本編


「チッ!」



綾に追われている構成員は人混みに紛れて姿を眩まそうと疾走するが思うように撒けない。



ならば、追っ手を始末した方が早い。



構成員は路地裏に入ったところで待ち伏せた。構成員は銃声に配慮してナイフを抜き取り身を隠す。



そして、路地に綾が進入した瞬間背後から切りかかる。だが綾は待ち伏せを予想できていた。



「!」



綾は念力で構成員を弾き飛ばす。何が起きたのか分からないまま壁に叩きつけられた構成員に、綾は警棒を展開させつ接近する。



ナイフと警棒。リーチの違いからこちらが不利だと計算した構成員は、すかさずナイフを投てきした。



「!」



完全に虚を突かれた綾は咄嗟に念力でナイフの軌道を逸らす。若干対応が遅れたが、ナイフは綾の身体すれすれを通過した。
それに気を取られたのが命取りだった。



刹那、あまり聞き慣れない空気を切り裂く鋭い音が響く。ほぼ同時に、綾の左腕に激痛が走った。



撃たれた。綾は壁にもたれ掛かる。右手で左腕を押さえ、押さえた手は鮮血で真っ赤に染まっていた。



「…くっ……」
「女を殺る趣味はねえが…悪く思うなよ」



構成員は銃口を綾に向ける。
綾は力を振り絞り、念撃で構成員の自動小銃をバラバラに切り刻んだ。あり得ない光景に構成員は卒倒しかける。



「う…うわぁ!」



構成員は綾を恐れて逃げ出すが、彼女はそれを阻止する力が残ってなかった。綾はやっとの思いで壁にもたれ掛かりながら腰を下ろす。
激痛はあるが異物感はない。弾は貫通したのだろうがその代わり出血は酷かった。放っておけばどのみち出血多量で死ぬだろう。



それに、今の自分の状態で物体を切り刻む程の力を出したのはマズかったらしい。綾は意識が正常を保っている内に助けを呼ぼうと携帯電話を手に取る。



すると、見計らったかのように着信が入った。





捜査員と別れた凌。綾の応援に向かおうと、来た道を引き返しながら本人に電話を入れる。



「東條です。そちらはどうなりましたか?」
『撃たれたわ……』
「え?」



凌は思わず立ち止まる。冗談であってほしいが、そんな悪質な冗談を言う本人ではない事は凌が一番よく知っていた。



『弾は貫通したけど……出血が酷いわ……』
「救急車は…救急車は呼びましたか!?」
『まだよ…』
「…今どこです?」
『駅近くの…路地裏……』
「すぐに向かいます! 救急車は俺が呼びますからじっとしていてください!」



今はパトカーに戻るまでの時間が惜しい。ここから全力で走れば現場には5分程度で着ける。凌は通話を切って上着を脱ぐと走り出した。

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