本編


トラックは左右のウインカーを点滅させっ放しで停車していた。


状況を知った一樹は荷台の扉を開けようとするもロックされており開かない。
それを見た倉島は運転席のドアに手をかけたがそこもロックされていた。倉島は仕方なく窓から運転席を覗くも、トラックのキーは見当たらない。



「ドアがロックされている。トラックもここから動かせそうにないがどうするかね?」
「こちらに戻ってきてください」



凌は指先に光刃を発生させると荷台の鍵を破壊した。綾と倉島は両開きの扉を開けるとそこにあったのは、円筒の金属とそれを支える土台だった。



金属と一体化している電子装置の液晶パネルには、何かのタイムがカウントダウンされており何かしらの爆発物なのは見ただけで分かった。



「!」



成人男性とほぼ同じ大きさのブラストボムに一同はたじろぐ。その中で最初に冷静さを取り戻したのは凌と綾だった。



「宮代君、解除できる?」
「…多分」



一樹は恐る恐るブラストボムの電子装置に触れる。すると一瞬でカウントダウンは止まった。彼の能力に救われた瞬間だ。警備部の爆発物処理班も顔負けの処理速度だった。



「宮代君、いい仕事よ。」
「フッ…フフフ……文明が機械化すればする程、オレの力は及びやすくなる。こ、こんなの朝飯前ですよ。」
「お前はやる時はやってくれる男だな。」
「だろ?」



一樹は強がりながら語る。倉島は警視庁に爆弾を発見した報告を入れた。



「こちら21号車。トラックに隠された爆弾を発見、カウントダウンは停止しているが爆発物処理班を寄越してください」
『了解』



一方の綾は鑑識に連絡した。



『鑑識課、笹平です』
「21号車です。至急Nシステムでの照会願いします。車種は――」


Nシステムとは、警察が各道路に設置している、自動車のナンバープレートを読み取る装置の総称である。しばしば手配車両の追跡に用いられ、犯罪捜査に大きく役立つ事になる。



綾はこのシステムでトラックの乗員が乗った車を追跡しようとしているのだ。



『ヒットしました。対象は国道を西へ移動しています。最後に確認されたのは西新宿』
「ありがとう。最新の情報が入り次第、全車に無線連絡で入れてください」
『了解しました』



特捜課は到着した交通部の人間に爆弾搭載のトラックを託すと、不審車の追跡に向かう。ハンドルを握った凌は車を急発進させた。



「近道を使います。パトライトを」
「分かったわ」



綾は窓を開けると小型のパトライトを車の屋根に設置した。けたたましく鳴るサイレンに一般車は道を空ける。覆面パトカーはその間を縫って走行した。



『警視庁より各局、不審車輌が国道を西へ移動中。近辺の捜査員は注意せよ』
『21号車が不審車輌を追跡中』



綾は無線を使い他の覆面パトカーに状況を伝える。
無線からは随時、不審車両の新しい位置情報が流れ、それに従い確実に距離を詰めていった。
パトカーという国家権力と凌の運転技術を駆使すれば、追い付くのに時間は懸からなかった。



「最後に確認された場所までもうすぐです、パトライトを外してください」



綾はサイレンを止め、パトライトを回収する。それからさらに走行すると例の車が見えてきた。



「あれよ。間違いないわ」
「追い付いたまではいいがどうやって車を停めさせるかね?」
「衝撃に備えてください。わざと追突します」
「待って、その必要はないわ」



綾は念撃で対象の車の配線コードを断絶した。
突如故障し停車を余儀なくされた車に、覆面パトカーは少し離れた場所に停車した。特捜課の面々は応援を要請すると降車し、人込みに紛れて故障させた車に接近する。



車からは焦り気味の構成員が降り、携帯電話で連絡を取ろうとしていた。綾は念撃で携帯電話の内部を破壊、連絡を阻止した。



携帯電話の故障に気付き、他の構成員も携帯電話を出し始める。綾は目視できた全ての携帯電話の内部を破壊した。



焦る構成員の1人がふと、こちらを一瞥した。自分達に向かって歩いて来るスーツを着た男女4人組に、構成員は捜査員だと勘繰る。
勘繰った構成員は仲間3人に知らせると走って逃げ出した。



特捜課もすぐに走り出し、4人の構成員は散り散りに逃げ出す。特捜課の面々も各々の対象を追い始めた。

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