本編


倉島も構成員を追う。倉島は全力で走り続けるも息切れする気配がなかった。路地裏に逃げた構成員をなおも追う。



なかなか振り切れない倉島に恐れをなした構成員は、廃ビルに逃げ込んだ。
倉島も廃ビルの入口に入ったところで懐の銃を取り出し、安全装置を外して奥に進む。階段から足音が聞こえる。構成員は階段を上がっているようだ。



倉島は銃を構えながら慎重に階段を上がっていった。途中、3階に到達したところで何かが倒れた物音が聞こえ、倉島は同じ階層の音源に向かう。



倉島は物音が聞こえたと思われる部屋に入った瞬間、左脚を撃たれ、倒れたところで頭を撃ち抜かれた。



倉島を射殺した構成員はサプレッサー付きの自動小銃を持ったまま倉島の遺体に歩み寄る。



「悪いな」



構成員はスーツを赤黒く染めた倉島を確認するとその場を立ち去ろうとした。
だが、それを許さない存在がいた。



渇いた銃声。



同時に、構成員は右脚を襲った激痛に状況を把握できずに倒れた。いや、少なくとも自分が撃たれたのは理解できた。問題は誰が自分を撃ったかだ。



「やれやれ。久しぶりに力を使ったよ」



構成員は我が目を疑った。先程自分が射殺した倉島が平然と立っていたのだから。



「馬鹿な! 確かにお前を撃ち殺したはずだ!」
「大人しく拘束されれば良かったものを…」



構成員は苦痛に悶えながらも再び倉島に自動小銃を向ける。



「来るな! バケモノがぁぁっ!」



倉島は叫ぶ構成員を射殺した。恐怖に怯えた表情のまま、死亡した構成員。
倉島は構成員の遺体にゆっくり歩み寄って屈むと、普段の温厚そうな声とはほど遠い、低い声で語りかけた。



「バケモノ…か。心外だな。私は人間だ。人間に「G」の力が憑けば人間ではなくなってしまうのかね? 君に「G」の何が分かると言うんだ? え?」



階段をかけ上がる足音が近付いて来ると、倉島は立ち上がった。銃声を聞きつけた付近の捜査員が駆けつけているのだ。やがて捜査員は倉島を見つける。



「これは…」
「激しい抵抗にあったため発砲した」
「だからと言って殺す事はなかったのでは?」
「仕方ないよ。でなければ私が殺されていた」



その後、倉島は検証に訪れた公安部員の取り調べを受けた。
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