本編


GROWアジト


爆破の時刻が近くなっている。ザルロフは司令塔の役目を果たしている事務室で、自分の腕時計を見る。



時刻はラッシュアワー。通勤や通学の一般人が多いこの時間を狙った。陽動とはいえたくさん巻き込むに越した事はない。



この爆破がテロの始まりだ。その後の大規模な攻撃の後で犯行声明を各メディアに発信する。これが今回の流れだった。



構成員も各自作業を止め時計に注目する。



そして、起爆の時刻になった。


しかし、感じるはずの爆音と衝撃はいつまで経っても聞こえなかった。構成員逹はざわめき、パーヴェルは恐れている事態を口にする。



「まさか…失敗したのか?」
「サトウは設置を完了したと報告があった。どうやら阻止されたな」
「ザルロフ…」
「落ち着け。メインの攻撃が成功すればいいだけの事だ。パーヴェル、支度しろ。エイギス、念のためサトウ逹の所在を確認しろ」
「了解した」



数十秒後、端末で調べ終えたエイギスは報告する。



「工作員全員と連絡が取れません。GPSでも追跡できない事から携帯電話の故障か、電池パックを抜いているか、ジャミングのいずれかが原因だと考えられます」
「そうか」



恐らくブラストボムを設置した構成員らは捜査機関に拘束されたのだろう。尋問でアジトの位置を吐かされるだろうが、保険はかけてある。ザルロフは余裕の表情でメインの攻撃の指揮を執る。
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