内に特殊部隊の方から肉薄してくる。
さらに、ザルロフの目の前にいるのは手強い部隊だ。直感で分かる。何よりリーダー格の男の存在が異質だ。仕草に一切の無駄がないし、纏っている空気が違う。幾多の修羅場を潜り抜けて培った経験から来ているのだろう。
今回の戦闘は詰んだ。それも確信した。だが真の目的のためにも、ここで捕まるわけにはいかない。
ザルロフは武器を捨てて両手を上げると無抵抗の意思を示す。投降のジェスチャーは万国共通のようだ。
それを見た兵士も続き、この場の兵士は全員が丸腰になった。
全員の投降を確認した特殊部隊はツーマンセルで散開。兵士の膝裏を蹴って膝まずかせると、後ろ手に結束バンドをつけて拘束していく。
ザルロフ拘束にはリーダー格が向かう。
兵士と同じようにザルロフを拘束するリーダー格は、見る目が違う。ザルロフに向ける警戒と侮蔑、その奥に隠れている潜在的な恐れ。
そして気付いた。リーダー格も人間ではないと。同時に、ザルロフには手錠がかけられた。