本編
「ん?」
その兵士は、某軍隊からセントリーガンが流れてくるのは知っていたが、実物を目にするとその堅牢さに驚いた。
だが所詮機械故に融通が利かない。動く物は人間でなくとも手当たり次第撃つし、残弾が尽きればただの的。装弾数もそこまで多いとは言えない。
しかしそれを差し引いても、掠めるだけで致命傷を与える破壊力は頼もしい。設置しているだけでも歩哨より牽制になるのも利点だ。
米軍からのブラストボム横領といい、GROWはこれからもっと大きくなる。今回の極東における攻撃はその布石である。
そう考えていた兵士が、セントリーガンのモニターしていると怪訝そうな表情を見せた。兵士はセンサーの記録を呼び出して射撃対象を確認すると、ザルロフに報告した。
「南西地下道のセントリーガンが発砲しました」
「…データの破棄を急げ」
ザルロフに多少の焦りが見える。
警察がここにたどり着くのが予想より早かった。ダミーを見破ったのだろうか。想像以上に優秀な特殊部隊だ。いや、部隊を束ねる指揮官が優秀なのか。
ザルロフは通信をここにいる全兵士に繋いだ。
「私だ。全員回線をサブチャンネルに開け。現地警察の特殊部隊がここを嗅ぎ付けた。既に潜入しているだろう。各自応戦しつつ退却、尾行に注意して予備の拠点に移動しろ」
ザルロフは側近の兵士に機材の破壊を命じると盗聴防止の装置をつけた携帯端末でどこかに連絡をつける。
「私だ。すぐに動け。再度連絡がない場合は分かっているな?」