本編
GROWアジト
日は完全に落ちて廃工場は闇に溶け込む。
工場内部ではロシア人の武装兵が中心となって第二波の準備をしている。パーヴェルはそれを眺めながら次の計画の最終確認をしていた。
「予定通り、ランジャーはトラブルで停泊するようです」
「よし、こちらも出る」
用意された偽装トラックにはドリンクキーパー程の大きさの黒い容器が積み込まれていた。
CM-20。化学兵器に分類される神経ガスの一種である。リモートコントロールにより容器からガスが解放される仕組みだ。
「例の図面は頭に叩き込んでいるな?」
「ああ。連れていく兵士もあれを扱った経験のある者ばかりだ」
例の図面を把握するなど、元海軍少佐にとっては苦ではない。
「だが、遠い。途中で検問があるだろうし、現着するまでに時間がかかってしまう」
「それでも必ず使命を果たしてきたのがグロス・パーヴェルという男なのだろう?」
「違いない」
ザルロフはCM-20の起動リモコンをパーヴェルに託した。彼はリモコンを懐に仕舞うと偽装トラックに向かう。
トラックの運転席には日本人が座り、パーヴェルは武装兵と共に荷台に乗った。
「出せ」
トラックは目的地へ出発した。