本編
「この国がテロの対象になっている。何だか未だに信じられませんね」
夜の都内を巡回するパトカー。運転席に座る若い警官が言った。
彼は今年から晴れて交番勤務から警察署勤務になった。彼はまだ若く、正義の炎に燃える使命感から些細な事件も見逃さないのが評判だ。
「お前が考えている程日本は綺麗で清潔な国じゃない。狙われる理由はいくらでもあるんだ」
助手席に座る先輩警官は語る。しかしその矢先、2人は男性が殴り合いの喧嘩をしているのを発見する。
「先輩、行きましょう」
若い警官と先輩警官はパトカーを停めて降りると男性に歩み寄る。喧嘩の仲裁も、立派な警官の仕事なのだ。
「何事でありますか!?」
「協力してくれ。パトカーが必要なんだ」
「は…!?」
「! 離せ!」
喧嘩をしていた男性は警官が来ると人が変わったように冷静になった。戸惑う警官に、物陰に潜んでいたロシア人が襲いかかり締め上げられる。さらに抵抗する警官の首の骨を折った。鈍い音が響き、警官の死亡を確認したロシア人。
「早くしろ」
喧嘩していた日本人男性が警官の制服を脱がし、ロシア人は警官の遺体を川に投げ捨てる。その間に日本人は警官の制服を着用し、停めてあったパトカーに乗った。
それに呼応するかのように路肩に停めていたトラックのヘッドライトが点滅。それを確認したパトカーはトラックを先導する形で走り出す。
「検問なんて無意味だ。パトカーと同伴ならな」
動き出したトラックの荷台で、パーヴェルはほくそ笑みながらCM-20を見つめた。