本編


同時刻。砂漠と化した一帯は自衛隊の化学科部隊により封鎖、バリケードが組み上げられた。内部では防護服の隊員が機材でデータを採っている。
GROWにより未知の化学兵器が使用された恐れがあるためだ。



その自衛隊のバリケードを遠くで一瞥した男がいる。目的は怪現象の確認。男は光学迷彩で姿を隠すと歩を進める。
男に捕捉の能力はないが、異彩な「G」の気配を察知し、大体の感覚を頼りにここまでやってきた。
この男ほど熟練された爾落人ならば、今回の現象は「G」であると見当もついている。よって防護服の類のものは着用していない。



「…ん?」



しばらく砂漠沿いを移動すると、自衛隊のいない地点に女が佇んでいるのを発見した。最初は生存者かと思ったが違和感がある。真夏の暑苦しい時期だというのに女はコートを着込んでいた。明らかに変だ。



男は女に気配を悟られないよう、背後から歩いて接近する。
しかし、



「悪趣味ね」



女―――ベイオネットは男の存在を見破っていた。男もさして驚かず素直に光学迷彩を解く。



「こんな現象が起きた場所に一人で徘徊している方が悪趣味だと思うぜ?」
「?」



悪趣味だと言っておきながら、自分の方が悪趣味だというのに気づかないのはこの女の性か。



「見たところ普通の女じゃないみたいだが…まさかこの現象、お前の仕業か?」
「そうよ」
「即答かよ…」



ベイオネットの悪びれた様子もない返事に、男は呆れた。こんな「G」がいるから、世間はあらぬ誤解を抱くのだ。



「…爾落人に興味はないの。このまま立ち去ってもらえないかしら?」
「…放っておくわけねぇだろ!」



男は両手から電撃を撃つ。かなりの威力のようだ。初撃でケリをつけるつもりか。
対するベイオネットは応戦。男と同じ態勢、威力の電撃を放ち、相殺した。
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