本編
都内郊外
廃工場
ここはGROWの拠点となっていた。外観は3階立ての錆びれた工場だが、内部の倉庫部分には調達した武器と弾薬が集積され、1階の駐車スペースにはいくつか車輌も停められている。事務室には建物の外観に似合わないパソコンや電子機器が並べられ、屋上は通信用の小型パラボラアンテナが設置されていた。
人員はロシア人が大半を締めているが、少数だが日本人もいる。日本人にも少ない人数ながらGROWに賛同した者もいたのだ。
この中にスタルカ・ザルロフとグロス・パーヴェルは居た。
「ザルロフ、本当に決行するのか? ベルマンとエノモトが計画を白状していたら成功する確率は低くなる」
パーヴェルは決行前に起きた不安要素に苦言を呈していた。
「奴らは詳しい計画を知らない。それにメインの攻撃を日本の捜査機関が知った所で止められやしない。計画通りに実行する」
「分かった」
ザルロフがそう言うならばそれに従うしかない。
ザルロフが正しいと言えばそれは正しい。GROWにおいてはザルロフが正義なのだ。
「サトウ、行け」
ザルロフに命じられるがまま、日本人の構成員達は最終確認を始める。
日本人の構成員は運送会社の制服を着用していた。勿論正規に入手した物ではない。その構成員は同じ会社の宅配用トラックに乗り、私服の構成員が乗用車に乗る。トラックの荷台には米軍にいる内通者から提供されたブラストボムが搭載されていた。
「例の爆弾、陽動にしては勿体無いのではないか」
「陽動でも、手を抜くな。特に日本ではな」
ザルロフとパーヴェルが見守る中、乗用車と宅配トラックが発車。GROWの使命を帯びた車輌は人知れず、目的地へ向かって進行した。