本編







それから樹は亨平と元治を連れて姫神島に向かい、元治には初めて、亨平には改めてギャオス親子を紹介する。




ギャヴォォォ・・・




「おお・・・これがギャオスさんか。昨日は遠目から見とったが、こうして近くで見ると立派じゃなぁ・・・」
「そうだな・・・『神』と呼ばれるのも、分かると言うものだ。」
「でしょ。ボクにとっては今でもやっぱり、お母さんみたいな存在なんだ。どう、かな?」
「いやはや、これはまた随分と・・・コワモテでおっきなべっぴんさんを連れて来たのう?こんなに亨平よりも頼もしそうなお母さんなら、夕和さんも天国で安心しとるだろうて・・・樹も隅に置けんの?ほっほっほっ。」
「ふふっ、じいちゃんもそう思う?」
「俺としては、親父の異常な順応性に着いて行けんが・・・樹の言っている事は、異常などではない。今ならば、そう思える。
それから、ギャオスよ。昨日は・・・いや、七年前のあの日からお前を傷付け続け、樹に苦しみを強い続けてしまい・・・本当に申し訳なかった。俺は、お前の存在を認める。これからも、樹と共にいてやってくれ。」
「・・・だってさ、ギャオス。」




謝罪と共存の意を示す為、自らへ深々と頭を下げる亨平の姿を見たギャオスは、右翼の爪を軽く弾き・・・亨平の頭に微風を当てた。




「うおっ・・・!?」
「頭を上げろ、ってギャオスは言ってるんだよ。それから父さんに頼まれなくったって、ボクと・・・お母さんとして一緒にいる、ってさ。」
「・・・そうか。感謝する。」




ギャォォゥ・・・


ギャァォォ・・・




「それで、この小さいのがギャオスさんの連れ子かの?」
「そうだよ。こう見えて両方、どちらかと言えばメスっぽい感じだから・・・ボクの妹、って事でいいよね?」
「ワシは一向に構わんぞ?いやはや、この歳になって一気に新しい家族が増えるとはの・・・本当の家族になれて、良かったのう?亨平?樹?」
「・・・そうだな。」
「ボク達はここから・・・また新しく、家族を始めるよ。君と、君達と一緒に。
これからも、宜しくね。ギャオス。」




樹は手首に勾玉が付いた右手を差し出し、ギャオスもそれに応えて頭を差し出す。
そして、樹の手がギャオスの頭に触れ・・・親子の「愛」が重なった時。
真紅の勾玉は強く、優しく、美しい光を放ち、新しい逸見家の・・・樹の家族の物語が、幕を上げたのだった。








こうして「彼」の為に再びこの世に現れた、母神・ギャオス。
いずれ訪れる「その日」までの間の、家族としての温かい日々が始まるのだった・・・




ギャァオォォォォ・・・









第三章・終
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