本編


一樹からの着信で迎えが到着したと知った凌は病院の駐車場に行く。数ある駐車車輌の中から乗り慣れた覆面パトカーを見つけると助手席に座る。
すると運転席に座る一樹が車を発車させ、敷地内から車道に出た。



「二階堂君はどうかな?」



倉島はすぐに本題に入る。倉島と顔を合わせるのが後ろ暗い凌は気まずい。



「まだ処置中ですが、大丈夫でしょう。搬送中も意識は保っていましたし」
「そう言うお前は大丈夫そうに見えないけど?」



一樹には、凌が身体的な疲労とは別の意味で疲れているのが見てとれた。



「倉島さん」
「ん?」
「私情を挟んで行動して、すいませんでした」
「? 何故謝るのかね?」



倉島は心底不思議そうに聞き返した。そのリアクションに、逆に凌も戸惑う。



「…街がテロの危機に晒されているのに勝手に職務を放棄した事です」
「爆弾は発見されていたし、構成員も2人は拘束されていたから大丈夫さ」
「しかしそれは結果論です」
「君はまだ若いんだから感情に任せて行動しても私に咎める権利はないよ。第一、同僚を助けようとするのは正しい行動だと思う」



倉島はさらりと言ってのけた。恐らく素で言っていることから、本当に良い上司に恵まれたと思う。凌は感極まった。



「…ありがとうございます」
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