本編


「突入」



支援班がバッティングラムで扉を破壊し、八重樫達は無駄のない動きで地下道に突入した。隊員を2人先行させ、索敵しながら進んでいく。



地下道に自分たち以外に人はいない。それは能力で確認済みだ。兵士と遭遇する危険はないがその分、罠が張ってある危険性が高い。



地下道は長らく放棄されていたからか、淀んだ空気と土臭さが不快だった。当然だが電気も通っておらず、暗視装置なしには進むことができない。



先行させている隊員は警戒しながら進み、やがて直角に折れた角に突き当たる。待ち伏せやトラップに最適な地点だ。



隊員はトラップと待ち伏せがないのを確認すると待機する八重樫らに手信号を送る。
八重樫らが移動し、再び隊員が先行しようと角を曲がった時だった。



連発する発砲音と同時に、先行する隊員が弾丸に倒れた。即死だ。
八重樫らは立ち止まり、新たに隊員を偵察に出した。隊員は角から覗きこむ。



「あれは…」
「何が見える?」
「機関銃のようなものが設置されています。射手はいません」



八重樫は隊員を下がらせると自分も角から覗きこみ、暗視装置でそれを視認する。



「……」



八重樫には見覚えがあった。以前一樹に世界中の軍事機密をクラッキングさせて作らせたデータベースで見た事がある。
セントリーガン。白兵戦時の防衛線設置を想定に開発された自動制御の機関銃。内蔵のモーションセンサーで敵を自動迎撃する代物だ。
他にも細かい情報があるが部下に詳しく説明する余裕はない。最低限の情報をまとめて隊員に伝える。



「あれは動くものに反応して発砲する。姿を捉えられなければ撃たれない」



それを聞いた防弾盾を持つ隊員が進言する。



「自分が防弾盾で接近し破壊します」
「あれは機関銃だ。防弾盾なんざ抜かれるぞ」



接近しようのない不利な地形に思ってもない武器。能力者以前に厄介すぎる要素だった。これなら多人数の兵士を相手にした方が遥かにマシだ。
八重樫は早急に打開すべく周囲を観察しながら策を巡らした。
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