本編


地下道を駆け抜ける八重樫隊。セントリーガン以降、深刻なトラップもなく順調に索敵、侵攻していく。



「……」



八重樫は今現在も捕捉している能力者が気掛かりだった。遭遇した場合、敵戦力として立ちはだかるのか、人質のような第三者の立場なのか、気になるところだ。
どちらにせよ能力者の存在は八重樫=SATにとってプラスではない。



「……」



考えている内に隊は地下道の出口まで進んでいた。この先は沢山の兵士が待ち伏せている。八重樫は能力で確認した。
隊員は警戒を怠らず、八重樫が指示を出さずとも扉の前に防弾盾の隊員を立たせ、扉を全開で開ける。



同時に轟く無数の銃声。



一斉掃射の洗礼を受けた。あまりの衝撃に、防弾盾の隊員も射線から下がる。



「何人だ?」
「最低でも5人。3ヵ所からの銃撃です」



惜しい。正確には6人だが隊員の見立ては正しい。自分が育ててきた隊員達の成長に、八重樫は内心感心した。



しかし銃撃は止まない。負傷者はいないが弾幕が厚くて再び釘付けの状態だ。



「20秒後、制圧陣形三型」



隠密行動の必要がない今、もはや手信号の必要はない。八重樫は発声する。
意図を理解した隊員は各自撃ち返して応戦する。



それに呼応するかのように爆音が響く。建物が揺れ、遠くから兵士の怒号と断末魔が聞こえた。
菅波の奇襲が始まったのだ。



「堤、頃合いだ。突入しろ」
『了解した』



撃っては隠れ、敵の銃撃を凌ぎつつ残弾の確認。このテンポが短時間で頻繁に切り替わる。



「行け」



八重樫の号令で、隊員は次のアクションを始める。
先程の応戦で兵士の陣取っている位置を把握している隊員。味方の銃撃の援護を受けながら、隊員は既に安全ピンが抜かれている手榴弾を遮蔽物前に投擲した。



『!』
『隠れろ!』



投げられた丸い物体を手榴弾だと瞬時に判断した兵士は咄嗟に身を隠すも、間に合わず爆砕する鉄片を全身に浴びる。鋭い音響が聞こえたと同時に、八重樫隊はスリーマンセルで散開。新たな襲撃を警戒しつつ兵士の生死を確認に向かう。



「クリア!」
「クリア」



他のグループの報告を把握しながら、八重樫のセルも兵士に接近していく。



『……う…』



1人、生き残りがいた。だが虫の息だ。全身から流血、両目と喉に鉄片をもらいもがいている。
八重樫は苦しむ兵士の頭に躊躇いなく発砲、一発で仕留める。それは慈悲からきた行為なのか、憎悪からきた殺意なのか隊員には分からない。



「クリア」



この場の兵士の排除を終了した隊。八重樫は再度、能力者を捕捉するとそれ目掛けて隊を前進させる。
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