本編


GROWアジトに接近するSAT。歩哨に警戒しながら徐々に包囲していく。
黒が基調のアサルトスーツは闇に溶け込み隠密性に長けており、それは今夜の闇夜でも問題なく機能していた。



菅波は暗視装置で武装したロシア人を視認した。武装兵はSMGを所持しており、暇そうに同じルートを巡回している。少なくともこちらに気づいていない。



『菅波隊長、暗号化された通信のやり取りが確認されました』
「今度は本命だな。八重樫、そっちはどうだ?」



菅波の率いる部隊は廃工場の死角に待機していた。それぞれ狙撃班も周辺の建物にひそかに展開しており、体勢に死角はない。



『こちらも配置についた。偵察の際に兵士を拘束したがどうやらこの廃工場で間違いなさそうだ』
「よし」
『だが悪いニュースだ。拘束した兵士からの情報だが、化学兵器が持ち込まれている』
「SMGといい、テロリストの分際で厄介な武器を持っているな」
『テロリストだからこそ、だろう』
「分かっている」



八重樫の事だ、拘束した兵士は既に殺しているだろう。生かしておくより抜かりはないが、この非情さは軍人ならまだしも警察官としてはどうかと思う。



『確認だ。八重樫隊は地下道から侵入、連中の退路を絶ちつつ陽動』
「菅波隊は裏から突入、敵勢力を排除」
『堤隊は正面で待ち伏せ、必用に応じて突入、援護』
『各自ザルロフを発見次第拘束。殺さないよう部下に徹底させろ』



そんな事は分かっている。そう言う八重樫の方がどさくさに紛れてザルロフを殺してしまわないか心配だ。犯罪者やテロリスト相手には容赦ない殺意を感じてしまうのは気のせいではないだろう。ザルロフを生かして拘束するには八重樫より先にザルロフを発見するしかないのかもしれない。



「…いくぞ」


八重樫の率いる部隊は廃工場に通じる地下道の入口に待機していた。
隊は接近する際に兵士を拘束したが、八重樫は情報を聞き出せるだけ聞き出して射殺すると突入に備える。



八重樫は率いていく部下達を一瞥していく。自身が鍛えていき、指導してきた隊員達。
主武装は突撃銃、ホルスターにマウントされている自動小銃と少数の閃光手榴弾。上半身を守る防弾ベストに装備品を多数収納できるタクティカルベストを重ね着し、頭部にはヘルメットと防護ゴーグルを装着。機密性と威圧感の演出として覆面を被る。
また一部の隊員にのみ、突撃銃の代わりに防弾盾か対物ライフルを装備している編成だ。それに閃光手榴弾の代わりにプラスチック爆弾を備えている隊員もいる。
八重樫本人も、基本的な武装と装備品を身に付けていた。



「……」



八重樫は廃工場内から能力者を捕捉していた。GROWの構成員に能力者がいる、それだけでも厄介な要素だ。
能力によっては部隊が、自分が返り討ちになりかねない。



「30sec後に突入、カウント始め」



だからといって立ち止まる暇はない。最悪刺し違えても、テロを阻止しなくてはならない。
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