本編
綾を乗せた救急車は総合病院に搬送された。敷地内では救命士が待機しており、救急車の後部ドアから手際良く綾を集中治療室に運んでいく。
凌は途中まで呼び掛けながらついて行くが、集中治療室手前で看護師に制止される。
「……」
正直見ているのが辛かった。自分があのような怪我を負うのは構わないが、同僚や友人がそうなるのは堪えられない。
流石に治療が終わるのを待つのは職務放棄になりかねないため、ナースステーションの看護師に連絡先を教えて立ち去ろうとする。
すると、一樹から着信が入った。
「一樹?」
『やっと出たな。容態は?』
「意識はある。今から治療に入る」
『オレも倉島さんと今から向かう』
「…張り込みはいいのか?」
『爆弾は見つかったんだ。後は綾さんを撃った奴の拘束だけさ。配置変えのついでに拾う』
「頼む」
凌は通話を終えると待ち合い室のソファーに深くまで腰かけた。